ジャーナリストの田原総一朗さんが東京都知事選における脱原発候補(宇都宮候補、細川候補)のいわゆる「一本化」問題について面白いことを言っています。
 
「告示直後から、『反原発』の細川陣営と宇都宮陣営の候補者を一本化すれば、舛添陣営に対抗できるのではないかという声があった。しかし、宇都宮さんが降りなかったために一本化は実現しなかったと言われた。私が宇都宮さんへのインタビューで『なぜ降りなかったのか』と聞くと、宇都宮さんは『それは違う』と答えた。宇都宮さんは、どうするかをめぐって細川さんと『1対1で話し合いたい』と伝えた。しかし、細川さんはそれを拒否したのだという。なぜ拒んだのかはわからないが、細川陣営には選挙戦から降りるという選択肢はなかったのではないか。小泉さんは細川さんを都知事選に立候補させることで『反原発国民運動』第2弾の舞台をつくることを考えていたのだろう。私のインタビューに対して、細川さんは都知事としての公約を何ら具体的に語らなかった。へたに都知事になってしまったら困る、といった印象すら受けた。いってみれば、小泉さんの目論見に細川さんが全面的に協力したということなのだろう。そのことが有権者にはわかったのではないか。だから選挙戦が盛り上がらなかったし、投票率も極めて低かったのだ。」(「小泉氏は「脱原発国民運動」第3弾をどう仕掛けるか」nikkei BPnet 2014年2月12日)
 
だから、「細川陣営は主要候補者が一緒に討論することを拒んだ」。「『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)でも討論形式の企画を提案したところ、他の候補者は承諾したものの、細川陣営だけが『ノー』と回答してきた」。「細川さんは『反原発』以外に特に問題意識を持っていないように感じられた。聞けば聞くほど、都政に対する関心のなさが露呈する。私がインタビューした6人の中で最も話の中身がなかったように思う。」(同上)
 
上記で田原さんは、東京都知事選における細川さんの立候補は「小泉さんの目論見に細川さんが全面的に協力した」もの。そして、その「小泉さんの目論見」とは、「細川さんを都知事選に立候補させることで『反原発国民運動』第2弾の舞台をつくること」だったと言っています。東京都知事選を「『反原発国民運動』第2弾の舞台」にするのが「目論見」であれば、その「舞台」は「『反原発国民運動』第2弾」という演目を最後まで上演しきるものでなければならない。だから、はじめから「細川陣営には選挙戦から降りるという選択肢はなかった」。「一本化」という戦術も細川陣営の採用(と)るところではなかった、ということを田原さんは述べています。
 
私は田原さんの政治的立ち位置、その思想性は評価しません。が、田原さんにはよきにつけ悪しきにつけ長い間商業ジャーナリズムの頂点の位置にいて政界(ことに保守政界)を俯瞰してきた眼があります。保守政界との人脈もあります。その政界通の眼から見た今回の「一本化」劇の田原流解釈(それも細川氏の「朝まで生テレビ!」での討論形式の企画の拒否など自身の見聞に基づく解釈)は相当に根拠があります。端的に言って、私は、今回の「一本化」劇に対する田原流解釈は真相を穿っているだろうと思います。 

その田原流解釈(推論)が真であると仮定して、今回の「一本化」劇を顧みてみると、同「一本化」劇に関して選挙期間中の宇都宮陣営、細川陣営双方の相手側陣営批判、というよりも罵倒合戦は、目も当てられないほどに激しいものがありましたが、いずれの批判も標的を射当てることのない、というよりも標的そのものが存在しない「一切虚無」の批判でしかなかったということにしかなりません。ニーチェは「私が嘘と呼ぶのは見えるものを見まいとすること、あるいは見えるとおりには見まいとすることである」(『反キリスト』)と述べましたが、その伝で言えば、「見えないものを見える」と妄想するたぐいの批判が宇都宮陣営、細川陣営双方の相手側陣営批判であったということになるでしょう。宇都宮陣営の細川陣営批判の代表的なものとして「vanacoralの日記」の選挙期間中(後)の議論、また、細川陣営の宇都宮陣営批判の代表的なものとして「世に倦む日日」の同じく挙期間中(後)の議論を挙げておきましょう。
 
以下、くだんの田原総一朗さんの論。
 
小泉氏は「脱原発国民運動」第3弾をどう仕掛けるか
(田原総一朗 nikkei BPnet 2014年02月12日)
 
東京都知事選の投開票が2月9日に行われ、元厚生労働相の舛添要一氏が211万票を獲得して初当選した。それにしても今回の都知事選は最後まで盛り上がらなかった。投票率は46.14%と過去3番目の低さ。有権者の半分以下の投票で決まるのは異常と言わざるを得ない。
 
政策論争を拒んだ細川陣営
 
都知事選を盛り上がらないものにした一番の責任は細川護熙氏にあるのではないか。細川陣営は主要候補者が一緒に討論することを拒んだからである。
 
「朝まで生テレビ!」(テレビ朝日)でも討論形式の企画を提案したところ、他の候補者は承諾したものの、細川陣営だけが「ノー」と回答してきた。このため、2月1日未明放送分は、候補者6人に個別にインタビューする内容に変更せざるを得なかった。6人とは、舛添さん、細川さん、宇都宮健児氏、田母神俊雄氏、ドクター・中松氏、家入一真氏である。
 
その後、主要4候補がテレビ番組に一緒に出演する場面もあったが、政策論争を激しく戦わせることもなく、ただ司会者が順番に話を聞くだけだった。これでは選挙戦は盛り上がらない。
 
細川さんは「反原発」以外に特に問題意識を持っていないように感じられた。聞けば聞くほど、都政に対する関心のなさが露呈する。私がインタビューした6人の中で最も話の中身がなかったように思う。
 
「反原発国民運動」の第2弾は大成功
 
しかし、都知事選を盛り上がらないものにした張本人は、実は小泉純一郎氏だろう。小泉さんは、都知事選をいわば「反原発国民運動」の第2弾と考えたのではないか。
 
第1弾は昨年11月12日に日本記者クラブで行った「即原発ゼロ」発言である。これを朝日新聞、毎日新聞、東京新聞が大きく報じた。
 
すでに政界を引退し、陶芸家になっていた細川さんが都知事選への出馬を決めたのは、小泉さんと会談した12月14日である。小泉さんに背中を押され、細川さんは都知事選出馬を決意した。細川さんを引っ張り出したのは小泉さんだったのだ。
 
「反原発国民運動」の第2弾は大成功だったと言えるだろう。都知事選という舞台が設定されたため、二人の街頭演説には大勢の有権者が集まった。小泉さんは最初から、都知事選を舞台にして「反原発国民運動」の第2弾を展開しようと考えていたのではないかと思う。
 
小泉氏の目論見に細川氏が全面協力、有権者に見破られる
 
告示直後から、「反原発」の細川陣営と宇都宮陣営の候補者を一本化すれば、舛添陣営に対抗できるのではないかという声があった。しかし、宇都宮さんが降りなかったために一本化は実現しなかったと言われた。
 
私が宇都宮さんへのインタビューで「なぜ降りなかったのか」と聞くと、宇都宮さんは「それは違う」と答えた。宇都宮さんは、どうするかをめぐって細川さんと「1対1で話し合いたい」と伝えた。しかし、細川さんはそれを拒否したのだという。
 
なぜ拒んだのかはわからないが、細川陣営には選挙戦から降りるという選択肢はなかったのではないか。小泉さんは細川さんを都知事選に立候補させることで「反原発国民運動」第2弾の舞台をつくることを考えていたのだろう。
 
私のインタビューに対して、細川さんは都知事としての公約を何ら具体的に語らなかった。へたに都知事になってしまったら困る、といった印象すら受けた。
 
いってみれば、小泉さんの目論見に細川さんが全面的に協力したということなのだろう。そのことが有権者にはわかったのではないか。だから選挙戦が盛り上がらなかったし、投票率も極めて低かったのだ。
 
ふたを開けてみれば、細川さん(95万票)は舛添さんに対抗するどころか、宇都宮さん(98万票)にも敗れて3位という結果に終わった。
 
気になる20代の田母神支持
 
気になったことがほかにもある。4位になった元航空幕僚長の田母神さんが61万票を獲得。朝日新聞の出口調査によると、20代の24%が田母神さんに投票し、舛添さんの36%に次いで2位となったことである。
 
田母神さんは自分のことを「新保守」と言っている。保守の中でも右側という意味だろう。私のインタビューに対して「自分は安倍晋三首相と全く同じ意見だ」と答えている。
 
「安倍さんは靖国神社に参拝しているが、あなたは靖国参拝に賛成か」と聞くと、「当然、賛成だ」と答えた。靖国参拝をした安倍さんを中国や韓国が批判するどころか、アメリカが「失望」したとコメントしている。そのことを質問すると、「日本はいつまでもアメリカの従属国であってはいけない。自立しなければならない」と答えた。アメリカが何と言おうと、気にすることはないと田母神さんは言うのである。
 
「自立する」とは、日本は自分で自分の国を守るということである。そのために核兵器を持つのかという質問には、田母神さんは「持つべきだ」と答えた。
 
そういう田母神さんが20代で2番目に支持された。20代に新保守、もっといえば「ネット保守」が増えているのだろうか。気になる現象である。
 
安倍首相と小泉氏の間に亀裂
 
いずれにしても、今回の都知事選は小泉さんにとって「反原発国民運動」の第2弾であった。ということは、第3弾が十分にありうる。小泉さんはそれをどう考えているのだろうか。
 
小泉さんは第1弾で安倍晋三首相を煽ろうとした。「政治で一番大事なのは方針を示すこと。原発ゼロという方針を出せば、専門家や官僚が必ずいい案を作ってくれる」、そして「野党は全部、原発ゼロに賛成。反対は自民党だけではないか」と言い、安倍首相にとっては絶好のチャンスだと煽った。
 
しかし第2弾では、「反安倍」の旗色を鮮明にした。
 
舛添さんは「自民党の歴史的役割は終わった」と言って2010年に自民党を離党し、自民党は舛添さんを除名処分にした。自民党東京都連は「勝てる候補」として舛添さんを推薦。自民党本部は当初、距離を置いていたが、結果的には安倍首相も石破茂自民党幹事長も応援に入り、全面的に応援した。公明党も応援した。
 
その舛添さんに、細川さんは真っ向から対決することになった。細川陣営、すなわち小泉さんは「反自民」「反安倍」を第2弾で明確にしたことになる。安倍さんと小泉さんの間に亀裂が入ったと言ってもよい。
 
第3弾は国際的な視点から狙いを定める?
 
小泉さんは第3弾をどのような形で打ち出すのだろうか。
 
2月には安倍さんの選挙区がある山口県で知事選が行われる。11月には福島県知事選、12月には沖縄県知事選も控えている。いずれも「反安倍」色を打ち出すには絶好の機会だが、小泉さんはそれらの選挙で応援には行かないだろう。
 
そんな安易なことはしない。第3弾をやるとしたら、国際的な視点からやるのではないか。
 
小泉さんは首相時代に原発推進論者だったことを批判され、「人間の考えは変わるものだ」と答えている。その言葉を踏まえて考えれば、首相時代に靖国参拝を何度も行ったとはいえ、今度は安倍さんの靖国参拝問題に狙いを定める可能性はある。
 
安倍さんの靖国参拝について、中国や韓国はもとより、アメリカまでもが「失望」したと表明している。この点をとらえ、靖国参拝問題と原発問題をからめて安倍政権に揺さぶりをかけてくるかもしれない。小泉さんの狙いはそのあたりにあるように思える。 
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