スペイン・マドリード在住のフリー・ジャーナリストの童子丸開氏(「陰謀論者」としても有名)が「米国とその同盟軍の軍艦がシリア沖に:海軍の配備は8月21日の化学兵器攻撃の『以前に』決められた」というカナダ、オタワ大学経済学教授ミシェル・チョスドフスキー氏の記事を翻訳紹介しています。
 
一方、その童子丸開氏翻訳の同記事への反論記事を兵庫県姫路市在住の泥憲和さんが書かれています。私は泥さんの反論の方に説得力を感じるものですが、順序としてはじめに童子丸開氏翻訳の「米国とその同盟軍の軍艦がシリア沖に:海軍の配備は8月21日の化学兵器攻撃の『以前に』決められた」(ちきゅう座 2013年9月6日)という記事をご紹介しておきます。

上記記事における童子丸開氏のミシェル・チョスドフスキー氏の記事の紹介文は以下のようなものです。
 
いま地球では、実質的な「第3次世界大戦」が進行中です。(略)
 
 イスラエルが米海軍とともにシリア沖の東地中海でミサイル発射訓練を行った。真打登場!いままで黒い幕の後ろに控えていた主人公がようやくその素顔を海面から持ち上げ白日の下にさらし始めたようである。ダマスカスへの道はテヘランに続く。戦場の惨劇が全中東からユーラシア全土を目指して広がろうとしている。悪魔どもの「偽の旗」が降ろされることはあるまい。
 (参照:イスラエルのシリア攻撃
 ※ シリアで使用された「化学兵器(サリン)」はトルコから運びこまれたものだった。この記事にはイラン国営PressTVが証言するトルコの元市職員のインタビュー・ビデオが付けられている。
 
 以下に掲げるのはオタワ大学経済学教授ミシェル・チョスドフスキーによる次の論文の和訳(暫定訳)である。
US and Allied Warships off the Syrian Coastline: Naval Deployment Was Decided “Before” the August 21 Chemical Weapons Attack
 
著者はこの文章の中で、オバマが時間を稼ぎながら着々と準備を進めている軍事侵攻が8月21日の「化学兵器攻撃」の以前に決定されていたものであること、それを知って迎え撃つ姿勢を強めるロシアとシリア、戦争の中東地域への全面的な拡大の危険性を訴える。
 
「偽の旗作戦」は《でっち上げ+プロパガンダ+軍事行動》の3点セットで現れる。チョスドフスキーはその中で特にプロパガンダの重要性を取り上げ、『戦争プロパガンダ、つまりメディアの嘘は、戦争行為の最強の装備を形作る』、『政策決定を行う上部階層内部での意思一致の確立にとって最も重要なものである』と語る。我々は過去の実例からいくらでも学ぶことができる。米国‐NATO‐イスラエルの戦争の前には、間違いなく新聞紙面とTVスクリーンの上に戦争合理化の扇情的な大宣伝が開始される。戦争は常に「正義と民主主義の名において」行われ、戦争が「平和と民主主義の道具」であるという確信の下に、あらゆる残虐行為が正当化されるのだ。
 
そしてあの悪魔どもに組織されたプロパガンダ機関は、いわゆるマスメディアだけではなく、『「進歩派」を自称するオールタナティヴ・メディア部門』を含む。チョスドフスキーはそれが『NATOの「保護責任(R2P)」の委任統治に正当性を提供して』きたことを指摘し『その反戦運動の擬態を剥ぎ取る』ことを呼びかける。その戦争プロパガンダを無力化させることが、軍靴を止めさせ我々の生きる世界を動乱と破壊と監視社会化から守るための、最大の効力を持つ方法なのだ。
(参照:ねつ造されたシリアの宗派間戦争
(参照:シリアの化学兵器物語り:人道的大惨事を後押しした米=NATOの計画とは?
 
そしてその様子が1898年の米西戦争から本質的に変わっていないことに注目すべきである。100年以上も前に米国民の「正義、自由、民主主義」嗜好を刺激しながら戦争熱を煽るイエローペーパー(当時の「オールタナティヴ・メディア」)の果たした仕事は、より強力な形でその後継者に引き継がれ、実際上、大手商業メディアをすら従わせている。それはもはや「公的権力の一部」と言うことができる。キューバとフィリピンでスペインからの独立運動をたきつけ支援すると同時に、そのプロパガンダで戦争意思を打ち固めさせ、極めて疑惑の多いメイン号事件を引き金にして軍事行動を起こし、旧スペイン領をことごとく事実上の植民地とした米帝国の戦争政策は、21世紀にその完成形を見せているようだ。しかしその基本パターンは変わらない。「オールタナティヴ」を含む御用メディアこそが最強の「大量破壊兵器」といえる。常に《大嘘の大名行列》の後に軍靴が続き、戦争詐欺と政治詐欺がそれに伴うのだ。(2013年9月5日 バルセロナにて 童子丸開)
 
*引用者注:童子丸氏のミシェル・チョスドフスキー氏の記事の翻訳の本文は上記サイトをご参照ください。
 
一方、上記のチョスドフスキー氏の記事と童子丸氏のチョスドフスキー氏紹介記事に対して泥憲和さんは次のように反論しています。
 
わずかでもシリア情勢に関心があり、多少の記憶力があるなら、こんな分析に同意できるはずがありません。
 
松元さん(引用者注:童子丸氏の翻訳記事のメーリングリストへの紹介者)も思い出してください、ちょっとこれまでの経過を振り返ってみましょう。
 
シリア政府が化学兵器を使用したのではないかと最初に疑われたのは、今年8月ではなく、昨年12月でした。
 
地方都市ハムザで使われたらしいといわれましたが、反政府側のプロパガンダである可能性も疑われていました。
 
今年3月、北部の要衝アレッポの近く、カーン・アル・アサルで再び化学兵器が使用されました。
 
これに対して米国が軍事介入を示唆したので、ロシアが「化学兵器使用はデマ」だと言って米国を牽制しました。
 
しかし軍事介入の準備は着々とすすめられており、米国防総省がシリアへの軍事介入に向けた態勢整備を強化していることをCNNにリークしたのは4月でした。
 
この頃にはすでに海軍の艦艇配備計画は完成していたと思われます。
 
こうした経緯があるのだから、8月21日より以前に艦隊が動いていたのはあまりに当然です。
 
こんなことを陰謀めいた話に仕立てる人がいるとは思いもしませんでした。
 
またそれを簡単に信じる人がいるとも思いませんでした。
 
びっくりしたなあというのが、私の感想です。
 
こういった裏話などデッチ上げなくても、シリアに対する軍事攻撃に反対することは充分に可能です。
 
私たちは変なプロパガンダやおかしな情報に惑わされないリテラシーを身につけたいものだと思います。
 
さて、ここからは読まなくてもいいです。
 
どうしてカーン・アル・アサルで化学兵器が使用されたのか、その理由です。
 
裏情報や裏読みではなく、報道されたことをおっかけていれば、この程度のことはわかるという話です。
 
ここはアレッポと西部港湾地帯を結ぶ幹線道路上にある町です。
 
カーン・アル・アサルを奪われると、アレッポへの補給が出来なくなります。
 
アレッポはアレッポ国際空港とメナグ空軍基地のある町で、ここを奪われると、首都に迫る反政府軍への増援が容易になるので、政府軍にとっては死活的な場所です。
 
ここに反政府軍が攻勢をかけていたのです。
 
12月には自由シリア軍がアレッポ郊外のメナグ空軍基地を占拠しています。
 
政府軍は劣勢でした。
 
形勢を逆転させるためにシリア軍が化学兵器を使用したのではないかという推測は、充分な説得力を持っています。
 
事実、反政府軍の攻勢は一時的に力を失います。
 
現在の状況ですが、自由シリア軍がアレッポ周辺で活動を「復活させている」と声明を出した7月末、カーン・アル・アサルを政府軍から奪い、アレッポに続く補給道路を遮断し、アレッポは孤立しました。
 
8月に入ると、自由シリア軍はアレッポ国際空港付近の政府軍基地へ砲撃を始めていました。
 
このような状況下で、8月21日に、36カ所にも及ぶ化学兵器攻撃が実施されたのです。
 
政府軍の仕業であるという状況証拠はたっぷりあります。
 
その意味では、米国の分析に異論はありません。
 
しかし、軍事介入は事態を更に複雑にするだけだと思います。
 
自国民に対して残虐な化学攻撃をするシリア政府にはもう統治資格がありませんが、それを決めるのは米国ではなくて国連総会だと思います。
 
私は泥憲和さんの論の方に明らかに理があると思っています。 

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