小泉元首相は本日の16日、千葉県木更津市であった講演会において改めて「脱原発」の必要性を強調したそうです(毎日新聞 2013年10月16日19時35分)。
 
私はこれまで小泉元首相の「脱原発」発言について以下のような疑問を提起し、また発信してきました。
 
小泉純一郎の「脱原発」発言と藤原紀香の例の「秘密保全法」反対発言を検証できない段階だけれども検証してみる ――「著名な人」と「一般市民」の「影響力」の違いの問題について(弊ブログ 2013.10.04 )
小泉純一郎の「脱原発」発言をいまの段階で検証してみる(弊ブログ 2013.10.09)
吉井英勝さん(前共産党衆院議員)と山口泉さん(作家)の小泉純一郎「脱原発」発言批判(弊ブログ 2013.10.13)
「大衆蔑視」ということについて ――前エントリの山口泉氏(作家)の<なぜ(この国の?)大衆は、最低限の反骨心・批判精神・独立不羈の志も持ち合わせないのだろう>という発言の引用に関して(弊ブログ 2013.10.13)
 
その私の疑問の提起の後、東京新聞が10月5日付けで「小泉元首相の原発ゼロ発言 野党の反応は?」という特報部記事を掲載していることを知りました。10日遅れの昨日のことです。
 
小泉元首相の原発ゼロ発言 野党の反応は?
(東京新聞「こちら特報部:ニュースの追跡」 2013年10月5日)
http://mokuou.blogspot.jp/2013/10/blog-post_7012.html
http://blogs.yahoo.co.jp/yuuta24mikiko/34368384.html?from=relatedCat
 
小泉純一郎元首相が脚光を浴びている。原発ゼロを目指す発言を繰り広げているためだ。原発推進の自民党の中での「突然変異」。脱原発派の間では素直に歓迎するべきか、それとも警戒した方がよいのか、と評価は割れている。取り急ぎ、野党各党の皆さんに感想を聞いてみた。(榊原崇仁)
 
歓迎と困惑と
 
「今こそ原発をゼロにして循環型社会を目指すべきだ。原発ゼロの方針を自民が打ち出せば一挙に国民の機運が盛り上がる」。10月1日に名古屋市内での講演でも、小泉氏はそう語った。8月中旬にフィンランドの核廃棄物最終処分場を見学し、確信したという。
 
この間の元首相の発言に対し、原発推進を掲げる政府自民党は困惑気味だ。同党の石破茂幹事長は2日、「小泉氏の発言で党の政策が変わることはない」と述べた。
 
その多くが脱原発を掲げる野党各党は、どう受け止めているのか。
 
共産「赤旗登場して」
 
「小泉氏の発言には全面賛成だ。党の機関紙『しんぶん赤旗』に登場してほしい」。こう歓迎したのは共産党の市田忠義書記長。「原発のコストほど高いものはない」といった小泉氏の言葉に触れ、「わが党の訴えと完全に一致する」。さらに「自民の政治家でここまで突っ込んで発言したのは初めて。私自身、驚いたほど」と続けた。
 
「食事に誘って脱原発を語り合いたい」と話すのは社民党の福島瑞穂前党首。「原発推進の中にいた人なので言いたいことは山ほどあるが、今は仲間。自民の中でも仲間を増やしてほしい」
 
みんなの党の渡辺喜美代表は一足早く9月末に小泉氏と会食していた。当人から脱原発の思いを聞いており、「危機認識を共有できる偉大な政治家が現れた。大きな勇気をいただいた」。
 
福島氏は「彼は民意がどこにあるのかをつかむのが巧み。『民意は脱原発』と確信したから原発ゼロに傾いた」と言う。
 
生活の党の小沢一郎代表は2日の会見で「小泉氏は政治の現場を離れ、公平な高みから眺めて脱原発に至ったのだろう」と述べた。同党の鈴木克昌代表代行兼幹事長は、衆参の両選挙が終わった後に小泉氏の発言が目立ち始めたことについて「自民が原発の方針を変えないのにしびれを切らしたのでは」とみる。
 
ただ、一連の小泉発言は野党の存在感を一段と希薄にすることが狙いでは、といぶかる見方もある。福島氏は「そんなケチなことは言わない。脱原発を実現するうえで、そこを目指す人を否定できない」と言い切る。
 
電力労組絡み 歯切れ悪い民主
 
一方、脱原発について曖昧な政党は、小泉発言に対して反応が鈍い。
 
日本維新の会国会議員団の松野頼久幹事長は問い合わせに「特にコメントはない」と回答。
 
民主党は、菅直人元首相がブログで「小泉元総理の原発ゼロ積極発言は大歓迎」とつづっているものの、再稼働に前向きな電力総連を支援団体に抱えているだけに他の幹部らは歯切れが悪い。
 
海江田万里代表は問い合わせに対し、秘書が「多忙でコメントできない」と返答。細野豪志前幹事長は「代表や今の幹事長は定例会見している。そちらで聞いてほしい」と明言を避けた。

小泉元首相の「脱原発」発言に対する「原発推進」政策を進めてきた政権与党の自民党や元政権与党の民主党の反応は論外のこととして、その他の野党の思いのほかの小泉発言歓迎モード一色には正直驚かされました。上記の東京新聞の記事によれば、野党の最左翼の共産党の小泉発言評価は次のようなものでした。
 
「小泉氏の発言には全面賛成だ。党の機関紙『しんぶん赤旗』に登場してほしい」。「『原発のコストほど高いものはない』といった小泉氏の言葉に触れ、『わが党の訴えと完全に一致する』」(市田書記長)。
 
*こちらの「原発再稼働ノーと1500人 北海道岩内」(しんぶん赤旗 2013年10月6日)ではこの5日に北海道岩内町で開かれた脱原発集会の模様を記事にしていますが、同集会での「小泉元首相が『原発はやめよう』と言い始めました。大胆に運動を広げましょう」というジャーナリストの鎌田慧氏の発言を肯定的な文脈の中で紹介しています。この記事からも共産党が小泉「脱原発」発言を肯定的に評価していることが類推できます。
 
正直、「ブルータス、お前もか」という思いです。しかし、この共産党の小泉発言評価には少なくない疑義があります。私の疑義ではありません。ほかでもない同党の党員やまたは同党の支持者と思われる人たちからの疑義です。
 
そのおひとり目。上記の東京新聞記事を自身のブログで紹介している人は「北海道は素敵です!! 」ブログの主宰者。同氏は、同ブログに掲載されている「吉良よし子さんからで~す!」(2013/10/16)や「井上哲士さんより」(2013/10/15)などの記事を見る限り、かなり熱心な共産党員、もしくは同党支持者だと判断できます。その人すらも小泉の「脱原発」発言について次のように言っています。
 
「私は誰が何と言おうと信じない。この男がこの日本を滅茶苦茶にした。その謝罪なしで何を言うかだ!息子を総理にするまでこのパホーマンスは続く!!」「どうして日本人は鷹揚に人を許すのでしょうか?? 今の危うい日本の土台を救ったのはこの小泉張本人なのです。よくも平気でこの様な事を言えるものです。破廉恥極まりません。私ならガムテープを持っていき即あの調子だけで生きてきた口に張り付けたい思いです。『黙れ!隠居してのだから静かに自己反省してろ』と言いたい。この親父は死ぬまでスタンドプレーだ!」。
 
おふたり目。先の便でご紹介した「小泉『似非』脱原発に対する免疫を!!」(2013-10-02)という記事で
 
「去る9月14日の江東区・墨田区における脱原発デモで、鎌田慧氏が小泉元首相による『脱原発』発言を受けて『原発推進派の中にも原発に対する迷いが生まれている。敵の中に味方を』とポジティブに受け止めましたが、小泉氏に取り込まれるリベラル派はご覧の通り、今後も増加の見通しであります」
 
という警鐘を鳴らしていた「vanacoralの日記」の主宰者も、「吉良よし子さん最後の選挙戦に密着!!」(2013-07-20)などの記事を見る限り、やはり相当に熱心な共産党員、もしくは同党支持者だと判断できます。その人も小泉の「脱原発」発言を「「似非』脱原発」と断じています。
 
このように上記の共産党(市田書記長)の小泉発言評価は、少なくない(例証は2例でしかありませんが)同党党員、もしくは同党支持者たちの小泉評価の認識とは根底的に異なっているのです。共産党は同党党員、もしくは同党支持者たちとの認識のギャップについて真摯に答える義務を負っているというべきでしょう。
 
また、上記とは少し観点を異にしますが、天木直人氏の次のような小泉「脱原発」発言批判もあります。
 
私は、天木氏は「みんなの党」を支持(投票)したり、また、極右の稲田朋美氏(自民党)に熱をあげたり、はたまた田母神元航空幕僚長と「自立する国家へ!」なる共著を出版するなど彼の思想と行動には批判的ですが、それはそれとして、下記の天木氏の小泉評価は大筋において評価できると思っています(おそらく天木氏は、小泉批判ということで対イラク政策の評価をめぐって駐レバノン日本国特命全権大使の職を解任されたときの原点に立ち返ることができたのでしょう。その論は、彼独自の主情性がときに見え隠れはしますが(たとえば「正しい政策の決定は権力者の内部からそれを主張する者が出て来てはじめて国民的支持を得た政策になる」という論理矛盾を含む論点)、大筋においてその小泉評価は当たっていると私は思います)。
 
小泉元首相の再登場を歓迎する。「飛んで火に入る夏の虫」だ
(天木直人のブログ 2013年10月05日)
 
小泉元首相の脱原発発言が驚くべき好感を持って受け止められている。小沢一郎が賛同し、渡辺喜美が歓迎し、ついに共産党の市田忠義書記局長までもが、「わが党の訴えと完全に一致する」、「しんぶん赤旗に登場してほしい」などと言い出す始末だ(10月5日東京新聞)
 
小沢一郎や渡辺喜美はともかく、私は左翼や市民活動家が小泉元首相の発言を喜ぶのは間違いだと思っている。小泉元首相が左翼政党や市民活動家と手を組むことはあり得ない。いいとこ取りをされて終わりだ。
 
それでも政治とは無関係の私にとっては、もし小泉元首相の発言で国民の間に脱原発が進み、それを見た安倍首相が国民に迎合する形で脱原発に政策転換するなら、それはいいことだと思っている。
 
私が繰り返し主張しているように、「正しい政策の決定は権力者の内部からそれを主張する者が出て来てはじめて国民的支持を得た政策になる」、という好例だ。
 
しかし残念ながら小泉元首相はこれ以上前面に出てくることはないだろう。
 
なぜならば小泉元首相は日本の将来のためを考えてそんな事を言い出したわけではないからだ。
 
ましてやこの歳になって日本や日本国民のために自ら汗をかいて新たな政策を実現するというような面倒な事を彼がやるはずはない。言ってみるだけなのだ。
 
もし私の予想がはずれ、小泉元首相が今後も脱原発の発言を積極的に続け、政治やマスコミに再登場するようなことにでもなれば、その時こそ私はそれを歓迎し、再び小泉元首相に迫るつもりだ。
 
脱原発を唱えるのもいいが、その前にしてもらいたい事がある。日本を米国に売り渡してここまで日本を破壊してくれた責任をどう釈明するのかと。
 
イラク攻撃を支持したことは正しかったのか、と。
 
頓挫したままの拉致問題を放置することが許されるのか、と。
 
小泉元首相の日本と国民に残した負の遺産の大きさは、脱原発を急に唱えたぐらいで帳消しになるものではない。
 
「飛んで日に入る夏の虫だ」
 
私は小泉元首相が再登場する日が来る時を望んでいる。
 
しかし彼は出て来ないだろう。いや出て来れない・・・
 
共産党のいう「一点共闘」の論理もわからなくはありませんが(上記のような共産党の小泉発言評価はおそらくそういう論理から導き出されているものでしょう)、小泉発言評価に関してその「一点共闘」の論理の行き着く先は統一戦線の論理をはき違えたところから来る非常に危ういものがあるように私には見えます。どのように統一戦線の論理をはき違えているのか。この問題について、共産党には真摯な再考をお願いしたいものです。その再考に資する論理は少なくない党員諸兄、諸姉が所有しているはずです(そのことは上記のようなまっとうな論理を所有する党員、もしくは支持者がいることからも明らかなように思います)。

共産党チラシ 
共産党チラシ2 


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