藤原新也さんが「時代風景の中における片山祐輔について考えてみる」(Shinya talk 2014年5月21日付)という記事を書いています。とても共感しました(特に「13年前のある日の夕刻」の「時代風景」の話)ので以下に転載させていただこうと思います。
 
その前に片山祐輔被告人弁護人の佐藤博史弁護士の昨日の記者会見での言葉をご紹介しておきたいと思います。ビデオニュース・ドットコム(神保哲生代表)のブログ(2014年05月20日)から。この佐藤弁護士の言葉にも胸を打たれました(前日の記者会見での佐藤弁護士の「レイバーネット」云々の言葉には批判もあるのですが)。
 
「片山氏から申し訳ありませんと言われたが、裏切られたという否定的な感情は沸かなかった。私たちを解任して国選の弁護人にしたいと言っていたが、私は見捨てたりはしないと伝えた」
 
「これは弁護士をしていれば必ず起きること。それで被疑者を非難するようでは弁護する資格はない」
 
時代風景の中における片山祐輔について考えてみる
(藤原新也 2014/05/21)
 
皇居にロケット砲を撃ち込んで(省略)を始末する地下鉄霞が関駅でサリン散布する(省略)裁判官と(省略)弁護士と(省略)検事 を上九一色村製AK47で射殺する(省略)病院爆破する(省略)小学校で小女子喰う(省略)を去勢して天皇制断絶(省略)の閉経マンkにVXガス注射してポアする(省略)店に牛五十頭突っ込ます(省略)will be killed just like her father.今度の土日、桜田門前で皇居ランナーを辻斬りする。邪魔な皇居ランナーを桜田門前で無差別殺人します。刃渡り30センチのナイフで斬りまくります。あと天皇もぶっ殺す。警官も殺します。よろしくお願いします。下賤で汚らわしいクソゴキブリのドエッタどもは1秒でも早く死ね!滅びろ!呪われた屠殺者の末裔どもめ。お前らは日本社会の、アジアの、世界の、宇宙の迷惑害虫だからさっさと殺してやるよ。入船のお前ら糞虫の巣を爆破してやる。爆発と同時に硫化水素が発生する爆弾だ。一匹残らず死ね!!!
 
片山祐輔が小保方銃蔵の名前でマスコミ各所に送りつけた「私が真犯人」メールを彼自身が書いたとわかった今、その長いメールの中の部分は、かりに偽悪気取りで書いたにしろ、そこには片山祐輔というあの温厚な表情の青年の心の裏に眠る時代風景が見えるようでもある。
 
神戸連続児童殺傷事件( 酒鬼薔薇聖斗事件 ) 。
 
西鉄バスジャック事件 。
 
岡山金属バット母親殺害事件。
 
秋葉原通り魔事件。
 
取手駅通り魔事件。
 
そしてこのトークでも取り上げた名古屋駅の交差点の歩道で歩行者13人をはねた大野木亮太。
 
いずれも昭和57年(82年)生まれである。
 
この年代は小学校入学時はバブル全盛、 小学校上学年から中学校に入学に至る多感な時期に阪神淡路大震災、オウム事件 といった世間を震撼させる大事件に直面している。
 
学年が上になればなる程、景気が悪化。失われた10年と言われる時代に 小学校・中学校・高校時代を過ごし、青年になってからはワーキングプアの坩堝に投げ入れられる。
 
当然この年代には立派な青年もいるわけだが、上記の怨念に満ちたメールを読むと秋葉原事件の加藤智大や名古屋の大野木亮太など同様、現代の奴隷制度の中から立ち現れたモンスターという側面もあるように感じる。
 
文面の中に彼が少年時代に経験したオウム真理教事件も色濃く反映しているように、そういった時代風景を背負った年代の青年が道を誤るか正道を歩むかは、ある意味で個人的ななんらかの分岐点があるのだろう。
 
そういった観点からすでに昨年のトークで彼にまつわる感想をしたためているので再録したい。
 
 
遠隔操作ウイルス事件。
 
片山祐輔容疑者(30)は無類の猫好きだったらしい。
 
この案件、Cat Walkと関係あるようなないような。
 
メンバーの皆さんの中には鼻をつまれる人も居るかもしれないが、私は彼をCat Walkのメンバーに入れてもよい、と思った。
 
いくつかの情報を繋ぎ合わせるに、小学時代から今まで彼は世間から疎外された人生を送って来たようだ。
 
そういった人間が何らかの事件を起す。
 
昔からよくあるパターンである。
 
江ノ島の猫につけた首輪に仕込んだそのチップの中にも自分の人生があることで大きく軌道修正されたという恨みのようなものが書かれているらしい。
 
そんな彼の人生とその風貌を窺いながら13年前のある日の夕刻、渋谷ハチ公前広場での胸の悪くなるような小さな出来事を思い出す。
 
私のそばにいる4人の女子高生が雑踏の向こうを指をさしながら笑いころげていた。
 
何事かと、その指さす方を見ると5、6メートル離れた雑踏の向こうに同じ年代と思える一人の私服の少年がいた。
 
私はてっきり、女子高生とその少年は知り合いだと思ったのだが、どうも様子がおかしい。
 
指さされた少年は女子から干渉されたことに一旦ははにかんだ表情を見せるのだが、それはやがて青ざめた真顔へと変わる。
 
女子高生が口々に大きな声で仲間と顔を見合わせながら「キモーい!」と言ったのだ。
  
どうやら少年と女子高生は赤の他人のようだ。
 
少年は小太りでちょっとオタクっぽかったが、私には別段指をさされるほと変わった人間には見えなかった。
 
だがこういった年代には独特の嗅覚というものがあり、その嗅覚の投網に引っかかったということかも知れない。
 
少年は青ざめた表情で身を隠すように雑踏の向こうに消えた。
 
残酷な情景だった。
 
私は「てめえの方がキモいだろう、帰ってちゃんと鏡を見ろ!」と毒づいた。
 
女子高生は私に何かされると思ったのか、口々に奇声を上げながら交差点の向こうに走って行った。
 
 
思うに逆算すると片山容疑者はあの八公前の少年とほぼ同じ年齢である。
 
30歳にしてすでに頭は薄く、その面がまえも中年のように見受けられる彼が、その30年の年月の中で(あの女子高生が見せたような)数々の残酷な排除の仕打ちを経験したであろうことは想像に難くない。
 
だから他人のパソコンから逮捕に至るような危険な暴言を世間に撒き散らしてもよいということにはならないのは自明だが、世間から排除されてきた彼には、その痛みをすくいとる何らかの装置があったなら少しは健全な精神を回復できたのではないかと思ったのだ。
 
彼がCat Walkのメンバーであったなら、と思った所以である。
 
野良猫に餌をやったりする行動、そして猫カフェで猫を抱く彼の表情を見るに、彼は基本的には優しい男なのだろうと思う。
 
話は飛ぶが、それにしても、ネットで人を殺せ、殺す、と書き込むと逮捕に至るわけだが、街頭でそのようなプラカードを持って練り歩くぶんには逮捕されないというこの差異は何か。
 
昨今多国籍化している新大久保で「在特会」なる集団が頻繁にデモを行い、「善い韓国人も 悪い韓国人も どちらも殺せ」「朝鮮人 首吊レ毒飲メ飛ビ降リロ」などと書い
たプラカードを掲げてねり歩いている。
 
こういった基本的人権を抹殺するような言葉の暴走を見逃す公安とは何か。
 
普通ネットでの言葉より、現実空間における言葉の方がダイレクトに人を傷つけると思うのだが。
 
そして遠隔操作ウイルス事件とこの案件はまったく無縁とも言えない。
 
これほど毒のある言葉を編み出すということは「在特会」なる面々もまた、その過去の生活の中で”排除”された経験があるということは考えられることである。
 
人はされたことを仕返すものである。
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