本ブログの「今日の言葉」の2014年4月24日から同年5月9日にかけての記録です。

イギリス(ハワード)

・海上自衛隊の1等海士の男性が自殺したのはいじめが原因だと遺族が賠償を求めていた訴訟の控訴審で、その因果関係を認めた東京高裁判決だった。
判決はいじめの存在を裏付ける調査結果を海自が隠していたことも認定、1審判決を大幅に上回る賠償を国に命じた。当初は調査結果を示す文書は「破棄した」としていた海自である。ところが控訴審では1審の国側の訴訟を担当した3等海佐が「文書は海自が隠している」と証言する異例の展開となった。(略)証言した3佐は文書の存在を知って悩み、上官に開示を求めたが無視されたという。内部告発は「行政文書は国民のもの。それを隠す行為は民主主義の根幹を揺るがす」と考えたからだ。しかし海自は3佐の文書コピー持ち出しを問題視し、懲戒処分を検討中という。「至誠に悖るなかりしか/言行に恥づるなかりしか……」は旧海軍から海自が受け継いだ「五省」と呼ばれる幹部教育用の訓戒である。さて真心にもとり、言行を恥ずべきなのは3佐か上官か(引用者注:この問題については昨日の「澤藤統一郎の憲法日記」に適切な論評があります)。(毎日新聞「余録」2014年4月24日

安倍晋三首相はオバマ米大統領との日米首脳会談で(略)「自由と民主主義、基本的人権の価値を(米国と)共有する」と語った。だが、沖縄に対しては県外移設を求める民意を無視し新基地を押し付ける。これは「構造的暴力」に他ならない。(略)平和学の第一人者として知られるヨハン・ガルトゥング氏はかつて、基地の過重負担を強いられている沖縄を「平和と対立する構造的暴力の下に置かれている」と指摘した。そして「構造的暴力」を断ち切ることが「積極的平和」だと定義している。 (略)首脳会談で安倍首相がオバマ氏に語った軍事偏重の「積極的平和主義」とは全く違うものだ。(略)安倍首相は集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈の変更についてオバマ氏から支持を取り付けたと記者会見で表明した。首相はこれまで現憲法は米国に押し付けられたと主張してきたはずだ。憲法解釈変更について、米国の「お墨付き」をもらい、慎重派の説得材料にするのは自己矛盾だし、対米従属に他ならない。(略)首相に辺野古移設の「お墨付き」を与えたのは、仲井真弘多知事の埋め立て承認だ。知事の承認の罪深さを物語る。(琉球新報社説 2014年4月25日

けさのTBSが驚くべきニュースを流した。すなわち、オバマ訪日でも最終合意には至らず協議は継続されたはずのTPP日米交渉が、実は合意されていたというのだ。これが事実なら国民は(略)完全にだまされたということになる。思えば戦後の日米関係史は密約の連続だった。(略)日米安保条約からはじまって核持ち込みの沖縄密約に至るまで多くの密約が過去に重ねられてきた。米国占領下や冷戦時であればまだ理解はできる。しかし2014年4月という現在において、しかも戦後レジームを取り戻すと叫ぶ安倍政権下で、日本を売り渡す密約が公然と行われていたとすればどうか。しかしTPP密約はたとえそれがオバマ・安倍の間でかわされていても、永久にその存在が国民に明らかにされる事はない。(略)TPPそのものが密約(略)関係者は外部に真実を知らせてはいけない事になっているからだ。何よりも日本では特定秘密保護法ができた。真実を告白したり追及したりすれば罰せられる。この国では何から何まで権力者に都合にいいように事が進んでいるということである(天木直人のブログ 2014年04月26日

・今回の訪日で、オバマ大統領は安保・防衛問題での積極関与と引き換えに、TPP交渉での大幅な譲歩を期待していたと思われます。その結果、「前進する道筋を特定し」、「重要な節目」となって「より幅広い交渉へと弾みをもたらす」ものだったとして、他の国にも協定の妥結に向け、可能なかぎり早期に行動するよう呼びかる方針を打ち出しました。
この文面からすれば、明記されてはいませんが、妥結に向けてほぼ合意がなったように読めます。両国が妥結してもいないのに、他の国に妥結を呼びかけるなどということはあり得ないでしょうから……。どうやら、日本は押し切られてしまったようです。共同声明に合意や妥結という言葉がないのは、大幅に譲歩したことを知られたくなかったからでしょう。(略)集団的自衛権の行使を容認して「アメリカの先兵」になろうとしている
安倍首相は、TPP交渉でも「アメリカの先兵」としての役割を果たそうとしているようです。どちらも、日本の国益を大きく阻害し、日本の市場と日本人の命をアメリカに売り渡す暴挙だと言わなければなりません。(五十嵐仁の転成仁語 2014年4月26日

「世界」を措定しない、思考の顛倒をイメージする。
茅ヶ崎講演。茅ヶ崎講演の中身ともかかわるエッセイが、本日付の日本経済新聞朝刊文化面「日曜随想」欄に載っている。タイトルは「極小宇宙から極大宇宙へ」。小さな卵がひとつ、冷たい鉄の非常階段に落ちてわれていた。(略)アパートの非常階段の天井ちかくに、キジバトが巣をつくったのはずいぶん前から知っていた。(略)親バトたちはさぞや落胆しているであろう、といったんは反射的にハトの立場を慮ってみた(略)キジバトはおそらく悲しんでなんかいない。卵の落下、破砕のあの風景は、(略)キジバトにとっては、よどみなく流れゆく時間のなかで継起する変化のひとつにすぎなかったのではないだろうか。(略)サクラの古木の下に、杖をついた老人がたたずんでいる。(略)老人とわたしは洞からでてきたばかりか、これからそこに入ろうとする者のように、樹のそばに黙ってたちつくしていた。なにかがやっとわかったような心もちになった。(略)洞の闇もまた極小でもあり極大でもある宇宙の入り口なのだ。(略)ふと気がついたら、かたわらの老人が消えていた。(辺見庸「「日録14」2014/04/26,27

・1952年に日本が独立を回復する一方で、沖縄を米軍の施政権下に置いたサンフランシスコ講和条約発効の日を迎えた。沖縄にとって「屈辱の日」に、政府が「主権回復」を祝う式典を開催した昨年に比べると、今年の4・28は緊張感が和らいだ雰囲気だ。しかし、
多くの県民がそのとき抱いた埋め難い違和感、距離感は一層深化し、沖縄の未来を考える際の衝動につながっているように思える。昨年末、仲井真弘多知事が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた埋め立てを承認したときには、多くの県民は新たな屈辱を味わった。自民党県連も普天間県外移設方針を実質上転換し、「オール沖縄」の結束に亀裂が生じたことは確かに否めない。(略)しかし、県民の思いを踏みにじるかのように辺野古移設を強引に進める政府に対し、多くの県民は構造的な差別と暴力性を肌で感じている。このままでは沖縄は大変なことになる。そんな危機感や覚悟が共有され、蓄積されている(引用者:今日は沖縄市長選敗北の日の翌日でもある)。(琉球新報社説 2014年4月28日

宮中晩さん会の会場で、オバマ大統領が安倍総理を呼び止め、「今夜もう一度、事務方にまとめさせよう」と伝えました。大統領の強い意向が示されたことで、24日夜の事務レベルの交渉は一気に加速。そして25日金曜日の早朝、 農産品5項目 すべての 関税を含めて 日米は TPP 交渉の “大枠で合意” しました。甘利大臣をはじめ政府側は、表向き 「大筋合意ではない」 と説明しています。 しかし、オバマ大統領を送り出した後、TPP交渉の中枢にいたある政府高官は「共同声明をよく 読めば 日米が “基本合意した” と書いてあるようなものだ」と感想を漏らしています(情報発信者:まずは、偽装声明の可能性、裏合意の有無について徹底した真相の究明が肝心です)。(
「TPP基本合意の真相、宮中晩さん会で“ 決裂”回避」TBS News i 4月28日19:39

・―集団的自衛権は容認すべきですか。「(略)安保の専門集団ではない内閣法制局が現実にあてはめる時に、集団的自衛権を一切認めなかったのは論理的必然性もなく行き過ぎだった。(略)国際情勢が変化した。「必要最小限度」の中に集団的自衛権があるなら、認めても良いのではないか。「砂川判決」という最高裁が示した法的な理屈の範囲で内閣が新たな解釈を示すのは立憲主義に反しない」―具体的な必要最小限度の範囲は?「自衛隊が米国に行き、米国を守るようなことは必要最小限度でなく改憲が必要になる。一方で地域的な範囲を明確に線引きし過ぎると国際情勢の変化に対応できない。私が示している具体例は、周辺事態における米艦防護だけだ」―朝鮮半島有事などの際の臨検は?「当然検討すべきだ。船舶検査活動法は集団的自衛権が認められないために、船長の承諾を要件とするなどあまり実効性がない。武力行使を前提とする船舶検査を可能にする必要があるかもしれない」(
水島朝穂「直言」注:中国や北朝鮮との関係では、「もし万一攻められたらどうする…」ということばかりが語られるが、いま重要なことは「もし万一日本が攻めてしまったら」ということのリアリティであろう。(略)論者は無自覚のようだが、「日本が北朝鮮を攻めてしまった結果、日本が北朝鮮に攻められてしまう」のがいまの集団的自衛権限定容認論の帰結である)。(「どう動く:集団的自衛権・政治家に聞く/1 高村正彦・自民党副総裁」毎日新聞 2014年04月29日

・今年は辺野古新基地建設に向けての思惑から、政府は
式典を取りやめた。安倍政権がいう「主権回復」とは、サンフランシスコ講和条約によって日本国家が主権を回復したというだけでなく、憲法の三大原則の一つである国民主権を否定して、国民から国家に主権を「回復」=剥奪しようというものだろう。国のやることには黙って従え。そういう居丈高な政府の姿勢は、沖縄の米軍・自衛隊基地の強化において顕著になる。辺野古の海を埋め立てる工事に漁港を使用するため、政府・沖縄防衛局が名護市に強硬な姿勢を示している。(略)稲嶺進市長や名護市民、沖縄県民がどれだけ反対しようと、問答無用で工事を強行しようという姿勢が露わだ。沖縄、名護の自治権など眼中にない。物言わぬ民は滅びる、というのは普天間爆音訴訟団団長の島田善次牧師がよく口にする言葉だ。自らの主権が踏みにじられ、生命、財産、生活権が脅かされることに怒りかつてウチナンチューはこのように抵抗したこともある忘れてはならない沖縄の歴史である。(略)時代によって手法は変わっても、圧政に抵抗し続けた先人に学びたい。金網の向こうに星条旗と日の丸がひるがえる風景を当たり前のように眺めてはならない。(海鳴りの島から 目取真俊「折れざる葦」2014-04-29

・バラク・オバマ米大統領のアジア四カ国歴訪が2014年4月下旬に行われた。ホワイトハウスのホームページで日米・米韓の首脳共同記者会見の質疑応答を読んだ。次の三点に絞りメディアの報道を検証し短くコメントしたい。(略)《
オバマの満額回答という愚かな評価》オバマが安保適用で尖閣に言及したのは「満額回答」だという。政府与党から聞こえる多数の声でありメディアも殆ど疑問を呈していない。「大統領が尖閣へ安保適用するという言及は初めてだがその意味は」との記者質問に答えて、オバマは「米国の立場に何も新しいものはない」と言った。既に米政府高官が明言しておりこれは「我々の一貫した立場」だと答えている。(原文省略)尖閣諸島の主権が日中いずれにあるかに関与しない。歴史的に日本の施政権下にあること認め、その地域は日米安保の対象である。これも一貫したものである。これがオバマの答えである。(原文省略)「満額回答」とは未達のものを要求し全面承諾の答えを引き出すことである。「何も新しいものでない」発言の引き出しは外交成果ではないリベラル21 半澤健市 2014.05.01

・私はその人を常に先生と呼んでいた。だからここでもただ先生と書くだけで本名は打ち明けない。(略)私が先生と知り合いになったのは鎌倉である。その時私はまだ若々しい書生であった。暑中休暇を利用して海水浴に行った友達からぜひ来いという端書を受け取ったので、私は多少の金を工面して、出掛ける事にした。」(漱石「こころ」冒頭)「私が先生と出会ったのは鎌倉である」というきっかけを話す場合にかなりのんびりとした時間がそこに出てきますね。それは、最初読んだときはあまり感じなかったのですけれども、いま読み直してみるとやっぱり読者をふだんのあくせくした時間から少しスローなゆったりとした時間、その場所に誘ってゆくというほんとうにうまい構成になっている。私にとって漱石の「こころ」というのはたぶん自分の人生とともに変わっていった。いわば「死」というものが常に覆い被さっている小説なんですけれども、それを読みながらどうしてこんなに最後になにかしら光がほのぼのと輝いている、場合によっては明るさ、暖かさを感じてしまう。そういう小説なんですね・・・(姜尚中 朝日新聞 2014年05月01日

・本日、NHK視聴者部に問い合わせ会長秘書室に確かめてもらったところ、
籾井勝人氏は今現在もNHK会長職に とどまっているとのことでした。そこで当会は、ただちに下記の受信料凍結運動開始の通知文をNHKに送付し、籾井勝人氏の NHK会長辞任を停止条件として本日より受信料支払い凍結運動を開始しました。(略)会長就任会見での数々の暴言以来、収まる気配がない籾井氏のNHK会長としてあるまじき言動を見るにつけ、いまや籾井氏が会長職にとどまられること自体が、NHKにとって害あって益なしになっていると言って過言でありません。そのため、当会と同様に、受信料の支払いを一時凍結してでも、籾井氏がNHK会長職 を一刻も早く辞されるよう望む声がNHK内外で急速に広がっています。こうした声に連携し、それをさらに広めるために、当会は、先に予告させていただいたとおり、本日(2014年5月1日)から、受信料の支払いを凍結する運動を開始するとともに、この運動への参加を視聴者各位に呼びかけることにしたことをご通知いたします。(略)当会としての考え方を以下のとおり、お知らせいたします。これをご参照いただき、凍結運動に多数の皆様のご参加を期待するものです。(NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ 2014年5月1日

・毎日新聞が3日の憲法記念日を前に行った全国世論調査によると、
憲法9条を 「改正すべきだ と思わない」 との回答は 51%と半数を超え、「思う」の36%を15ポイント上回った。安倍晋三首相が憲法解釈変更で集団的自衛権行使を認めようとしていることも影響したとみられる。(毎日新聞 2014年5月3日

政府は、集団的自衛権の行使を「放置すれば日本が武力攻撃を受ける」事態に限定し、自衛隊を他国の領土、領海、領空には原則として派遣しない方針を固めた。限定的な行使容認にとどめることで、慎重論が根強い公明党との妥協点を探る。(毎日新聞 2014年5月3日

・訪米中の
石破茂自民党幹事長は2日、ワシントンで講演し、安倍晋三首相が目指す集団的自衛権の行使容認に関し、「スタート段階はかなり(範囲が)限定されたものになる」と述べ、公海上の米艦防護などが対象になるとの考えを示した。その上で「もし必要であれば、それをさらに広げることは可能だ」と語った。(時事通信 2014年5月3日

石破自民党幹事長が集団的自衛権の行使容認に向けた安倍政権の「戦略」をあけすけに語りました。高村自民党副総裁が打ち出した「限定的行使」論の正体がこれです。(井上澄夫 米空軍嘉手納飛行場・一坪反戦地主 2014年5月3日

寺田逸郎最高裁長官は憲法記念日の3日に先立ち記者会見し、集団的自衛権の行使容認を巡る解釈改憲の論議が活発化している現状について、「国民的な議論に委ねられるべき課題と考えている」と述べた(引用者注:司法は憲法記念の日に政府の解釈改憲は違憲と釘を刺したということでしょう)。(
毎日新聞 2014年5月3日

・「わざとらしさ」についてしらべていた。(略)朝日新聞労組がけふ開催した「言論の自由を考える5・3集会」のゲストに、道化師・田母神俊雄がまねかれたのだとか。おなじ催し物に10数年前わたしも呼ばれた記憶がある。「無変化の装いをまとった全面的変化(崩ー壊)が起こっている」(
ミシェル・ドゥギー「パニックの記――主題・変奏・対位法」)ことはまちがいない。朝日新聞労組は「民主主義」をことさらわざとらしく演じてみせつつ、いわば「良心的に」ファシズムを誘導している。反ファシズムに似せたそれは、紛うことないファシズムの再演である。(略)朝日新聞労組員の多くや、週刊金曜日編集部は、反ファシズム運動にはかならずファシズムがまぎれこむこと、さらには、ファシズムはその身体に一見反ファッショ的なるものをすっぽり包含して、はじめて強靭なファシズムになりうることを、あまりにも知らなすぎる。佐藤優や田母神はファシズムの永続のためにとても有用である。(略)総転向時代の幕開けである。(辺見庸「日録15」2014/05/03

人は生き続ける限り、心の奥深くにいくつもの記憶を少しずつ積み重ねる。それらの記憶は、たいてい年齢を経るごとに移ろい変容してゆく。輪郭がぼやけて忘れてしまう場合もあれば、逆に輪郭がぼやけることで、かえって生涯にわたる意味合いを帯びてくる場合もある。(略)両者に共通しているのは、記憶の根底にある空襲の体験である。45年5月の空襲で東京の自宅を焼かれ、父親の実家があった岐阜県の大垣に逃げたが、大垣もまた7月末の空襲で町全体が炎上した。7歳の古井由吉が、赤々と燃えさかる大垣の町を慄えながら眺めている。この体験こそ、たとえ40代になろうが70代になろうが、幼年の自己との間を無限に往復するこの作家の人生を宿命づけたのではないか。本書で語られる著者の生涯そのものが、まるで小説のように思えてくる(引用者注:久しぶりに「読んでみよう」という気になった。長女の名前は古井由吉の「由」、次女には「
杳子」の書名そのものをいただいた)。(書評「古井由吉著『半自叙伝』」原武史 朝日新聞 2014年5月4日

・太平洋戦争の最中、戦局日ましにわるくなっているころ。日本軍、ガダルカナル島で大敗北、撤退開始。(略)ニューギニア増援の日本輸送船団8隻が米軍機の攻撃により全滅し3664人が死亡。つぎからつぎへとひとが死んでいった。(略)
ひとは 毎日毎日、 殺し殺されつづけ、新聞は嘘を書きつづけた。6月には戦艦「陸奥」が爆沈。岩国市の柱島泊地で原因不明の爆発、乗員1121人中 771人が死亡。 生存者はこの事故を一切口外しない旨の「血判誓約書」 を大本営により 書かされたうえ、南方の戦地に送られ、多数が死んでいる。 6月25日、 帝国政府は「学徒戦時動員体制確立要綱」を決定。実時間 になにを書くか、 語るか。そのころの実時間に、小林秀雄は、「大東亜の文化の新しい建設のために、アジアの各文学者が共通の理想の下に、提携し協力する」ことの意義を講演で語っていた。(略)小林のこの講演には、本を買ったとうざはまったく 気づかなかったが、いま読みなおすと、興味深い矛盾と破綻と逡巡がある。(辺見庸「日録15」2014/05/05

不思議な出来事である。集団的自衛権行使を容認しようとする安倍晋三政権が、その根拠に五十五年前の砂川事件の最高裁判決を持ち出したことだ。駐留米軍を合憲とした判例だが、判決文の傍論部分で次のように書いている。<自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない>わざわざ「自国の」と書いているように、
どう考えても個別的自衛権のことである。集団的自衛権の話が出てくるのは、やはり傍論の中に「主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく」という一文などが入っているためだと想像される。確かに国連憲章では、集団的自衛権の権利が定めてある。だが、主権国家が憲法と照らし、使わない判断をするのも当然である。仮に砂川判決が集団的自衛権行使を認めているとするならば、後の政府解釈も変わるのが道理である。でも、そうならなかった。それどころか、砂川判決の三カ月半後に、当時の岸信介首相は参院でこう答弁した。<集団的自衛権は、日本の憲法上は、日本は持っていない、かように考えております安倍首相の祖父の発言である。普通の人が読んでも、砂川判決を根拠にすることはほとんど無理なはずだ。(東京新聞 2014年5月5日

小林の言う「わが國の文学者たちが社会主義といふ共通の理想の下に提携し運動したことがあった」というのは、プロレタリア文学運動のことだ。プロ文は日本では大正末期から昭和初頭に大きな勢力にそだったが、弾圧と内部対立と相次ぐ転向者たちの登場によって、まさに小林秀雄がこの講演をした34年以後は潰滅する。広辞苑ではプロ文がもっぱら権力の弾圧で壊滅したとされているが、転向と内部対立も瓦解の要因にあったのは事実であり、小林の言う「醜態」はあながち嘘ではない。だが、小林の実時間における発言と時代認識は正しかったといえるのか。イデオロギーと組織を重視して、「人の和」を軽蔑した「罰」として、プロ文は崩壊したのか。小林多喜二(1903-1933) はプロレタリア文学の旗手として登場し、「蟹工船」「党生活者」など労働運動や革命運動の実相を描いたすえに、地下活動のさなか(小林秀雄がこの講演をした前年!)に官憲の手で虐殺されたのだった。小林秀雄は小林多喜二の死を視野にいれて、この講演をしたのか。日本という群落の薄気味悪さはどこから生じているのか醜悪とはなにか。(辺見庸「日録16」2014/05/06

【追記】引用者注:「日録17」の5月19日付に辺見の次のような「訂正」記事がある。「文芸評論家の阿部浪子さんからメール。「日録16」の5月6日付で、小林多喜二は小林秀雄がこの講演をした前年に官憲の手で虐殺されたのだった……というくだりは、小林秀雄の「大東亜文学者大会」における講演が1943年8月で、多喜二が虐殺されたのは1933年2月だから、10年ちがいますよ、というご指摘。まったくそのとおり。訂正する。わざわざ「小林多喜二(1903-1933)」と記しておきながらなぜこうしたまちがいをしたか、すぐにはおもいあたらず、ただ絶句、赤面。脳出血後、時間感覚がおかしくなった、という自覚はあるものの、錯誤のありよう、原因ははっきりせず、ああ、えらいボケたもんだな、ひょっとしてニンチかな、進退ここにきわまれりだな、の感いとどし。」

・首脳会議の裏で続けられた日米TPP交渉の結果をほとんどの新聞は「決裂」と報じ、読売だけ「大筋合意」と伝えた。その後の報道を見ると、日本は牛肉・豚肉の関税引き下げで米国の要求を呑み、交渉はひと山越えたようだ。「大筋合意」である。多くのメディアは結果的に「誤報」となった。(略)「記事を書いたのは甘利大臣を取材している読売の記者ではない。大筋合意という情報は、別ルートで記事になった」交渉の関係者はそう指摘する。集団的自衛権や秘密保護法で政権に寄り添う論調が目立つ読売は政権中枢とホットラインで結ばれている、とも言われている。記者会見で「大筋合意という報道があるが」と問われた菅官房長官は「両国には解決すべき問題が残されている。大筋合意とは言えない」と読売の報道を否定しながら、目は笑っていた。(略)情報が隠され、都合のいいことだけ小出しにして世論を誘導する権力。政権に同調して有利な立場を目指す大新聞。ジャーナリズムは危うい状況になってきた。(デモクラTV 山田厚史 2014年5月8日

『アンネの日記』破損事件は逮捕された容疑者からしても小さな虞犯であるようだが、ところがそこには恐るべき病理が潜んでいる。(略)まず最初の問題は、「日本にはユダヤ系の人たちが少ないので、反ユダヤ主義は無い」との広く信じられている思い込みだ。そこに最初の無知による落とし穴がある。古くには、シェックスピアは『ヴェニスの商人』を、たった一人のユダヤ人も知らずに書いている。当時の中世英国からは、全てのユダヤ人が追放されていたからだ。にもかかわらずこの喜劇が、キリスト教世界において「シャーロック=ユダヤ人」という「ステレオタイプのユダヤ人像」を根付かせてしまい悲劇に結びついたことは否定できない。このような差別的偏見は、フクシマ原発事故以降の日本でも、ナチスもどきの「世界原発ロビーを牛耳っているのはユダヤ金融資本」などのデマ言説として今でも散見される。これなどは「ペストの流行はユダヤ人が井戸に毒を入れたせいだ」としてポグロム(ユダヤ人迫害)を起こしたヨーロッパ中世のキリスト教徒と同程度の反知性 の現れである。(梶村太一郎の反核覚え書き 2014年5月8日

積極的平和主義と呼ぶものによって、安倍首相はより大きな世界的な安全保障の責任を担おうとしている。しかし安倍首相は大きなハードルに面している。今年ノーベル平和賞にノミネートされている憲法の第九条は、日本国民は「国権の発動たる戦争・・・永久にこれを放棄する」と定めている。安倍氏が目的としている軍隊の権限の変更は、国会両院の3分の2の承認の上に国民投票を要するという、大変困難なものであるからだ。だから替わりに、安倍氏は政府に憲法を再解釈させて九条を無効にしようとしている。(略)安倍氏は、憲法は厄介な制約を日本の主権に課すものであって時代遅れであると感じている。しかし、(略)憲法の主要な機能は政府の権力を抑制するものであるということを安倍氏は知るべきである。政府の思い付きで変えられるようなものではない。さもなければ、そもそも憲法などを持つ理由さえなくなってしまう。〔NY・タイムズ社説〕(翻訳・乗松聡子 2014年5月9日
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