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私が「福島県双葉町井戸川克隆町長の不信任案全会一致で可決 双葉町議会」の報に接したのは同不信任案が可決された同日の12月20日のことでした。

双葉町長の不信任案可決 福島原発事故で埼玉避難中(朝日新聞 2012年12月20日)

双葉町の井戸川町長が硬骨漢の人であるらしいことはそれまでもたとえば以下のような情報で私は知っていました。

大臣退席に双葉町長が抗議のスピーチ(YouTube 2012/05/11)
原発がある全国の市町村長と担当大臣が顔を合わせる年に一度の総会で、枝野経産大臣や細野原発担当大臣は冒頭のあいさつだけで早々に退席してしまいました。これに反発した­福島県双葉町の井戸川町長は、大臣席側に背を向けて窮状を訴えました。抗議のスピーチ、ノーカットです。

その井戸川町長が町議会の全会一致で不信任案をつきつけられるとはどういうことか。この報を聞いたとき即座にそれこそ「不信」をもってこの事態に私は疑問を感じましたが、双葉町の議会の事情を私はよく知らず、肝心の「不信任」の内容についても報道以上の情報も私は持っていませんでしたので、今回の「町長不信任」という事態の本質を有意に判断することができず、不信を感じながらもこの問題についての発信を控えていました。

しかし、以下2つの情報を知るにいたって断じて井戸川町長を擁護しなければならないと思うに到りました

そのように思うに到った理由の第一は「フタバから遠く離れて」という映画を最近クランクアップしたばかりの映画監督の舩橋淳さんの次のような慷慨が目に触れたことです。

双葉町の町議会が、井戸川町長に辞任要求をする方針とのニュースを聞き、たいへん危惧しています。/辞任を要求する理由は、議会と情報の共有化に努めていないことや、中間貯蔵施設に関する福島県との会合に町長が欠席したことなどが挙げられています。/その背後にあるのは、賠償も進まず、出口の見えない避難生活で溜まりに溜まった町民のフラストレーションがあり、 全てが遅々として進まないのは町長の責任にあると、不満のはけ口として責任追及したくなる、破壊欲求があります。/はたして原発避難の現状が進まないのは、町長一人の責任にあるのでしょうか。/「元あった生活レベルをそのまま取り戻す」ことよりも、国と東電は賠償金をできるだけ値切ろうとするため、それが摩擦を生み、賠償は全く進んでいません。中間貯蔵施設に関しては、●原発事故の責任者を明らかにすること、●最終処分場をどうするつもりなのか明らかにすること、●避難民の生活再建へ向けてのプランを明らかにすること、という双葉郡側(井戸川町長は、双葉郡を統括する双葉町村会会長)の要求を無視し、国と県はとりあえず中間貯蔵施設を押しつけようとしています。国と県が一方的に囲い込みを進めるのに抗議するため、井戸川町長は欠席しているのですが、それは「話し合いの場につこうともしない」というマイナスイメージに見られています。当事者としては、何度か話し合いの場を持った後、こちらの要望を意図的に無視する権力への抵抗なのです。

その町長のマイナスイメージの尻馬に乗って、町議会では町長の後釜を狙う派閥もあります。/その派閥は今までことあるごとに町長不信任案提出し、町議会の停滞を招いてきた議員たち(太字は引用者。以下、同じ)です。/ 町議会議員には、双葉町復興に向けての町民の意見収集など、全国に散らばってしまった双葉町民と町政とのつなぎ役としてできることが沢山あります。しかし、この派閥は町長の責任追及にばかり終始し、議員としての仕事を全く疎かにしています。/ 町政が停滞しているのは、町議会にもその責任があるのです。/町政が滞ると、町民の不満もさらに増し、町議会へも町長へも批判的になってゆく・・・そんな悪循環に今陥りつつあります。(後略)

第二の理由は地元のあるメーリングリストで知った埼玉県に住む記録映画監督の堀切さとみさん()の次のような訴えに動かされたことです。そして、このブログ記事の主の目的はこの堀切さとみさんの声をみなさんにご紹介することにあります。

注:堀切さとみさんも最近『原発の町を追われて~避難民・双葉町の記録』という記録映画を完成させたばかりの映画監督です。

堀切です。

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十二月二十日、双葉町議会の最終日。井戸川克隆町長の不信任案が、可決成立した。議会を傍聴した私は、その瞬間を呆然とした思いで見つめていた。自分はただ傍聴してるだけで、何もできなかった痛恨の念があり、数日間、ただただ呆然としていたが、多くの人から「双葉町長を励ましたい」「議会に抗議したい」そして「双葉町はこんなことでは終わらない」という町民の声が寄せられた。「正しいことしてるから叩かれるんだよ」。井戸川町長にもその声は届いているだろうし、町長の思いに揺るぎはないことを思いつつ。

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双葉町議会のリポートをします。

前町長の息子である(こんなレッテルを貼りたくもないのだが)岩本久人議員が、不信任の理由を次のように述べた。

「町長は町民の声をきく努力をせず、町民との考え方にかい離があり、自分の考えに固執している。・・・それに比べて議会は、多くの町民の声をきいてきた」「復興のためには福島県の汚染から出る放射炎汚染土壌やがれきの処分問題は避けてはとおれない。それなのに十一月二十八日の中間貯蔵施設の現地調査を議論する会議に、町長だけが欠席し、福島県や町を落胆させた」

これを受けて、井戸川町長は「町民の不満が解消されないのは、事故責任者が我々を放置していたからに他ならない。健康問題、賠償問題など、町民に損をしてほしくないという思いで精いっぱい尽くしてきた。まだまだやるべき仕事が多くある中で、不信任は残念でならない。町民どおしがいがみあうことなく、一丸となって戦えるような仕組みづくりに、議会の皆さんは力を尽くしてほしい」と反論した。

この町長発言の後、岩本町議ないし他の議員からの意見があるのかと思ったが「質疑なし」「討論なし」で、本当にあっけなく採決になってしまった。私は議会の傍聴は初めてだったのだが、このやり取りをみていて、何か仕組まれたものを感じた。なぜ今、不信任なんだろう・・・。

井戸川町長を解任しようという動きは、これまでに二回あった。理由は「町長は独断的だ」「役場が県外にあることで、県内に避難している町民は不利益を被っている」というものだ。町長は、双葉町民は県内・県外避難者の対立を深刻化させないために苦渋の決断として、役場の福島県内移転や、旧騎西高校の弁当の有料化などを決めた。

にもかかわらず、三度目の不信任案が十二月二十日に出され、あっという間に八人の議員全員の賛成によって、可決成立してしまったのだ。誰かに頼まれたかのように、何の迷いもなく。3・11の直後。井戸川町長は、町民を内部被ばくのリスクから遠ざけるため、役場を福島県外に移し、埼玉県の旧騎西高校に多くの町民を避難させた。私はそんな双葉町に共感し、握手したい気持ちで取材を始めた。騎西高校は唯一残った避難所として、今も160人の町民が暮らしている。

一方、福島県内では佐藤雄平知事、福島県立医大を中心に事故の被害を最小化するためのキャンペーンが張られ、「除染をするから帰還せよ」という政策がとられ続けてきた。井戸川町長はこの安易な帰還政策に反対し「チェルノブイリ基準」を示しながら「福島県内の多くの場所は、今なお人が住んではいけない汚染状況にある」と訴え続けた。すべては、目に見えない放射能から、子どもたちの未来を奪ってはならないという思いからだ。

十月にはジュネーブで、放射能汚染による内部被ばくから町民を守ろうとしない国の無策ぶり、無責任さを訴えたが、本来これは福島県知事がやるべきことだ。しかし実際にはそうはならず、小さな町の首長がたった一人で告発しに行くしかないということが、この国の惨状を示してあまりあると思う。福島県内の自治体の多くが、帰還政策に追従していく中で、井戸川町長は、町民の命と権利を守るために孤立無援で闘ってきた。そんな町長の存在は「福島は安全だ」といって事故の責任をうやむやにする国、県、東電にとって、目の上のたんこぶだったに違いない。だからといって、国や東電が井戸川おろしをするわけにはいかなかったのだ。

岩本議員は「町長は町民の声を聴く努力をしていない」という。こんな言葉が、双葉町民から出てくることに愕然とする。何を根拠にそう言うのか。町長は福島県内の仮設を回って懇談会をしてきた。
仮設を回る回数が足りないというなら、もっと回ればよかったのか? そして、そういう町議こそどれだけ町民と向き合ったのか。3・11直後の福島第一原発の爆発のとき、避難できず町にとり残された三百人の無念さを背負い続け、町民すべての被ばく検査が終わるまで、自分は検査をしないと言いはる町長を、私はとても暖かい人だと感じるのだが。よその人間が双葉町のことを見つめているのに、双葉の議会が町長のしてきたことを認めないというのは、・・・ちょっと度量の狭さを感じてしまう。

中間貯蔵施設の会議に出なかった町長のことを「自分の町、自分の考えだけでコトにあたろうとした」と岩本議員はいうが、自分の町のことを考えることがなぜ悪いのか。岩本議員は誰と向き合っているのだろう。町民感情の頭越しに着工を急ぐ、県と向き合ってるのかな。また町議たちは、町長が主張している「町民の健康問題」については、何も見解を言わない。私は町議ひとりひとりにそれを聞きたいと思う。井戸川町長にインタビューしたとき、「私は反原発ではない。ただ、日本を滅ぼしたくないだけだ。健康な子孫を残すということが大事で・・・・」と語った。そのことに対して、どうして誰も共感しないのだろうか。反論でもいい。なぜかかわろうとしないのか。佐々木清一議長に至っては、議会の後の記者会見で「国とけんかするのも、放射能について言及するのもいいが、町民を一つにすることを考えるべき。自分ひとりの考えでなく、町長としてやるべきことは双葉郡をひとつにすることだ」と言った。自分の考えもなしに県のいいなりになることが、町民に向き合うこととどう結びつくのか。町民の頭越しに中間貯蔵施設を作ることを前提とする会議に対し「自分は反対だ」と表明することも許されない。・・・ 原発事故の最大の被害者である町の議長が、それを許さないのだ。とにかく歩調を合わせることが大事なのだ。こんな議会がどうして、町民のやるせなさに向き合えるんだろう? 前代未聞の世界的な原子力災害に対し、本気になって向き合う井戸川町長に、追いつける人は双葉町議会にはいない。

不信任が決まったことを知った、旧騎西高校の避難所の町民たちは「あんなに頑張ってくれてる町長なのに、本当に許せない」と、悔しさを隠せない様子だった。泣き出す人もいて、つらかった。傍聴席から「町長は町民思いだ!」と叫べばよかったのに、できなかった自分を苛んだ。

しかしこの不信任決議は、マスコミの報道とは別にどんどん広がり、多くの人が井戸川町長にエールを送っている。そして今、町長不信任に抗議する、双葉町民の署名活動が始まった。「双葉の人間はおとなしい」と言ってきた人たちが、動き始めているのだ。日本社会はちょっとだけ成熟している・・と思う。井戸川町長は、自分のしていることがすぐには理解されないことを知っている。

そして、個人が自分の考えを表明することが、民主主義の基礎だということも。こんな人が、双葉町の中から登場してくることが、未来を作ることになる気がしてならない。

なお、この件に関する井戸川双葉町長の町民宛てメッセージはこちらで読むことができます。
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