以下は、名文です。久しぶりに名文に出会いました。「街の弁護士日記」さんの怒りは私の怒りでもあります。「街の弁護士日記」さんの怒りはインテリジェンスに溢れています。私はなんとはなしに太宰治の短編「トカトントン」を思い出しました。ウソの話(パロディ)だからということではありません。「トカトントンだけは、ウソでない」(太宰治「トカトントン」)、その「トカトントン」の音が私にも聞こえてきたからです(ただし、私の聞いた「トカトントン」の音は軍靴の鳴る音のようでした。だとすれば、太宰の「トカトントン」と似ていなくもない。太宰の「トカトントン」は日本が戦争で負けた直後(焼け跡・闇市の時代)の「虚無」(ニヒル)の音でしたから)。

太宰治 トカトントン  
NHK BS 太宰治短編小説集 「トカトントン」朗読/野田秀樹
 
以下、転載させていただきます。
 
秘密保護法案の国会提出を歓迎する
(街の弁護士日記 2013年10月26日)
 
朝刊を見れば恰も日本が戦争への道を歩み始めたかのように憂う声がしきりだ。
 
われわれにとっては日本が戦前化しようがしまいが大した問題ではない。また日本がアメリカの代わりにアフリカや中東の武力行使を肩代わりし、日本の若者たちがアメリカのために命を捧げようがどうでもよい。早い話、日本が滅んだとしてもわれわれには問題ではない。
 
われわれのスピード感ある投資を邪魔立てする民主主義が秘密保護法のおかげで滅びることを大いに歓迎する。
 
われわれはあまりにも長い時間、民主主義と呼ばれる非効率なシステムのため投資を最適化し、スピード感ある展開をすることを妨げられてきた。われわれはあまりにも長い時間われわれの合理的な期待利益を損ねられ不当に虐げられてきた。
 
社会主義というバカげたシステムが死を迎えたとき、われわれは、これで世界が最適化され、われわれの合理的な期待利益を邪魔立てするものがなくなったことを喜んだ。
 
しかし今度は民主主義というシステムがわれわれを邪魔立てすることがわかった。
われわれは長い時間を民主主義との闘いに費やさなければならなかった。われわれは国民と呼ばれる者たちが正しい選択をするよう国民を教化し続けた。800名もの国会議員を養っていることの損害や、さして代わり映えしないのに二つも議院を抱えることの非効率をわれわれは訴え続けてきた。
 
原発事故直後という不利な情勢にもかかわらず日本国民は最適な選択をし、国会をわれわれにとって最適化した。
秘密保護法によって民主主義というバカげたシステムの終わりが近づいたことを何より歓迎する。
われわれの合理的期待利益を邪魔することは許さない。それが社会主義であろうが、民主主義であろうが、国民国家であろうがわれわれの行く手を阻むものは断じて許さない。
効率と最適化こそが世界を支配しなければならない。


上記の岩月浩二弁護士のパロディをふつうの順接の論に再々生すると以下のような論になるでしょうか。
 
特定秘密保護法を廃案にー独立教唆罪の恐ろしさ
(澤藤統一郎の憲法日記 2013年10月26日)
 
10月18日付で、共産党が「国民の知る権利を奪う『秘密保護法案』に断固反対する―『海外で戦争する国』づくりを許さない」という声明を発表している。さすがに、その全体象をしっかりと把握し、問題点を明らかにしている。なによりも、よく練られた文章で読みやすい。この声明が、当面法案反対運動全体の論拠としてスタンダードなものとなるだろう。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-10-19/2013101903_01_0.html
 
翌19日付の赤旗一面トップが、「『秘密保護法案』阻止へ共同を 共産党、断固反対の声明」と報じている。併せて、志位委員長と小池副委員長が揃って会見しており、「わが党は、立場の違いを超えて民主主義破壊の悪法に反対する一点で力を合わせ、たたかいぬく」と決意を表明。「秘密保護法案の恐ろしさをわかりやすく国民に伝え、急いで、たたかいの火の手を全国であげていきたい」と述べたという。
 
ところで、この声明の中に、次の一節がある。この悪法によって、国民の行動が犯罪として処罰される危険を指摘したもの。
 「法案は、『特定秘密』を漏らした者だけでなく、ジャーナリストの取材活動や一般市民による情報公開要求など『特定秘密』にアクセスしようとする行為まで処罰対象としています。さらには『共謀、教唆、煽動(せんどう)』も処罰するとしており、処罰の対象は、市民のあらゆる行為におよび、家族・友人などにもひろがる危険があります。」
 
委員長記者会見でも、次のとおり述べられている。
 「たとえば、『日米密約の内容を明かせ』『TPP(環太平洋連携協定)の秘密交渉の内容を明かせ』『原発資料を明らかにしろ』と集会や街頭演説で訴えた場合も『教唆、煽動(せんどう)』を行ったとして、処罰の対象とされる危険がある」
 
この点は、けっして虚偽でも誇張でもない。これこそ、どこに埋め込まれているか分からない地雷である。この地雷に近づくことを任務としているのが、ジャーナリスト。平和運動や労働運動に携わる者、市民運動の活動家にとっても危険極まりない。もちろん、一般市民もいつどこで、この地雷を踏むことになるのか分からない。なにしろ、どこに地雷が仕掛けられているかが秘密なのだから。この地雷がどこにどれだけあるかが分からないことが、情報提供の萎縮効果を生む。そして、国民の知る権利を侵害する。民主々義がやせ細ることになる。
 
行政の担当者に接触して、「日米密約の内容を明かせ」「TPP(環太平洋連携協定)の秘密交渉の内容を明かせ」「原発資料を明らかにしろ」と要求することは、ジャーナリストにおける取材の基本活動である。しかし、権力の側では、できるだけ不都合な情報は、国民に知られたくない。これを封じ込めることができれば、国民の批判をかわして政権運営にこの上なく便利と考える。そのために、取材活動自体を犯罪と構成できれば、こんなに素晴らしいことはない。取材活動自体を犯罪とするには、いくつかの方法が考えられる。
 
一つは取材活動それ自体を新たな犯罪として構成する手法。これはさすがに、あからさまに全ての取材活動を犯罪にはしにくい。「違法な手段による取材活動を禁止する」という手法をとらざるを得ない。そうしておいて、「違法な手段」の範囲をうんと広げる工夫に悪知恵をはたらかすことになる。そして、もうひとつが、教唆犯の活用だ。こちらは「違法な手段による」という限定を付ける必要がない。だから、こちらの方が遙かに広く、ジャーナリストや市民に余計な行動をせぬよう網をかぶせることが可能となる。
 
特定秘密を保有する公務員が秘密を漏らすことが犯罪とされる。最高刑は懲役10年・罰金1000万円という重罪。この犯罪を犯すよう唆すことが教唆だ。教唆とは「人に特定の犯罪を実行する決意を生じさせるものであれば足り、その態様は多様である。命令、指揮、嘱託、依頼、甘言、誘導・・などによることが可能である。教唆行為は明示的でなく黙示的・暗示的なものでもあり得る」と説かれる。
 
「記者が公務員から情報を引き出すこと」が、典型的な特定秘密漏洩の教唆にあたる。もっとも、普通の犯罪の場合、教唆犯(記者)は本犯(公務員)の犯罪が成立して初めて処罰対象となる。「取材攻勢をかけたが、公務員側は頑として口を割らなかった」場合には、犯罪にはならないというのが大原則。ところが、この特定秘密保護法は普通の法律ではない。権力の欲するとおりに、「取材の働きかけをした」だけで、教唆犯が成立する仕組みとなっている。これを「独立教唆犯」という。おそらく、ジャーナリズムにとっても一般国民にとって、この法律のここが一番恐いところ。
 
独立教唆犯を拵えて、広く市民に網をかぶせようという権力の側からの発想は、この悪法の生みの親となった「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」が明言しているところ。2011年8月8日付の「秘密保全のための法制の在り方について」と題する報告書には、次のとおりに明記されている。
 
「(6) 独立教唆行為及び煽動行為
 取扱業務者(秘密を取り扱う公務員)等に対し、特別秘密を漏えいするよう働きかける行為(教唆)は、その漏えいの危険を著しく高める行為であって悪質性が高い。他の立法例も考慮すると、正犯者の実行行為を待つことなく、特別秘密の漏えいの独立教唆及び煽動を処罰対象とすることが適当である。また、特定取得行為(取材記者などの違法または著しく不当な手段による秘密取得行為)は漏えい行為と同様に秘密を漏えいさせる高い危険性を有することから、同行為の独立教唆及び煽動を処罰することが適当である。」
 
このような報告書を作成した「有識者」の名前は、よく記憶に留めておくべきであろう。縣公一郎(早稲田)、櫻井敬子(学習院)、長谷部恭男(東大)、藤原静雄(筑波)、安富潔(慶應)の諸氏である。
 
この報告書の提言が、法案に取り入れられて条文化され、「ジャーナリストの取材活動や一般市民による情報公開要求など『特定秘密』にアクセスしようとする行為まで処罰対象としています。」と危惧せざるを得ない事態となっている。
 
特定秘密取扱業務者(秘密を取り扱う公務員)等に対し、ジャーナリストや市民が秘密を漏えいするよう働きかける行為の処罰類型は二つある。
 
その一つが、「特定取得行為」、つまり、違法または著しく不当な手段による秘密取得行為を独立した犯罪としたもの。法案の条文は次のとおり。
 「23条1項 人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取若しくは損壊、施設への侵入、有線電気通信の傍受、不正アクセス行為その他の
 『特定秘密を保有する者の管理を害する行為により、特定秘密を取得』
した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。
 23条2項 前項の罪の未遂は、罰する」
 
もう一つの類型が、独立教唆である。
 「24条1項 第22条第1項又は前条第1項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、5年以下の懲役に処する。
 24条2項 第22条第2項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、3年以下の懲役に処する。
 
行為は、「共謀、教唆、煽動」と極めて広い。教唆は被教唆者が特定されている場合、不特定多数が相手だと煽動となる。
 「特定秘密の取扱いの業務に従事する者」が正犯である場合が1項。
 「特定秘密の取扱いの業務に従事する者から当該特定秘密を知得した者」を正犯とする場合が2項と分けている。
 
これが、独立教唆罪としての構成要件。判例・通説とされている刑法理論(共犯従属性説)からは、本来正犯が犯罪として成立しなければ、共犯は不可罰なのだが、このように、教唆行為を独立した構成要件とすれば、「教唆として十分な行為が行なわれた以上は、被教唆者が犯罪の実行を決意したか否か、あるいは現実に犯罪を実行したか否かとは無関係に、独立した犯罪として成立」する。未遂処罰規定がなくても、本犯の行為をまたずに行為が完結するから処罰可能となる。独立教唆犯は、教唆の未遂を独立罪としたものということもできる。
 
だから、「日米密約の内容を明かせ」「TPP(環太平洋連携協定)の秘密交渉の内容を明かせ」「原発資料を明らかにしろ」と集会や街頭演説で訴えた場合も、「教唆、煽動(せんどう)」を行ったとして、処罰の対象とされる危険があることになる。秘密を保有するものがその教唆・煽動行為によって、秘密を漏示することなく、教唆・煽動が未遂に終わっても犯罪が成立する。ここが、独立教唆犯の恐いところ。
 
余りに、処罰範囲が広がるから、法は「配慮」規定を置いた。
 21条1項 この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない。
 21条2項 出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする。
 
1項は、格別の実効性はなく、この法律の危険性を自白するものに過ぎない。2項ははたらく余地があればお飾りでないが、さていったいはたらく余地があるだろうか。
 
「日米密約の内容を明かせ」「TPP(環太平洋連携協定)の秘密交渉の内容を明かせ」「原発資料を明らかにしろ」と集会や街頭演説で訴えた場合、あるいは情報公開請求をしたところ墨塗りの資料しか公開されないので原本を見せてくれと要求した場合、明らかに24条違反となる。仮に、21条2項の正当業務との推定規定がはたらいたとしても、ジャーナリストだけが処罰を免れる。集会や街頭演説で訴えた市民運動の活動家は完全にアウトだ。
 
もちろん、ジャーナリストなら安全ということではない。また、23条の特定秘密取得罪(最高刑懲役10年)については、正当業務行為推定規定がはたらく余地がない。
 
特定秘密保護法はことほどさように、国民生活に危険な存在であり、民主々義への敵対物でもある。
10月18日付で、共産党が「国民の知る権利を奪う『秘密保護法案』に断固反対する―『海外で戦争する国』づくりを許さない」という声明を発表している。さすがに、その全体象をしっかりと把握し、問題点を明らかにしている。なによりも、よく練られた文章で読みやすい。この声明が、当面法案反対運動全体の論拠としてスタンダードなものとなるだろう。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-10-19/2013101903_01_0.html
 
翌19日付の赤旗一面トップが、「『秘密保護法案』阻止へ共同を 共産党、断固反対の声明」と報じている。併せて、志位委員長と小池副委員長が揃って会見しており、「わが党は、立場の違いを超えて民主主義破壊の悪法に反対する一点で力を合わせ、たたかいぬく」と決意を表明。「秘密保護法案の恐ろしさをわかりやすく国民に伝え、急いで、たたかいの火の手を全国であげていきたい」と述べたという。
 
ところで、この声明の中に、次の一節がある。この悪法によって、国民の行動が犯罪として処罰される危険を指摘したもの。
 「法案は、『特定秘密』を漏らした者だけでなく、ジャーナリストの取材活動や一般市民による情報公開要求など『特定秘密』にアクセスしようとする行為まで処罰対象としています。さらには『共謀、教唆、煽動(せんどう)』も処罰するとしており、処罰の対象は、市民のあらゆる行為におよび、家族・友人などにもひろがる危険があります。」
 
委員長記者会見でも、次のとおり述べられている。
 「たとえば、『日米密約の内容を明かせ』『TPP(環太平洋連携協定)の秘密交渉の内容を明かせ』『原発資料を明らかにしろ』と集会や街頭演説で訴えた場合も『教唆、煽動(せんどう)』を行ったとして、処罰の対象とされる危険がある」
 
この点は、けっして虚偽でも誇張でもない。これこそ、どこに埋め込まれているか分からない地雷である。この地雷に近づくことを任務としているのが、ジャーナリスト。平和運動や労働運動に携わる者、市民運動の活動家にとっても危険極まりない。もちろん、一般市民もいつどこで、この地雷を踏むことになるのか分からない。なにしろ、どこに地雷が仕掛けられているかが秘密なのだから。この地雷がどこにどれだけあるかが分からないことが、情報提供の萎縮効果を生む。そして、国民の知る権利を侵害する。民主々義がやせ細ることになる。
 
行政の担当者に接触して、「日米密約の内容を明かせ」「TPP(環太平洋連携協定)の秘密交渉の内容を明かせ」「原発資料を明らかにしろ」と要求することは、ジャーナリストにおける取材の基本活動である。しかし、権力の側では、できるだけ不都合な情報は、国民に知られたくない。これを封じ込めることができれば、国民の批判をかわして政権運営にこの上なく便利と考える。そのために、取材活動自体を犯罪と構成できれば、こんなに素晴らしいことはない。取材活動自体を犯罪とするには、いくつかの方法が考えられる。
 
一つは取材活動それ自体を新たな犯罪として構成する手法。これはさすがに、あからさまに全ての取材活動を犯罪にはしにくい。「違法な手段による取材活動を禁止する」という手法をとらざるを得ない。そうしておいて、「違法な手段」の範囲をうんと広げる工夫に悪知恵をはたらかすことになる。そして、もうひとつが、教唆犯の活用だ。こちらは「違法な手段による」という限定を付ける必要がない。だから、こちらの方が遙かに広く、ジャーナリストや市民に余計な行動をせぬよう網をかぶせることが可能となる。
 
特定秘密を保有する公務員が秘密を漏らすことが犯罪とされる。最高刑は懲役10年・罰金1000万円という重罪。この犯罪を犯すよう唆すことが教唆だ。教唆とは「人に特定の犯罪を実行する決意を生じさせるものであれば足り、その態様は多様である。命令、指揮、嘱託、依頼、甘言、誘導・・などによることが可能である。教唆行為は明示的でなく黙示的・暗示的なものでもあり得る」と説かれる。
 
「記者が公務員から情報を引き出すこと」が、典型的な特定秘密漏洩の教唆にあたる。もっとも、普通の犯罪の場合、教唆犯(記者)は本犯(公務員)の犯罪が成立して初めて処罰対象となる。「取材攻勢をかけたが、公務員側は頑として口を割らなかった」場合には、犯罪にはならないというのが大原則。ところが、この特定秘密保護法は普通の法律ではない。権力の欲するとおりに、「取材の働きかけをした」だけで、教唆犯が成立する仕組みとなっている。これを「独立教唆犯」という。おそらく、ジャーナリズムにとっても一般国民にとって、この法律のここが一番恐いところ。
 
独立教唆犯を拵えて、広く市民に網をかぶせようという権力の側からの発想は、この悪法の生みの親となった「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」が明言しているところ。2011年8月8日付の「秘密保全のための法制の在り方について」と題する報告書には、次のとおりに明記されている。
 
「(6) 独立教唆行為及び煽動行為
 取扱業務者(秘密を取り扱う公務員)等に対し、特別秘密を漏えいするよう働きかける行為(教唆)は、その漏えいの危険を著しく高める行為であって悪質性が高い。他の立法例も考慮すると、正犯者の実行行為を待つことなく、特別秘密の漏えいの独立教唆及び煽動を処罰対象とすることが適当である。また、特定取得行為(取材記者などの違法または著しく不当な手段による秘密取得行為)は漏えい行為と同様に秘密を漏えいさせる高い危険性を有することから、同行為の独立教唆及び煽動を処罰することが適当である。」
 
このような報告書を作成した「有識者」の名前は、よく記憶に留めておくべきであろう。縣公一郎(早稲田)、櫻井敬子(学習院)、長谷部恭男(東大)、藤原静雄(筑波)、安富潔(慶應)の諸氏である。
 
この報告書の提言が、法案に取り入れられて条文化され、「ジャーナリストの取材活動や一般市民による情報公開要求など『特定秘密』にアクセスしようとする行為まで処罰対象としています。」と危惧せざるを得ない事態となっている。
 
特定秘密取扱業務者(秘密を取り扱う公務員)等に対し、ジャーナリストや市民が秘密を漏えいするよう働きかける行為の処罰類型は二つある。
 
その一つが、「特定取得行為」、つまり、違法または著しく不当な手段による秘密取得行為を独立した犯罪としたもの。法案の条文は次のとおり。
 「23条1項 人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取若しくは損壊、施設への侵入、有線電気通信の傍受、不正アクセス行為その他の
 『特定秘密を保有する者の管理を害する行為により、特定秘密を取得』
した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。
 23条2項 前項の罪の未遂は、罰する」
 
もう一つの類型が、独立教唆である。
 「24条1項 第22条第1項又は前条第1項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、5年以下の懲役に処する。
 24条2項 第22条第2項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、3年以下の懲役に処する。
 
行為は、「共謀、教唆、煽動」と極めて広い。教唆は被教唆者が特定されている場合、不特定多数が相手だと煽動となる。
 「特定秘密の取扱いの業務に従事する者」が正犯である場合が1項。
 「特定秘密の取扱いの業務に従事する者から当該特定秘密を知得した者」を正犯とする場合が2項と分けている。
 
これが、独立教唆罪としての構成要件。判例・通説とされている刑法理論(共犯従属性説)からは、本来正犯が犯罪として成立しなければ、共犯は不可罰なのだが、このように、教唆行為を独立した構成要件とすれば、「教唆として十分な行為が行なわれた以上は、被教唆者が犯罪の実行を決意したか否か、あるいは現実に犯罪を実行したか否かとは無関係に、独立した犯罪として成立」する。未遂処罰規定がなくても、本犯の行為をまたずに行為が完結するから処罰可能となる。独立教唆犯は、教唆の未遂を独立罪としたものということもできる。
 
だから、「日米密約の内容を明かせ」「TPP(環太平洋連携協定)の秘密交渉の内容を明かせ」「原発資料を明らかにしろ」と集会や街頭演説で訴えた場合も、「教唆、煽動(せんどう)」を行ったとして、処罰の対象とされる危険があることになる。秘密を保有するものがその教唆・煽動行為によって、秘密を漏示することなく、教唆・煽動が未遂に終わっても犯罪が成立する。ここが、独立教唆犯の恐いところ。
 
余りに、処罰範囲が広がるから、法は「配慮」規定を置いた。
 21条1項 この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない。
 21条2項 出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする。
 
1項は、格別の実効性はなく、この法律の危険性を自白するものに過ぎない。2項ははたらく余地があればお飾りでないが、さていったいはたらく余地があるだろうか。
 
「日米密約の内容を明かせ」「TPP(環太平洋連携協定)の秘密交渉の内容を明かせ」「原発資料を明らかにしろ」と集会や街頭演説で訴えた場合、あるいは情報公開請求をしたところ墨塗りの資料しか公開されないので原本を見せてくれと要求した場合、明らかに24条違反となる。仮に、21条2項の正当業務との推定規定がはたらいたとしても、ジャーナリストだけが処罰を免れる。集会や街頭演説で訴えた市民運動の活動家は完全にアウトだ。
 
もちろん、ジャーナリストなら安全ということではない。また、23条の特定秘密取得罪(最高刑懲役10年)については、正当業務行為推定規定がはたらく余地がない。
 
特定秘密保護法はことほどさように、国民生活に危険な存在であり、民主々義への敵対物でもある。

関連記事
Secret

TrackBackURL
→http://mizukith.blog91.fc2.com/tb.php/694-780d4bd4