FC2ブログ
金光翔さん(韓国国籍の在日朝鮮人三世批評家・前『世界』編集部員)が「メモ28 」(「私にも話させて」ブログ)という記事で公益財団法人中東調査会発行の「中東かわら版」(第173号。2013年8月29日発行)に掲載されている高岡豊研究員の「シリア:化学兵器使用問題と軍事攻撃の可能性」というシリア情勢に関する分析記事を大変評価しています。
 
「シリアへの軍事介入をめぐる議論で残念に思っていたのは、(略)日本語で読める中東研究者・ジャーナリストのまともそうな発言が見当たらなかったことである。内藤正典の、この人研究者として大丈夫なのか、というツイッターの連投や、アジアプレスなどを見て、この種の類のものしかないのかと思っていたのである。しかし、(略)高岡豊研究員による「シリア:化学兵器使用問題と軍事攻撃の可能性」は、大変説得力の強いものであった」、
http://watashinim.exblog.jp/19574549/
 
と。
 
その高岡豊氏の論を金光翔さんのブログから少し孫引きしてみます。
 
「シリアの反体制派は、2011 年 3 月にいわゆる「アラブの春」の反政府抗議行動での扇動・動員の手法を模倣する形で反体制活動を開始して以来、一貫してアサド政権による「弾圧・虐殺」を大々的に宣伝し、それによって国際的な介入を招き寄せることによって政権打倒を図る戦術を採用してきたと思われる。このような戦術が採用された理由としては、チュニジアやエジプトなどの事例と異なり、反体制派が短期間に政権を圧倒するような動員を実現できなかったこと、宗派主義的な印象論によって「敵方」のレッテルを貼られたシリア軍や治安機関がアサド政権から本格的に離反する可能性が低かったことが挙げられる。」
 
「また、戦闘状況など、シリア危機の現場での推移を観察すると、アサド政権がこのタイミングで化学兵器を使用する合理性がまったくといっていいほど存在しない事実も指摘せざるを得ない。シリアでの戦況は、2013 年 6 月ごろからアサド政権の優位が確定的となり、米国のオバマ大統領が「状況悪化」に懸念を表明するほどになっていた。反体制派武装闘争が後退を余儀なくされている原因は、一般に信じられているような「国際的支援の不足」や「レバノンのヒズブッラーの本格的参戦」ではない。より現実的な原因は、2013年1月15 日付『ハヤート』紙が報じたように、反体制派戦闘員が行う略奪や強姦が一般のシリア人に避難を余儀なくさせ、人心を失ったこと、戦闘の主役となったイスラーム過激派が、実はアル=カーイダの一部に過ぎないことを自ら表明するとともに、反体制派武装集団同士、あるいはクルド人などのアサド政権以外の当事者との戦闘に明け暮れるようになったことであろう。」
http://www.meij.or.jp/members/kawaraban/20130829144610000000.pdf
 
高岡豊氏の論そのものは上記をご参照していただきたいのですが、私が金光翔さんの同記事で注目したのは金さんによって否定的に紹介されているアジアプレスの記事の方でした。金さんは直接アジアプレスの記事を紹介するのではなく、「Super Games Work Shop Entertainment」ブログの「シリア侵略戦争推進・応援メディアのアジアプレスは今すぐ事業停止して解散せよ」と題されたブログ記事を紹介しています。

金さんによって紹介されている同ブログ記事は、一般には「民主派」のジャーナリストと評価されているし、思われてもいるアジアプレスの代表の野中章弘氏と石丸次郎氏(たとえば野中章弘氏は「開かれたNHK経営委員会をめざす会」の代表世話人のひとりです)を根こそぎ(こういうのを「根こぎ(根こそぎ)」というのでしょうが)的に批判しています。
 
次のような具合です。
 
野中章弘と石丸次郎が取り仕切るアジアプレスがまたやりやがった。アメリカによる軍事介入が今にも始まりそうなこの時期に、こんなタイトルの記事を自社ホームページのトップにデカデカと掲載している。
 
http://www.asiapress.org/apn/archives/2013/08/29105106.php
<シリア>「政府軍が化学兵器使用」と、地元目撃者は証言

アジアプレス 
アジアプレス(2013年8月30日)
 
一応記事に目を通してみると地元民の話として「この2年で10万人が命を失ったのに、これまでアメリカや国際社会は、シリア国内の人びとに何の助けもしなかった。とにかく戦闘が終結してほしい。空爆で戦闘が拡大するなら、市民が苦しむだけだ」という声を取り上げて、一応アメリカの空爆に懸念を示す(?)ようなスタンスをちょっとだけ見せている。だがこれは記事のタイトルからして「政府軍が化学兵器使用」であり、それをこの時期に自社サイトの一番目立つ所にデカデカと載せている所を見れば、アジアプレスが何を読者に一番強く印象付けたがっているかは一目瞭然だろう。
 
たしかにアジアプレスの「<シリア>「政府軍が化学兵器使用」と、地元目撃者は証言」という記事は酷い。これがジャーナリズムといえるのか、というしろものです。こうしたたぐいの記事が「リベラル」の名のもとに出回っているわが国の報道シーンのおぞましさと愚かしさを思わないわけにはいきません。
 
さらに同記事ではこれも一般に「民主派」のジャーナリストと評価されている玉本英子氏(アジアプレス記者)や山本美香氏(故人。前アジアプレス記者)、さらには辛淑玉氏や上杉隆氏もやり玉にあげています。私はこの記事ではじめて知ったのですが、その中でも上杉隆氏は毎年8月15日に靖国神社への参拝を続けているといいます(私も上杉隆氏については何度か批判する記事を書いているのですが、この件については知りませんでした)。この記事の筆者が上杉氏を「極右タカ派ジャーナリスト」と弾劾するのも宜なるかなといわなければならないでしょう(いまだに上杉氏を「民主」的ジャーナリストと評価している人が少なくないように見えるのにはほんとうに辟易させられます)。
 
以上、シリア報道に見られるわが国メディアの視野狭窄的(あるいは権力迎合的)記事が書かれる背景の一側面を見てみました。

関連記事
Secret

TrackBackURL
→http://mizukith.blog91.fc2.com/tb.php/656-7955269e