今回の東京都知事選において「田母神は若者からの支持に支えられた」言説がひとり歩きし、そこから「青年の右傾化傾向」「若者右傾化」説がさらにひとり歩きし、「若者の右傾化=日本の政治の危機」説が一部で声高に主張されていますが、日本の若者層の右傾化は「日本の政治の危機」説が飛び交うほど顕著な傾向を示しているのか? この点について、政治学者の加藤哲郎さんも次のような「危機」説を述べています。「安倍首相の立場・歴史認識により近い右派候補が、20代・30代の若者を中心に(注:古谷経衡さんの分析では「田母神票の中心は30、40代」)60万票を得ていて、事態は深刻です」(加藤哲郎のネチズン・カレッジ 2014.2.15)。 
 
しかし、そうした「危機」説には「些か誇張の感」がある、と問題提起したのが古谷経衡さん(評論家)の「若者は本当に田母神氏を支持したのか?」(Yahoo!ニュース 2014年2月11日)という論でした。「左による『若者の右傾化』は事実誤認の過大評価であり、右からの『若者の(保守的な文脈での)正常化』は願望に基づく過大評価である」というのが各選挙結果指標を分析した上での古谷さんの結論でした。
 
この「若者右傾化」説を考える上でさらに参考になるのが下記の金光翔さんの論です。金さんの論は次のようなものです。
 
■「メモ31」(金光翔 私にも話させて 2014-02-16)
 
田母神が都知事選で60万余りの票を獲得したことに関して、「右傾化」の象徴として朝日その他が報じたり、「新しい政治勢力の誕生」だと右派が喜んだりしている。しかし、ウィキペディアの「東京都知事選挙」の項目の記述を基に、若干抜き出してみたのだが、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E7%9F%A5%E4%BA%8B%E9%81%B8%E6%8C%99
 
14代 1999年4月11日
石原慎太郎 1,664,558
舛添要一 836,104
明石康  690,308(自民・公明 推薦)
<計3,190,970>
 
15代 2003年4月13日
石原慎太郎 3,087,190
<計3,087,190>
 
16代 2007年4月8日
石原慎太郎 2,811,486
<計2,811,486>
 
17代 2011年4月10日
石原慎太郎 2,615,120
<計2,615,120>
 
19代 2014年2月9日
舛添要一  2,112,979
田母神俊雄 610,865
<計2,723,844>
 
こう見ると、田母神の得票は、石原に投票してきた層のうち、舛添に投票しなかった層としてほぼ説明できるように思う。つまり、石原の右翼イデオロギーに共鳴して投票してきた層である。田母神の得票率(都全体で12.5%)が高かった地域は、上から順に、千代田区(18.0%)・中央区(16.4%)・港区(15.0%)であり、いずれも23区内で一人当たり平均年収が高いとされている区である。富裕層(都市上層)こそが右翼イデオロギーと親和的である、と見ることができると思う。
 
https://twitter.com/halt_haru/status/432830792239038464
http://insightxinside.com/20140209-tokyo-election/
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/12/blog-post.html
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33288?page=4
 
少なくとも現時点では、田母神の60万票という獲得票から、何らかの新しい政治的意味を導きだすことは難しいのではないか。石原という田母神的な知事(周知のように今回の都知事選でも石原は田母神を支持している)を10年以上にわたって都民が圧倒的に支持してきたという明白な事実が、あたかも存在しなかったのごとく論じられている事態こそが、むしろ分析の対象になるべきであろう。 

「田母神の得票は、石原に投票してきた層のうち、舛添に投票しなかった層としてほぼ説明できるように思う。つまり、石原の右翼イデオロギーに共鳴して投票してきた層である」。「田母神の得票率(都全体で12.5%)が高かった地域は、上から順に、千代田区(18.0%)・中央区(16.4%)・港区(15.0%)であり、いずれも23区内で一人当たり平均年収が高いとされている区である。富裕層(都市上層)こそが右翼イデオロギーと親和的である、と見ることができると思う」。
 
金光翔さんの分析には特段に斬新な切り口はありません。「左派・リベラル」の視点に立ってふつうに分析すればこうなるだろうというふつうの選挙結果分析です。すなわち、「他紙を抜く」的なネライや奇を衒うようなところはまったくないごくふつうの選挙結果分析であるように思います。ごくふつうの選挙結果分析こそ必要です。選挙結果分析を誤れば、次の選挙において誤った選挙戦術を採用するということにもなりかねません。選挙戦術の誤りは致命的なことです。今回の東京都知事選では誤った選挙戦術の採用はなかったか? 私はあったと思いますし(「宇都宮健児のフライング」問題)、だから「革新」は敗北した、とも思っていますが、真摯かつふつうの選挙分析をする必要があるでしょう。それが私の「結論」です。
 
附記:上記で金光翔さんの挙げているデータ(リンク)は面白いものです。是非ご参照ください。
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