以下は、豊島耕一さんのブログ『ペガサス・ブログ版』(2013年5月10日)記事「共産党執行部は敗走を『転進』と呼んだ旧軍部に似る」の転載です。豊島さんのブロフィールを見ると「もと佐賀大学理工学部教授」とありますから今年定年退職されたのでしょう。昨年までは現役の大学教員でした。
 
なお、豊島さんのフェイスブックでの共産党中央委員会総会(7中総)での志位報告の感想(指摘)も重要です。これも上記ブログ記事の下に転記しておきます。
 
私はこれまでのエントリにおいても、いまの政治危機の問題(保守・改憲勢力、保守大連立(独裁体制)勢力は衆院において3分の2の議席を優に超え、この夏の参院選挙しだいでは衆院、参院を含め国会勢力全体として3分の2超えをする(すなわち、憲法改正発議権(憲法96条)を持つ)可能性の強い戦後最大といってよい政治危機)を念頭において、その戦後最大といってよい政治危機を革新勢力としてどう乗り越えるのか、という観点から「護憲結集」の問題に力をいれて書いてきました注1。また、その問題意識に関連して、広原盛明さん(元京都府立大学学長)の共産党6中総決定批判と「護憲第3極=反ファッシズム統一戦線」形成の提起に関する論攷注2や五十嵐仁さん(法政大学教授)などの論攷注3も複数回にわたって紹介してきました。 

注1:「3月、4月の弊ブログ記事のまとめ」
注2:「広原盛明さんの共産党の6中総決定批判(期待するがゆえの批判)と「護憲第3極=反ファッシズム統一戦線」形成の提起」
注3:「機は熟しつつあります。ひとりの市民として改めて市民と政党の「『大左翼』の結集」あるいは「護憲結集」を「ト書き」を書くようにして呼びかけます」
 
豊島さんの下記の指摘はその私たちの問題意識に通じるご指摘だと思います。

平和ドームと鳩 
「護憲結集」実現の願いをこめて

共産党執行部は敗走を「転進」と呼んだ旧軍部に似る
(ペガサス・ブログ版 2013-05-10)

 
昨日の共産党中央委員会総会の志位報告(→ウェブ版)をネット視聴し,短いコメントをフェイスブックに書き込みましたが,すこしまとまった文章にしたいと思います.表題はどぎついと思われるかも知れませんが,切羽詰まった筆者の憂慮を表現するにはこれしかありません(強調は引用者。以下、同じ)
 
原発即時ゼロやTPP阻止,アベノミクス*批判など,志位報告が述べた政策の基本にはもちろん賛同し評価します.しかし改憲阻止の戦略・戦術については全く賛同できません.国政選挙のレベルでは,以下に述べるようにこれは無策に等しいからです.全会一致で承認されてしまったのですが,どうしてそうなのか,出席者のただの一人にも疑問は生じなかったのでしょうか?
 
選挙闘争に関してもっぱら前面に押し出されて強調されるのは比例区の5議席確保であって,政党間の共闘,協力については,沖縄県を除けば全国的には「条件存在せず」のひとことで片付けられてしまっています.統一戦線の対象に関しては,志位報告が文字化された赤旗の紙面やウェブの見出しでは「無党派と日本共産党との共同――日本を変える新しい統一戦線をつくりあげよう」**とあり,他党は眼中にないという姿勢です.しかも近接した見出しには「いま日本に政党と呼べる政党は一つしか存在しない」(引用符付き)とあるのですから,もう決定的です.「存在しない」ものとの共闘はあり得ませんから.
 
しかし,はたして共産党の「5議席確保」だけで十分に改憲阻止の可能性をつかめるのでしょうか.そんなことはあり得ないし,もし志位氏がそう信じているとしたら,全く現実感覚を失くしていると言わざるをえないでしょう.本当に真剣に改憲阻止を考えるなら,政党間の共闘を考えなければならないはずです.たとえば社民党について言えば,憲法九条擁護の点はもとより,TPPでも原発でもほぼ政策は一致していると思われますが,なぜ共闘,協力の「条件がない」のか,あるいはその条件を作ろうとする努力にも値しないのか,説明も議論も全くありません.
 
憲法問題が重要争点の一つとなる選挙であり,しかもその改悪の危険性が決定的な程のレベルにあることから,憲法と並んで戦後民主主義の重要な財産であった教育基本法(以下教基法と略)改悪の事例に学ぶことは重要です.この改悪は「郵政選挙」で大勝利した小泉自民党の内閣(第3次小泉内閣)によって国会に提出され,それを引き継いだ第1次安倍内閣のもとで2006年12月に成立してしまいました.共産党はこれを阻止するべく闘いました.その闘い方についてはさておくとして,ここで問題にしたいのはその「総括」です.
 
成立直後の,年が明けて2007年1月の中央委員会総会(3中総)報告では,敗因分析(総括)もなくいきなり「たたかいは,これからが大切になります」で始まり,改悪教基法の「具体化の一つひとつが,競争主義,序列主義の教育の矛盾を深刻にし,破たんせざるをえないでしょう」と続きます.さらに,「全党の確信にすることが大切」なこととして,「国民が発揮したエネルギーの大きさ」,「日本共産党の果たした役割」の二点を挙げ,どちらにもポジティブな評価を与えています.まるで闘いに勝利したかのような言葉ばかりが続くのです.この貴重な財産を失った,少なくとも重篤に変質させられたという敗北の悔しささえも読み取れません.
 
この志位報告発表の直後の当ブログ記事で,このような総括とも呼べない総括について,敗北を「『転進』と粉飾しているように見えてしまう.九条が改悪された後も,やはりこのような『前向きの』総括をするのだろうか?」と書きました.今回の志位報告でその悪い予感は一層強まります.「元気のよい」「明るい」言葉で埋め尽くし,現実を直視せずに自らを欺いて破滅の道に突き進んだ旧軍部と重なって見えてしまうのです.
 
去る4月29日に久留米市で共産党の市田書記局長の講演がありました.この町で二番目に大きなホール(約1,200名収容)がほぼ満杯になり,成功裏に終わったと言うべきですが,政党間の共闘問題では上記の志位報告と全く同じでした.直接の質疑応答もあるかも知れないとわずかに期待し,その機会にはたとえどのように「空気」に逆らおうともこの問題を正面から提起しようと思いましたが,やはり講演だけで終わってしまいました.質問用紙が配られていたので,それに書いて提出したところ,市田氏本人から2日後の消印で葉書が届きました.国会内外の共闘は重視し尽力するが,選挙共闘は「憲法だけでなく,安保,原発,TPP,消費税など,国政の基本問題での一致と共闘の意思がないと,野合になってしまいます」と書かれていました.そして7中総で詳しく解明します,と結ばれていました.「解明」より「提案」を,と言いたいところですが,しかし志位報告では,上記のように,なぜ共闘できないかの「解明」もなかったということです.
 
共産党は,数は少ないものの政策面で野党として不可欠の位置にあり,その役割と責任は重大です.したがって党員や支持者でなくても,この党の動向には関心をもってしかるべきだと思いますし,注文を付けることが大事だと思います.知識人の役割も強調したいと思います.九条が重大な危機に瀕している今こそ,効果的な,核心を突いた,「役に立つ」発言をする責任があると思います.「九条の会」の知識人は,選挙の問題,政党間共闘の問題に踏み込んで発言すべきです.これまで「九条の会」は選挙にはノータッチという姿勢だったようですが,それではダメです.もちろんどれかの党派に肩入れするというのではなく,共闘を強く呼びかけるべきだということです.政党間共闘なしには改憲阻止の可能性は非常に小さくなると思います.
 
「国政の基本問題での一致」の条件を満たす党派の勢力は,現時点では数では少ないかも知れません.しかし共闘は「希望」という力を,そしてそれによる非線形効果を生み出すのです.「1+1は3にも5にもなる」という言葉で表現されるそれです.急いでこの「希望」に火をつけなければなりません.

 * 正しくは“アベコベノミクス”
** アンダーラインは引用者

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志位報告をネット視聴したので,それへのコメントです.とりあえず評価のポジティブな側面はすべて省略し,問題点のみ述べます.
http://www.akahata.jp/live_ustream.html
 
志位:「衆院で多数を占めたのは重大だが,恐れる必要はない.」
→小泉登場直前も同様の言説があった.「恐るべき状況」というのがリアルな見方で,楽観論につながりかねない表現.
 
志位:「他党が皆そろって安倍になびく」
→他党の個別批判で社民党の党名は出てこなかったが,この言い方では社民党も含まれてしまう.新社会,緑も無視.

 統一戦線問題について,「政党の組み合わせではなく」として革新懇の運動について述べるだけで,選挙における政党間の共闘,協力については,沖縄県以外で全国的には「条件存在せず」のひとことで片付けてしまった.統一戦線の対象としては,個人のみ,あるいは団体でも政党以外のものしか考えない,という姿勢.
 
他党との比較では,(まともなのは)「日本共産党“だけ”」の言い方が強調され過ぎのきらい.
 
やはり,選挙における政党間の共闘,協力について議論らしい議論をしない,非常に困った態度は変わらない.たとえば社民党について言えば,TPPでも原発でもほぼ政策は一致していると思うが,なぜ「条件がない」のか,あるいはその条件を作ろうとする努力にも値しないのか,説明も議論もない.また,他者,つまり他党の良いところを認めるという寛容な態度こそが共産党自身への支持にもつながる,ということを理解して欲しい.
 
中継がされない午後の会議では,志位氏自身が推奨したように,出席の各地の代表者は「ホンネ」の議論をして欲しい.
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