松江市教委の「はだしのゲン」閲覧制限措置問題は、昨日の26日、同市教委が同閲覧制限措置を「撤回」する決定をしたことによって一応決着を見ましたが、その「撤回」宣言は、市民の2万通を超える同措置の撤回を求める署名簿の提出をはじめとする押し寄せる世論の抗議の波に抗しきれずにやむをえず表明した体のものであって、同市教委が今回の「閲覧制限」措置を心から反省した結果によるものでないことは、同市教委の清水伸夫教育長が教育委員会会議のあとに語ったという次のような談話からも明らかです。
 
同清水教育長は教育委員会会議のあと次のように語っています。「手続きには不備があったが、当時の担当者が十分に考えて行った措置であったので、間違っていないと思う」(「『ゲン』閲覧制限要請 松江市教委が撤回へ」NHK 2013年8月26日 17時2分放送)、と。この松江市教委の清水教育長の言には反省の跡は微塵も見られません。また、その反省の皆無のところから「今後の取り扱いについては「各学校の自主性を尊重する」(同左)と言われても、その言もまったく信用することはできません。
 
現に同市教委は、はじめに閲覧制限措置を行った当初においても、「最終的に判断するのは各学校の校長である」と説明したうえで「閉架」の措置の要請を市内全ての小中学校に行っ」ていますが、「一部の学校から市教育委員会に『閲覧を制限していない学校もあり、現場が混乱しているので対応を統一してほしい』」という要望があった」際に各小中学校に対して再度要請を繰り返しています(NHKWEB特集「『ゲン』閲覧制限の背景は」 2013年8月22日)。が、「各学校の自主性を尊重する」という主張がほんとうであるならば2度も要請を繰り返す必要はないはずです。「各学校の自主性を尊重」すればそれでよいはずのことですから。「各学校の自主性を尊重する」という松江市教委の言はまったく信用できない、といわざるをえないでしょう。世論が冷えたとき、いつなんどき松江市教委が本心を曝け出して「撤回」決定を反故にしようとするか知れたものではありません。油断大敵です。
 
同様の思想的退嬰は東京都教委にも見られます。下記に根津公子さん(「君が代」不起立処分取消し訴訟原告)がご報告される8月22日に開かれた都教育委員会の定例会では「教育委員会ではどうしてモノを言わないのですか」とう当然の疑問を提起した傍聴人が退場させられて、なにもモノを言わない教育委員は泰然として席に座したままです。なんのお咎めもなし。このような不合理と不公正というほかない不正義が東京都教委の定例会では日常茶飯事に繰り広げられているのです。 

私たちはこの点についても東京都教委の不正義を糺していく必要があるように思います。実教出版図書排除の問題も「本を焼く」(ハインリッヒ・ハイネ 戯曲『アルマンゾル』 1820年)行為にほかなりません。「本を焼く者は、やがて人間をも焼くようになる」というのがハイネの警鐘でした。
 
同都教委には脚本家の内館牧子氏などのほか新教育委員として乙武洋匡氏(作家、タレント)や山口香氏(全日本柔道連盟女子強化委員)もあらたに着任しました。その中でも女子柔道強化選手による暴力告発問題では告発した選手の側に立って活躍した山口香氏は「週刊金曜日」(2008年8月1日号)で「発言しちゃいけないのかなと思っている方はたくさんいると思います。モノを言わない流れが、そのことが戦争になってしまったり、独裁者をつくったりします。そう考えると、発言しないことは罪なんです」と堂々たる正論を述べている人です。が、その人も実教出版の図書排除問題(「本を焼く」行為)ではなんら発言しようとしないのです。所詮、日の丸・君が代を強制する違法な「10・23通達」の発令者の石原慎太郎の後継、猪瀬都知事から任命される教育委員とはそういうものだと思ってはいるものの、あまりに言うこととすることが違いすぎる。この点については山口氏も厳しく批判されなければならないでしょう。

山口香 
猪瀬東京都知事から辞令を交付される山口香氏(2013年4月3日)
 
以下、根津公子さんの都教委傍聴記。
 
山口香委員、教育委員会ではどうしてモノを言わないのですか?
~根津公子の都教委傍聴記
(レイバーネット 2013/08/24)
*標題はレイバーネット編集部がつけたもの。
 
根津公子です。
 
8月22日に開かれた都教育委員会定例会を傍聴しての報告です。
 
■またもや、意見表明をしない教育委員たち
それを指摘した私には「退場」命令■
 
高校教科書採択が議題にあがっていたからであろう、傍聴希望者は定員の20人を上回る25人。「場所はあるのだから、全員傍聴させてほしい」と何人もが要求したが、都教委の担当者はそれを無視し、25枚の番号カードから20枚を選んで張り出し、そこから外れた5人には資料を渡さず、必然的に傍聴から外した。
 
定例会の冒頭、木村教育委員長は、「前回、前々回、議事を妨害する行為が行われ、私から退場を命じた。今日もそういうことがあったら、退場を命じ、法的措置をとります」と言った。
 
議題の①は、「都立小中高一貫教育校基本構造検討委員会まとめについて」の中間報告。「理数を中心に、世界に伍して活躍できる人間を育成するため」に、6・3・3制ではなく4・4・4制の都立小中校一貫校を2017年に1校作る。入学と進学の際には選抜を実施し、進学の際には、他校からの募集もするのだという。
 
エリートをつくるために、激しい競争に勝ち残る子どもと落伍する子どもを作り続ける学校。考えただけでも背筋が寒くなる。東京新聞によると、これも、猪瀬都知事の提唱とのこと。
 
この報告については、各教育委員から疑問が多数出された。「理数の授業時間を多くするために、どこを削るのか」(内館教育委員)、「法令との関係で難しいのでは」(竹花教育委員)、「小学生の段階で理数系を選んでも、進路変更が出る可能性がある。そういう子どもへの配慮はあるのか」(山口教育委員)、「教員免許の問題は大丈夫なのか」(乙武教育委員)、「義務教育9年との関係は説明が必要だろう」(木村教育委員長)。
 
こうした疑問には頷けたが、竹花委員の次のメリット発言には、唖然とした。「現状では小中学校は区市町村教委があるので都教委が直接手を出すことはできなかったが、都立小中高一貫校ならば、それができる」(趣旨)。以前の定例会で2回ほど、例えば、都教委主催の会議への出席状況が悪い、都教委の思うように動かない区市町村教委がある、という発言を竹花教育委員がしたのを私は思い出していた。私たちから見れば、都教委の言いなりの区市町村教委なのに、竹花委員から見れば、都教委への忠誠度が足りないということか。どこまで求めても、気が済まないのだろうか。
 
議題の②は、高校教科書採択について。実教出版「高校日本史A」「高校日本史B」の、国旗国歌に関する記述は、「都教委の方針と異なるものであり、都立高校で使用する教科書としては適切ではない」と都教委「見解」を出したことで、各学校が「選定」した日本史に、実教出版のそれはゼロ。これを採択するという。
 
この議題の中で、「見解」の撤回と謝罪を求める請願が、前回の定例会以降、101件も出されたことが報告された。全国から出されている。そして、その請願に対し、前回と同じように、撤回も謝罪もせずに、「都教委の考え方と異なるものであり、…教科書としては適切ではない」。だから、「『見解』を議決した」のだと居直るだけの回答をすると木村委員長。それに対し竹花委員、「この通り出してもらって結構」と言った。その言葉を受けて木村委員長、「ではいいですね」で議事終了とするつもりのようだった。
 
冗談じゃない! 私は、「委員の皆さん、意見を表明すべきでしょう。それが教育委員の仕事でしょう。意見を聞かせてください」「竹花委員は結構と発言したけれど、理由の説明がまだです」と叫んだ。しかし、一人として発言はしない。木村委員長は、「退場」「法的措置」を繰り返す。挙句、傍聴者の監視役の総務部職員によって私は退場させられた。
 
私は教育委員の人たちに、「見解」に反対しろと言っているのではない。教育委員は定例会で論議し、議決することを職務とするのであるから、その任を果たせと言っているのだ。黙っていては、任が果たせないと言っているのだ。司会進行役を兼ねる木村委員長の議事運営が間違っていると言っているのだ。
 
6月7日付「週刊金曜日」(946号)の、「抵抗人名録」は山口香さんを取り上げている。そこに、「週刊金曜日」2008年8月1日号に掲載されたという、山口さんの次のことばがあり、目を奪われた。「発言しちゃいけないのかなと思っている方はたくさんいると思います。モノを言わない流れが、そのことが戦争になってしまったり、独裁者をつくったりします。そう考えると、発言しないことは罪なんです。」と。まったく、その通りだ。
 
ならば、山口委員、教育委員会定例会では、どうしてモノを言わないのですか。それは罪ではないのですか。答えてほしい。この件で、山口さんにメールを出そう。4月に出した時のように、返事はなくても。
 
都教委及び教育委員たちの暴走を監視し、暴いていく必要性を、毎回の傍聴で痛感する。
  
退場させられて廊下にいると、会場から「こんな教育委員会はいらないよ」など、何人かの大きな声が聞こえてきた。その時の会場内の様子を一緒に傍聴していた友人が他のMLに流したので、それを借りて、以下に転載します。
 
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
 
「教科書採択の後、最後に竹花委員が『最近、教育委員会のあり方が問題にされており、教育委員会は決定機関ではなく、教育長の監視機関のようなものになろうとしている。しかし、教育委員は専門的知識もあり、中立の立場で仕事をやっているから、そうならないように中教審の方によく言ってもらいたい』というようなことを述べ、定例会は終了しました。そこで私は、大声で次のように抗議しました。『竹花さん、何が中立ですか。あなたたちのやっていることは全く中立ではない。自分たちに都合の悪いことは排除する。これでどこが中立なのだ。どこが公正なのだ。(全柔連の新監事・山口香氏も都教育委員として会議に参加していましたので)教育委員会の体質は全柔連と同じだ。いくら批判されても改善しようとしない。』他の傍聴者たちも様々に野次りました。すると、竹花委員は、よほど頭にきたのか、『名前を言え』と言ってきました。私は再度強く、『都教委は中立でも何でもない。あなたたちは恥知らずだ』と述べ、仲間と一緒に退場しました。」

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