岩波書店『世界』編集部員の経験を持つ若手思想家の金光翔さん(現岩波書店社員・裁判中)がご自身の経験に即して澤藤統一郎弁護士が前回東京知事選候補者(現候補予定者)の宇都宮健児氏及び宇都宮選対、人にやさしい東京をつくる会に「宣戦布告」した「宇都宮健児君、立候補はおやめなさい。」(「澤藤統一郎の憲法日記」ブログ)という連載批判記事のうち岩波書店、岡本厚岩波書店社長(人にやさしい東京をつくる会運営委員)、熊谷伸一郎岩波書店社員(同会事務局長)に関わる批判の部分を中心的に取り上げて澤藤弁護士の同記事の見解について首都圏労働組合という特設ブログに1月15日付けでご自身の「私見」を述べています。
 
岩波書店(岡本厚社長)に「公職選挙法違反」の疑いありとの澤藤統一郎氏の告発(金光翔 2014/01/15)
 
金光翔さんの同記事は長文で、かつ、そのうち1は澤藤弁護士側の批判、それに対する人にやさしい東京をつくる会側の反批判(同会3弁護士による「法的見解」)を整理してまとめている引用文によって構成されているものですから、ここでは金光翔さんの私見によって構成されている2と3の部分のみをご紹介させていただくことにします。
 
金光翔さんもまた、私には当然のことと思えますが、澤藤統一郎弁護士の論に軍配をあげています。
 
この金光翔さんの「私見」で特に注目すべきは、金さんが岩波書店の『世界』編集部員として勤務していたご自身の経験から澤藤弁護士からその法律違反を指摘されている熊谷宇都宮選対事務局長の岩波書店からの合法的な「有給休暇」の取得の問題に関してその取得の「ありえない」ことを間接的に証明されていることです。その上で金さんは岩波に「澤藤氏の主張に対する極めて有力な反証とな」り、かつ、「5分もあればアクセスと印刷は終わるはずの」ウェブ上に記録のある「勤務管理データの記録等」の情報を開示せよと進言しています。そして、岩波は「なぜそれをしないのだろうか」と疑問を投げかけてもいます。
 
以下、金光翔さんの「岩波書店(岡本厚社長)に「公職選挙法違反」の疑いありとの澤藤統一郎氏の告発」(2、3)。
 
2.
 
上記の記述をもとに、以下、若干の私見を述べることとする。
 
まず、上で引用したように、「人にやさしい東京をつくる会」は、「澤藤氏は事実と証拠に基づかない私憤に基づく憶測から事務局長らの名誉を毀損する主張を繰り返している」と主張している。しかし、澤藤氏が、熊谷が「世界」編集部員と事務局長を同時にこなすことの可能性について疑問を持つこと自体は自然なことである。

私の1年足らずの経験から言えば、「世界」編集部は深夜残業がほぼ恒常化しているほどの激務の職場であり(会社は、この期間の私への時間外労働分の支払いを、他の社員と異なり、拒否している)、長時間労働が慢性化している職場である。昨年、岩波書店労働組合「世界」編集部支部からの要請を受け、岩波書店労働組合が会社と長い間交渉し、「世界」編集部での校了作業日の深夜業務は、通常の深夜残業への割増額よりも多い割増賃金が支払われることになったが、これは「世界」編集部での仕事が相変わらず激務であることを示唆している。「つくる会」は、「世界」編集部の熊谷は
有給休暇と「休暇を取得しない日」での「勤務」で対応したと主張しているが、この主張は、上記の事情から考えれば、かなりの日数の有給休暇が使われていることを前提としないと成り立たないと思われる。
 
私は岩波書店が「つくる会」と同じ認識であるならば(そして同じ認識であると思われるが)、なぜ澤藤氏の疑問に対してまともに答えようとしないのか、という強い疑問を持っている。なぜならば、もし本当に「つくる会」の主張どおりならば、澤藤氏への疑問への反論はそれほど難しくないと思われるからである。
 
岩波書店の全社員の出勤・退勤・外出などの勤務管理は、タイムカードに基づいて行なわれており、記録漏れがあった場合でも、管理者(上司)がチェックして該当者に改めて申請させるなどして、不備がないように管理されている。この勤務管理の記録は、各人がウェブ上でログインして確認することができ(上司を含めた管理者も確認可能)、有給休暇の記録も含めて、過去の勤務の状態を一目で確認することができる。この勤務管理については、もちろん裁量制(「フレックス制」)の職務に対しても行なわれている。そもそもこの勤務管理の導入自体が、勤務実態の把握により長時間労働の問題を解決する、という点を大きな理由(建前)として行なわれたものである。
 
岩波書店が運動員買収を行なっており、公職選挙法221条1項1号に違反しているとの澤藤氏の批判は、岩波書店にとって捨てておけない性格のもののはずである。また、「つくる会」は、澤藤氏の批判が熊谷の名誉を毀損していると主張している。岩波書店は、会社および社員の名誉を保護・回復する義務がある。「つくる会」の主張が真実であることを前提とすれば、熊谷の勤務管理データの記録等は澤藤氏の主張に対する極めて有力な反証となるのであるから、岩波書店は率先して澤藤氏に情報を開示し、会社および社員に対する嫌疑を晴らすべきである。5分もあればアクセスと印刷は終わるはずである。なぜそれをしないのだろうか。
 
また、「つくる会」の主張から、もう一つの重要な論点が発生している。
 
「つくる会」は、「熊谷事務局長は、従前より都政問題についての市民活動にも参加してきた経歴を持ち、属する会社から業務命令として派遣されたものではなく、選対からの度重ねての要請により、自らの判断で事務局長の任務を引き受けたものである」と主張している。ところで「選対」に関して、澤藤氏は、「岡本厚岩波書店現社長も、選対メンバーのひとりである。熊谷伸一郎事務局長に便宜が図られたのであろうと考えている」と述べている。「つくる会」は、熊谷が入社3年目ではなく入社5年目であると澤藤氏の主張を訂正しておきながら、岡本社長(2012年時点では取締役。2013年5月31日、社長就任)が選対メンバーの一人である(であった)との主張に関しては沈黙している。岡本社長が選対メンバーの一人である(であった)と見なしてもよいと思われる。
 
そうすると、「つくる会」の説明に従えば、2012年時点で取締役であった岡本社長は、役員であるにもかかわらず、「選対」として、社員(しかも元の直属の部下)に対して、有給休暇を取得して、また長時間労働が問題となっている職場であるにもかかわらず私的な時間を使って、自分が支持している政治運動を行なうよう命令した、ということになるのではないか。しかも、「選対からの度重ねての要請により」との「つくる会」の説明に基づけば、熊谷が引き受けることを渋っている(迷っている)にもかかわらず、岡本社長は事務局長を引き受けるよう「度重ねての要請」を行ない、ついに受け入れさせたということになるのではないか。そうだとすれば、これは前代未聞の事態である。
 
「つくる会」の説明を読んだ読者は、岩波書店は、役員が社員に対して、有給休暇を使わせて、自己の信じる政治運動を行なわせることが容認されている会社である、という認識を持ちかねないのである。このような「つくる会」の説明は、岩波書店の名誉を大きく傷つけるものとなりかねないので、岡本社長はこの件に関して、事実関係を公的に説明すべきである。
 
常識的に考えれば、役員が、有給休暇を使って会社を休んで政治運動をやれ、などと社員に対して言うことはありえないことである。澤藤氏が、岡本社長が熊谷に便宜を図ったのだろうと推測したのも当然である。長年「世界」編集長であり、熊谷の上司であった岡本社長が、「清宮さん(「世界」編集長)には僕が話しておく。有給休暇は使わなくていいし、勤務時間と重なってもいいことにする」とでも言わない限り、普通の社員ならば、引き受けられないだろう。もちろんこの場合には、澤藤氏が言うように違法となると思われる。
 
3.
 
上記の諸点に関して、当事者でもある岡本社長は、事態が岩波書店および社員の名誉を傷付ける性格のものである以上、公的に説明を行なうべきである。
 
また、澤藤氏の記述に従えば、岡本社長は現在でも宇都宮氏の選対メンバーの一員であるようである。取締役でありながら特定の選挙候補者の選対を務めていた、という事実自体が大きな問題であるが、社長でありながら特定の選挙候補者の選対を務めるということが、株式会社の社長として、しかも言論機関の企業として、あってはならないことは言うまでもない。前回記事で、岡本社長が「岩波書店社長」名義で、保坂展人・世田谷区長の政治資金パーティーの呼びかけ人に名を連ねていることについて指摘した。
 
私はそこで「岩波書店社長」としてその種の政治活動を行なうことが、株式会社岩波書店の持つイメージがその種の政治活動に利用されることを意味するのであって、会社の私物化となりかねないと述べた。岡本社長は、社長はその種の政治活動を行なうべきでない、という認識を全く持っていないようであるから、澤藤氏の記述から、現在でも岡本社長は宇都宮氏の選対メンバーの一員なのではないか、との強い疑いを持たざるを得ないのである。この件に関しても、岡本社長の公的な説明を求める。
 
岩波書店の小松代和夫総務部長が、公然と嘘をついていたことは既に指摘したとおりであるが(「岩波書店による、嘘と隠蔽に基づいた嫌がらせ・差別行為」参照)、縁故採用が問題化した際、岩波書店は、実態と完全に矛盾した弁明を行なっており(「メディア報道における岩波書店の弁明への疑問と批判」「声明:岩波書店の縁故採用に改めて抗議する」 参照)、また、違反行為に対する労働基準監督署による行政指導の際にも、本来提出すべき労働時間管理記録の存在を隠蔽した過去がある(「岩波書店、労働時間管理記録を労基署に対して隠蔽」参照)。老舗旅館や老舗企業、有名百貨店の腐敗と事故が話題になったが、それと同様の企業体質を持っているのではないかと私は考えている。
 
今回も、法律違反を犯したという事態を回避するために、何らかの嘘・隠蔽を行なっているのではないか、との疑いが読者には生じるかもしれない。このような疑いを読者に対して持たせないためにも、岡本社長および岩波書店は上記の諸点に関して、積極的に情報を開示し、公的な説明を行なうべきである。
 
東本コメント:
 
すでに昨日も重要な情報としてお知らせしたことですが、宇都宮選対を構成する「憲法会議」は澤藤統一郎弁護士に対して「言論封殺」(批判の自由の封殺)といってよい依頼原稿の撤回という手段を弄してきました。
 
しかし、「言うまでもないことだが、言論の自由は民主々義の基礎だ。特に留意すべきは、あらゆる集団・組織において具体的に問題になるのは、一般的抽象的「言論の自由」ではなく、「組織内の権威・権力・指導部に対する批判の自由」ということなのだ。民主々義を標榜するあらゆる集団の指導部は、自らに対する批判の言論に対して格別に寛容でなくてはならない。これを封殺しようなどとは、もってのほかだ。(略)批判の自由のない組織に民主々義はない」(「宇都宮健児君、立候補はおやめなさいーその26」 2014年1月15日)。
 
そのような組織から出馬しようとしている候補者を推して「民主主義」を実現することはできるのか。実現できるはずもありません。なぜこのような簡明な道理がわかっていただけないのでしょう。もう一度言います。このような候補者を私たちは断じて推すべきではありません。それは禍根になる以外のなにものでもありません。
 
私たちは最後の最後まで革新・リベラル 勢力の候補者 としてふさわしい候補の確立と擁立に努力するべきです。たとえその努力が水泡に帰したとしても。まだ告示日までには時間があります。
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