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 岡留安則氏(「噂の真相」元編集長)

私は先のエントリでリベラル・左翼系雑誌の『世界』や『週刊金曜日』、またインターネット・リベラル紙の『マガジン9』などのいわゆるリベラルメディアの著しい質の劣化について言及しましたが、その質の劣化の甚だしい(もうおよそリベラル系メディアとは評しがたい)『マガジン9』の2010年10月13日号に岡留安則氏(「噂の真相」元編集長)が「日本政府にとって小沢と沖縄は邪魔者でしかない」という論説記事を書いています。

それによると、「検察審査会に『起訴すべし』とされたその小沢氏が、沖縄選出の喜納昌吉前参議院議員に対して、次の県知事選候補は『伊波洋一しかいない』と発言したという」ことです。ほんとうでしょうか? 岡留氏が言うことがほんとうだとすると一大ニュースというべきですが、管見にして私は、小沢氏が伊波洋一氏を沖縄県知事選候補として推していることを推察させるにたるメディア記事をほかに知りません。

疑問をもって岡留氏の上記の記事を再度読み直してみると、同記事は「?と発言したという」という伝聞形で書かれています。誰から伝聞したのか? もちろんうわさの当事者の小沢氏からでも、もうひとりの当事者の喜納昌吉前参議院議員(民主党沖縄県連代表)本人からでもありません。ただ「?と発言したという」というだけで、そのうわさを誰から聞いたのかは皆目わかりません。まさに「噂の真相」元編集長の本領発揮というところでしょうか。

仮にこのうわさを喜納昌吉氏本人(本人から聞いたのであれば伝聞にはなりませんが)及び彼の周辺の誰かから聞いたとしても喜納氏の発言が真であるかどうかはおおいに疑問です。例の菅総理の「沖縄は独立したほうがいいよ」発言を喜納氏が暴露した際は「『独立』の下りは冗談めかしてもいた」と当人も認める菅氏の「半分ジョーク」のことばを自身の近刊の著書を通じてリークしたのでした。冗談はあくまでも冗談でしかなく、冗談めかしてほんとうのことを言うこともあれば冗談めかしてウソを言うこともあります。国会でこの問題が追及されたとき、菅総理はそういうことは言った覚えはない、と知らぬ存ぜぬと答弁しましたが、その菅氏の答弁に喜納氏が抗議したという話は一切聞きません。すなわち、喜納氏のリークは人さまのジョーク(それも真実かどうかは定かではない)をあげつらっていう程度の真実性しかないということです。その程度の真偽が定かではないうわさをご愛嬌のうわさ話としてではなく、まことしやかに真実のように書く岡留氏の筆法はジャーナリストの筆法といえるでしょうか? この筆法は根拠のないうわさをダシにして(あるいは自ら創りだして)書く、「儲け」(といっても、いろいろな「儲け」があるでしょうが)のためには手段を選ばないイエロー・ジャーナリズムの筆者の筆法といわなければなりません。

岡留氏がこのような真偽の定かではないうわさをあえて書くのは、彼の根拠のない「幻視」としての小沢ひいきの姿勢とおおいに関係があるでしょう。岡留氏は同記事で次のように書きます。

民主党本部はいまだに、仲井真知事支持と民主党独自候補擁立の間で揺れている。沖縄県民の立場に立てば、小沢氏の方がまさしく正論である。(略)沖縄から見れば、対等かつ緊密な日米関係、辺野古基地建設反対、日米地位協定改定など難問が山積する基地問題を解決するには、これまでの官僚丸投げから政治主導の政治を力説する小沢氏の方がはるかにマシな政治家である。
(癒しの島・沖縄の深層 2010年10月13日)

上記では岡留氏の小沢氏評価はやや抽象的ですが、琉球新報掲載の「沖縄幻視行」の小沢評価はもっと具体的です。

沖縄的にいえば、小沢氏は辺野古沖の新基地建設に疑義を唱えており、日米で納得する話し合いを持つという発言に期待をつなぎたい。(略)少なくとも、『緊密で対等な日米関係』を指向する小沢氏の方が菅総理よりも沖縄にとってははるかに有用な人物である。
(琉球新報「沖縄幻視行」 2010年9月4日付。『写真で見る・知る沖縄』「【民主党代表選】 全面対決の民主代表選」 2010年9月4日付参照)

しかし、岡留氏の上記の「小沢氏は辺野古沖の新基地建設に疑義を唱えて」いるという発言といい、「『緊密で対等な日米関係』を指向する小沢氏」という発言といい、「幻視」のみでまったく根拠のあるものではありません。「小沢氏は辺野古沖の新基地建設に疑義を唱えて」いるといっても、一方では下地島や伊江島を「移設」先の代替候補地に挙げて「県内移設」を主張しています。こうした主張をする人物がどうして「菅総理よりも沖縄にとってははるかに有用な人物である」などといえるでしょうか。小沢氏の下地島及び伊江島「移設」案は、普天間基地の無条件閉鎖と国外・県外移設を切望している〈沖縄の民意〉とは明らかに相容れないものです。

また、「『緊密で対等な日米関係』を指向する小沢氏」という岡留氏の発言に関していえば、小沢氏は先の民主党代表選の告示にともなう菅氏との共同記者会見で「沖縄も米国も納得できる案は、知恵を出せば必ずできると確信している」とあたかも普天間移設問題に関して県外移設の「腹案」があるかのように述べたものの、翌日の日本記者クラブ主催の公開討論会の席上では昨日の発言とうって変わって「日米合意を尊重することに変わりはない」とトーンダウンさせ、自身の持つ対米政策とこれまでの鳩山、菅両内閣の対米政策の方針とは基本的に変わりはないことを明確にしました。小沢氏の言う「日米合意を尊重することに変わりはない」とは、同合意が米国のアジア戦略を優先させた不平等合意であることが明らかである以上、これまでの自民党政府、鳩山、菅両内閣の対米従属路線堅持の方針となんら変わるところはないわけですから、それを「『緊密で対等な日米関係』を指向する小沢氏」と評価することも、岡留氏の「幻視」以外の、さらには小沢氏に対するひいきの引き倒しの、なにものでもないといわなければならないでしょう。

こうして岡留氏は真偽の定かではないうわさを用いてイエロー・ジャーナリズムよろしく自身の「幻視」を『マガジン9』の読者との「共同幻視」にまで拡げようとしているのです。結局、岡留氏はおそらく自身の主観的な思いとは逆行してメディアを通じて〈沖縄の民意〉を裏切る「小沢支持」の行為を読者にけしかけ、さらには強要しているということにならざるをえないのです。

ときもとき、上記の岡留氏の記事のうわさの一方の当事者である「喜納氏が沖縄県知事選出馬に意欲」というニュース(注1)が電撃のように駆け巡り沖縄の革新統一の光に弓を引くものとして多くの市民の怒りを買っています。うそか真実かわからないあいまいな内輪話を自らの著書に記して臆面もない喜納氏(そして、その臆面もない喜納氏がらみのうわさ話を真実のように記事にしてこれも臆面もない岡留氏、さらには今回のうわさ話を拡めた張本人の下地氏)よろしく今回も彼の単なるスタンド・プレーだった可能性が高いようで、民主党沖縄県連の仲間内からも「そんな話は聞いていない」「県連にはさまざまな意見があり、まとまらないだろう」などと不信を買っているようです(注2)。

さて、上述のごとく喜納氏及び同氏周辺にたちこめているうわさは客観的に見て信憑性のきわめて低いうわさにすぎません。そうしたうわさの類を記事にして得々とする岡留氏なる人は果たしてジャーナリストと呼ぶに値する人物でしょうか? また、そうした信憑性のない記事を書いて臆面もない岡留氏なる人を重用する『マガジン9』というメディアは果たしてリベラル系メディアと評することができるのでしょうか? 私の答は断じてノーです。

付記:少し岡留安則氏に厳しすぎた評価だったかもしれません。私は岡留氏のノーテンキと反権力の感覚は認めるものです。あえて付記します。

注1(1):沖縄県知事選:喜納氏が出馬に意欲(毎日新聞 2010年10月14日)
注1(2):喜納代表、出馬に意欲 下地氏がTVで説明 県連内に不信感(沖縄タイムス 2010年10月15日)
注2:喜納氏には普天間問題について「今後とも私は、県内移設反対を貫いていく」(喜納昌吉ブログ 2010年3月25日付)と言ったかと思うと、その発言をいとも簡単に後退させて11月の県知事選に向けた民主党沖縄県連の基本政策には単に「県民合意のない辺野古への移設は不可能」と記すだけで「県外・国外移設」を盛り込まないという彼の政治倫理の姿勢が問われてしかるべき前歴もあります(沖縄タイムス 2010年8月22日付)。
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