尖閣諸島沖漁船衝突事件であらたにクローズアップされている「領有権」問題に関して国際法の「先占」原則をどのように考えるか、といういま問われている論点について、みどりの未来 運営委員会が「脱「領土主義」の新構想を」という見解を発表しています。たいへん参考になる見解だと思いますのでエントリしてご紹介させていただこうと思います。

【見解】「尖閣」諸島(釣魚島)沖漁船衝突事件―― 脱「領土主義」の新構想を
                                  2010年10月13日   みどりの未来運営委員会

 9月の尖閣諸島(中国名:釣魚島)海域での中国漁船衝突事件をめぐって、中国側の強硬姿勢、日中両国国民の敵対感情が高まっています。このような事態を招いた日本政府の先の見通しのない対応の責任は重大です。

■ 領土問題は現実に生じている
 
 日中両国は、これまで、1978年の「日中平和友好条約」締結の際の鄧小平氏の「尖閣論争の棚上げ」「解決は次の世代の智恵に託す」という方針に従って、決定的な対立を回避してきました。2004年の中国人活動家「上陸」で逮捕後すぐに「国外」退去処分にした当時の小泉首相も、この方針を優先させたものと言えます。

 ところが今回、日本政府は何ら展望もない中でこれを一方的に破棄しました。現に中国・台湾・日本間で領土問題が発生しているにもかかわらず、「領土問題は存在しない」とすることは、「中国側の主張は無視する」「問題解決のために対話する必要はない」と宣言するに等しいものです。政府は領土問題が生じていることを認め、対話と交渉によって解決するという態度を表明するべきです。

■ 日本の領有を根本から問い直す

 中国の強硬姿勢の背景には、この海域の石油・天然ガスの発見をきっかけにした中国の資源ナショナリズムや覇権主義的な態度があることは明らかです。

 一方、日本の領有権の設定は日清戦争中の1895年であり、朝鮮半島と台湾への侵略、領土拡張の戦争の一環として行なわれました。

 「歴史的に日本の領土」という主張に対しては、これを否定する歴史資料や論文も公表されています。そもそも、日本政府が領有権を正当化する「無主地先占の原則」(所有者のいない島については最初に占有した者の支配権が認められる)は、帝国主義列強による領土獲得と植民地支配の論理であり、アイヌなど世界の先住民の土地を強奪した法理です。共産党を含む全ての国政政党が当然のように日本の領有権を主張するのは、このような近代日本についての歴史認識の致命的な欠如を表わしています。

■ 「領土主義」を超えて共同の「保全」を

 そもそも国境線は近代の歴史においては極めて恣意的に引かれたものであり、国家同士の利害も衝突します。しかし、私たち「みどり」の依拠する「現地主義」「市民主権」の原則から考えれば、当事者である沖縄、中国、そして台湾の漁民が国籍にかかわらず安心して漁を営むことができる条件を整えることこそが優先されるべきだと考えます。

 天児慧氏(早稲田大学)は、紛争の発生している領土領海地域に限定した「脱国家主権」、「共同主権」による解決を主張し、そのために、「当該地域をめぐる諸問題を解決するための専門委員会を設置する」ことを提案しています。加々美光行氏(愛知大学)も、「南極条約」のような領土主権を凍結する国際条約の締結を提案しています。私たちは、こうした考えを基本的に支持します。

 同時に、日中両国における脱炭素社会の構築も不可欠です。領土問題が発生している要因ともなっている尖閣諸島の石油・ガス資源については、共同で「開発」するのではなく、将来世代のために東シナ海の美しい生態系を「保全」し、あえて開発しないことが重要だということを提案します。このような賢明な姿勢こそ、両国の対立と地球を「クールダウン」させ、両国の国益にもつながるものと考えます。

 国益をかざしたパワー対決や被害者意識に基づくナショナリズムの発露に希望はありません。今、私たちには、「日中両国の次世代」としての智恵が求められています。
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