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和光大学教授でジャーナリスト(元朝日新聞記者)の竹信三恵子さんがWEBRONZAに「AKB48丸刈り謝罪、ブラック企業論からの検証を」という論攷を発表されています。

先の記事で「ブラック企業」の問題に触れたついでに竹信三恵子さんのAKB48丸刈り謝罪に関連しての「ブラック企業」考もご紹介させていただこうと思います。

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AKB48丸刈り謝罪、ブラック企業論からの検証を
(竹信三恵子 WEBRONZA 2013/02/06)

AKB48の峰岸みなみさんの丸刈り謝罪に、AKBよ、お前もか、という思いにとらわれている。この事件についてはさまざまな疑問の声も上がっているが、特に気になるのは、今回の事件に、日本のブラック企業文化の影が色濃く感じられことだ。

「ブラック企業」は、社員に過剰な労働を強いたり無理なノルマを課したりして、うつなどの深刻な健康障害や、過労死を引き起こすとして問題化している。今回の丸刈り謝罪は、これらの企業を生む文化的土壌と、次の3点で共通している。

まず、働き手が、仕事のためとして、自傷行為にまで及んでいることだ。ブラック企業についての相談では、社員への罰として社長が社員の髪を切ったり、ノルマを達成できないなら死んでわびろとどなったりするなど、仕事の失敗を社員が体の損傷であがなうことを当然視する例がしばしば見受けられる。今回の丸刈り謝罪でも、「仕事の責任をとるために体を傷つけてもしかたない」という主張が映像を通じて大々的に流され、AKB側もこれを阻止しなかった。

しかも、そうした自傷行為が、「商品だからしかたない」と受け手から「評価」される異様な事態も生まれている。たとえば、朝日新聞2月2日付記事では、この事件にからんで、「事務所にとってアイドルは商品。ブランドコントロールは何よりも重要」として正当化する広報コンサルタントの談話が紹介されている。ここには、体を傷つけずに働ける職場環境を目指す安全衛生の思想や、「労働は商品ではない」という国際労働機関(ILO)の人権の基本はかけらも見えない。

次の共通点は、「組織が命令したわけではなく、当人が勝手に決めたこと」として、組織の責任が不問に付されていることだ。2月1日付朝日新聞朝刊「働く」の欄では、2006年、27歳で亡くなったシステムエンジニア、西垣和哉さんの事例(リンク引用は引用者。以下同じ)を取り上げている。この業界では、人件費節減の中、一人が休むと周囲の仕事が過重になってみなが連鎖的に倒れる「デスマーチ(死の行進)」が頻発し、西垣さんはこれを心配して休めず働き続けたという。熊沢誠・甲南大名誉教授は、このような日本企業の労務管理を「強制された自発性」と呼ぶ。過労死するような働き方を働き手が自発的に行うよう強制することだ。

AKBでは昨年、異性との交際が発覚したメンバーが九州に「左遷」されたとして話題になったが、こうしたみせしめ人事が横行する中で、丸刈りにでもならなければ追い出されるという「強制された自発性」が働いた可能性は否定できない。だが、そうした組織の無言の圧力は「責任感の強いメンバーの自己責任」の言説に、隠されてしまっている。

最後の共通点は、20歳にもなった女性に「恋愛禁止」を言い渡す子ども扱いや、そうした個人の私生活への強い介入の中身の妥当性は問われることないまま、「事前に約束したはず」として、絶対服従を求めていく組織のあり方だ。

ブラック企業では、寝袋を職場に持参させ、仕事が終わるまで返さないといった私生活への極端な介入・管理がしばしば起きている。そんな職場に疲れ果て、退職したいと言うと「正社員として無期雇用で働くと約束したはず」として、やめさせない例が聞かれる。契約の妥当性は問わず「約束したんだから」の一点張りで服従を強いて行く手法だ。「約束したはず」によって公序良俗にもとるような管理が横行するブラック企業の内部に通じる。

ブラック企業は、一部の特異な業界の現象ではない。働き手の暮らしより会社を優先し、「自発的な貢献」を強要する日本企業の労務管理の特質が、市場環境の過酷化や経営者・管理者の力不足の下で極端な形をとって噴き出したものだ。今回の丸刈り謝罪事件は、こうしたブラック企業文化が、エンターテイメント業界という職場で、いびつな花を咲かせたといえそうだ。これを単なるアイドル論としてはやしている限り、目的達成のためには人間の体を傷つけても(ときには死んでも)かまわないという体罰肯定文化と、そうした文化的土壌を背景にしたブラック企業的な働かせ方から脱却することは難しい。その意味で、今回の事件について、ブラック企業文化論からの再検証と論議を期待したい。

 注:「福祉のパラドックス」とは「本当に困っている人」だけを救済しようとする福祉は、「本当に困っている人」さえも救済できなくなるというパラドックスのことをいいます。


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