ある投稿:
「私は知人から『米艦の救出マニュアル』というのを聞いたことがあります。それによりますと、救出の順番が決まっていて、一番目は軍人、二番目は大臣など官僚、三番目は民間人(会社役員など)、その家族、そのペットと続いて四番目がアーリア系の白人・・・・とつづくのだそうです。そうなると黄色人種の日本人のお母さんが救出されるなどということはあり得ない。(安倍政権は)そのあり得ない話を持ち出して集団的自衛権の行使を世論に認めてもらおうとしている。「艦船救出マニュアル」があるのなら、それを公開すれば、支持率はかわってくるでしょうから、そういうマニュアルについて調べてほしいと友人たちと国会議員に手紙・電話作戦をしようと思っています」云々。
 
上記によれば、『米艦救出マニュアル』の存在に関する唯一の根拠は「伝聞」のようです。請願であれ、裁判であれ、「訴え」をし、それが成立するためには直接的な根拠が必要です。「伝聞」にすぎない根拠で国会議員(に限らず、行政)に対していわゆる請願権を行使しようとするのは、第一とりあげられもしないでしょうが、それ以前の問題として常識のある市民のすることではないでしょう。愚かしい行為そのものといわなければなりません。
 
愚かしいのは「伝聞」で「請願」するという行為だけではありません。『米艦救出マニュアル』の存在を疑う状況判断そのものも愚かしいのです。
 
「知人から『米艦救出マニュアル』というのを聞いたことがあ」るというのは、おそらく5月19日放送の『本格報道 INsideOUT』(BS11)二木啓孝氏(BS11解説委員)が語ったという米軍の「民間人救出マニュアル」のことを指しているのだろうと思いますが、そういうものが仮にあったとして、同「民間人救出マニュアル」は、国際人道法のひとつとしてのジュネーヴ条約(1949年)第二条約」(難船者保護条約)の「第二章 傷者、病者及び難船者」の第十二条(保護及び看護)の規定に明らかに違背していて、国際法上そのような「マニュアル」及び行為は決して許されません。
 
すなわち、同第十二条には次のように規定されています。
 
「軍隊の構成員及びその他の者で、海上にあり、且つ、傷者、病者又は難船者であるものは、すべての場合において、尊重し、且つ、保護しなければならない。この場合において、「難船」とは、原因のいかんを問わず、あらゆる難船をいい、航空機による又は航空機からの海上への不時着を含むものとする。
② それらの者をその権力内に有する紛争当事国は、それらの者を性別、人種、国籍、宗教、政治的意見又はその他類似の基準による差別をしないで人道的に待遇し、且つ、看護しなければならない。(略)
③ 治療の順序における優先権は、緊急な医療上の理由がある場合に限り、認められる。 
④ 女子は、女性に対して払うべきすべての考慮をもって待遇しなければならない。」
 
 そうした国際法上許されない『米艦救出マニュアル』なるものが仮にあったとして、そうしたいわば非合法な文書は公開されるということはありえないでしょう。公開すれば国際法違反の矢面に立たされるのは米国自身。そうであれば、決してそういう「マニュアル」が存在していたとしても、公開はしないでしょう。
 
その米軍の「米艦救出マニュアル」を仮に二木啓孝氏が知っているのであれば、あるいは、「米軍を研究している人」が知っているのであれば、それを公表すれば米国の「国防秘密文書」の暴露に当たり、国際的な大問題ともなるでしょう。しかし、現実はそうなっていません。だから、ここは疑問符をつけておくべきところでしょう。二木氏も「米軍を研究している人によれば」などと言っているのですからやはり「伝聞」の域を超えるものではありません。そうした「伝聞」噺し、あるいはクエスチョン噺しを根拠にして「請願」するなど愚かしいというほかないということです。国会はそうした真偽不明のうわさ話を議論するところではありません。国会に要請するのであれば国際人道法を順守せよということですが、むろん国会はそうした当然の要請を否定するはずがありません。すなわち、いずれにしても、『米艦救出マニュアル』云々の「請願」は意味のない要請でしかないということです。
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