以下は、高田健さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会)のCMLへの投稿「ロシアによるウクライナへの軍事介入に抗議し、クリミア併合を行わないよう要請します」(2014年3月22日)に対して同CML参加者が私の論を援用して反対の論を述べたWPN参加者の反論に対する私の再反論です。
 
Sさんがご紹介の労を取られたあるWPN参加者の「ウクライナ・クリミア」問題に関する見解は以下のとおりです。以下の論は高田健さんのご見解ではなく、あるWPN参加者の見解にすぎませんが、高田さんが肯定的に援用していること、また、同見解の中に「WPNとしては・・・」という表現もありますので、高田健さん及びWPN総体の見解と認めて反論しておきます。
 
あるWPN参加者の見解(CML 030428所収):
(1)私は、東本隆(引用者注:隆→高志)さんという方の主張を知りませんが、ウクライナの政変と新政権の樹立に当たって、それが欧米の軍事力を背景とした軍事クーデターであるということは言えないでしょう。
 
ウクライナの旧政権の崩壊にあたって、極右の反ロシア排外主義勢力、あるいはネオナチグループが行動的主導権を取ったのは事実でしょうが、昨年11月以後の旧政権に対する運動が、全体として欧米の策謀によるという評価はあたっていません。冷静に見れば、ウクライナ問題を背景にロシアとEUの関係が悪化するようなことを米国やEUが意識的・計画的に仕組んだと言うストーリーは、考えられません。
 
(2)やはり、ウクライナ問題で第一に批判すべきなのは、危機感を抱いたプーチン政権が他国の主権を侵害してクリミアに軍事介入し、あまつさえ他国の領土であるウクライナを自国に編入するという国際法にも、国連憲章にも反する行為を行ったことです。
 
WPNとしては、やはりロシア、プーチン政権の行為こそが平和の破壊として批判すべきことだと思います。
 
(3)………私は、ウクライナ暫定政権成立の背景に欧米の陰謀的なものがあるという話については、ほとんど針小棒大なものにしか思えません。もしそういうことがあるのだとしたらプーチン政権が軍事介入の口実に使わないはずはないでしょう。さすがのプーチン政権もそこまでは言ってません。むしろプーチン政権の主張だけをとってみても、軍事介入に批判すべきということになるのではないでしょうか。
 
上記のあるWPN参加者の見解を便宜的に3点にわけます。以下、その(1)と(2)について反論しておきます。(3)は私の主張とは関係ありませんので省略します。
 
第1。あるWPN参加者は上記の(1)で「昨年11月以後の旧政権に対する運動が、全体として欧米の策謀によるという評価はあたっていません」と断言し、「冷静に見れば、ウクライナ問題を背景にロシアとEUの関係が悪化するようなことを米国やEUが意識的・計画的に仕組んだと言うストーリーは、考えられません」と主張していますが、ジャーナリストの田中宇さんは2月22日のウクライナ旧政権の転覆前の「2月初めには、米政府がウクライナの政権転覆を支援し、新政権の首脳人事に介入していることが、米国の国務次官補と、駐ウクライナ大使との電話会談のユーチューブへの漏洩で暴露されている」とユーチューブという事実の証拠と西側の報道を挙げて論証しています。この事実ひとつをとってみただけでも「ロシアとEUの関係が悪化するようなことを米国やEUが意識的・計画的に仕組ん」でいたことは明らかというべきでしょう。あるWPN参加者の断言と主張は主観的なものでしかなく、明らかになっている証拠からもその主張のナンセンス性を突きつけられています(弊ブログ2014.03.12付記事中の田中宇さんの「プーチンを強め、米国を弱めるウクライナ騒動」という論を参照)。
 
また、元外交官で政治学者の浅井基文さんが「日本でもこれぐらいの文章が私たちに紹介されるぐらいにならないと、私たちの国際問題に対する見方はなかなか鍛えられないと思う」と評価している中国「環球時報」(3月6日付)掲載のスタンフォード大学国際安全保障協力センター(CISAC)研究員の薛理泰さんは「米ロ クリミアでの軍事対決はあり得ない」と題する論で以下のように「モスクワの判断」を肯定的に評価しています(弊ブログ2014.03.10付参照)。
 
「今回ウクライナ政権が一朝にして転覆したのは、モスクワの判断では、NATOが背後で操っていたからであり、しかも政権急変はカラー革命という性格に属する。その後遺症の一つとして、NATOの勢力がさらにモスクワに向かって大きな一歩を進めることになった。今後ウクライナ方面に関しては、ロシアとしてはNATOの強力な抑止力に直面することになる。」
 
第2。あるWPN参加者は上記の(2)で根拠もなく「危機感を抱いたプーチン政権が他国の主権を侵害してクリミアに軍事介入し」たと断定していますが、「これほど事実関係に対する(略)こだわりに欠ける」判断は「日ごろから公正さをうたい文句にしている」WPNとしての判断だけに「余計に重大です」(カギカッコ内は浅井基文さんの「クリミア問題とロシア」(2014.03.09付)からの引用)。
 
浅井さんはこの点について次のように言っています。
 
「確かにプーチン大統領がウクライナに対する出兵に関する発言を行った(3月4日)ことには問題があります(朝日新聞社説が指摘した主権と領土の一体性という原則に違反する)。しかし、プーチンの趣旨はあくまでもクリミアに住むロシア系住民の保護に重点があり、ウクライナに対して「軍事介入」(志位委員長)するということではありません。(略)ロシアがウクライナに対して軍事干渉する意思がないことは、すでに紹介した3月4日のプーチンの記者会見における発言及び同月7日にロシア大統領府スポークスマンが行った発言からも明確に確認できます。」(同上
 
*ちなみに3月4日のプーチンの記者会見の全文は「プーチン大統領演説全文 関根和弘氏のツイートまとめから」(街の弁護士日記 2014年3月20日)で見ることができます。
 
これも浅井さんが紹介されているものですが、3月19日付けの中国「環球時報」掲載の論攷でも次のように言っています。
 
「歴史から見れば、クリミアは数百年にわたってロシアの一部であり、ロシアの固有の領土である。1954年にフルシチョフによってウクライナに贈り物とされたが、これはソ連内部の行政的境界の調整に過ぎないと見ることが可能であり、国際法的な効力を有するものではない。(略)道に迷った子どもが母親の懐に戻ることは、「国家の領土保全」原則と矛盾しないのみならず、当然そうあるべき正義である。クリミア住民投票がロシア加盟を宣言したことは、「分離主義」ではなく「歴史的復帰」なのだ。中国は無原則にロシアを支持しているわけではなく、中国が支持しているのは国際的正義だ。」(浅井基文「ウクライナ問題:中国政府の提案と考慮」(2014.03.24)中の「2.中国専門家の解釈」)
 
第2のはじめに述べたことをもう一度繰り返しておきます。「これほど事実関係に対する(略)こだわりに欠ける」判断は「日ごろから公正さをうたい文句にしている」WPNとしての判断だけに「余計に重大です」。再考していただきたいものです。
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