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*下記は孫崎享著『日本の国境問題』(ちくま新書 2011年5月)を紹介して孫崎享は「まっとうな人」だと印象づけようとした人への返信として認めたものです。もちろん、近頃流行りの「孫崎享ブーム」とやらへの異議申し立てとして、です。今回も古寺多見氏の「まっとうな」孫崎氏批判を援用させていただくことにします。なお、強調及び注はすべて引用者。

先に私は「孫崎享『戦後史の正体』にかぶれる読者の見識を疑う」という古寺多見氏の孫崎批判の論攷をご紹介しましたが、その古寺さんが孫崎氏の『日本の国境問題』は「穏当至極の主張の本である」と評価しています。

「同じ著者による下記の本(引用者注:『日本の国境問題』)を読んだ(略)。こちらは穏当至極の主張の本である(ネトウヨは怒り狂うに違いない内容だが)。思うのは、孫崎享は本書のように自分の守備範囲に著作をとどめておけば良いのに、ということだ。それを、鳩山一郎岸信介といった、改憲派の「保守傍流」政治家たちに肩入れしつつ、妙な思い込みに固執するあまり、イデオロギー的かつ米国陰謀論に凝り固まったトンデモ本を出すから批判される*2。日本近代史の研究者が書いた本(坂野潤治著『日本近代史』)を読んだ直後に孫崎のトンデモ本を読んだ日には、あまりの落差の大きさに目が眩んでしまう。困ったものである(笑)」(「孫崎享の穏当な本『日本の国境問題』」2012-10-08)

しかし、上記の古寺さんのコメントを読めば一目瞭然ですが、古寺さんの『戦後史の正体』批判には変わりがありません。彼のその後の『戦後史の正体』批判の要点を3本ほどご紹介させていただこうと思います。

ひとつ目。

孫崎享は日本国憲法を「押しつけ憲法」論で一蹴してるわけだが(笑)(kojitakenの日記 2012-10-05)

「某所で教えてもらったのだが、孫崎享の『戦後史の正体』は最初の100頁が創元社のサイトでpdf化されたものを読める。
http://www.sogensha.co.jp/pdf/preview_sengoshi_ust.pdf

(略)この100頁で一番目についたのは、日本国憲法を「押しつけ憲法論」で軽く片付けてしまっていることかな(孫崎本68~71頁。pdfファイルの80~83頁)。/なにやら『中国新聞』で岡留安則(注1)が『戦後史の正体』を絶賛したらしいけど、世の「リベラル・左派(サハッ?)」の皆さん、そんなことで良いの?/蛇足だけど、孫崎享ってたぶん鳩山一郎びいきなんだと思うけど、1930年に野党・政友会の政治家だった鳩山一郎が「ロンドン海軍軍縮条約は、軍令部が要求していた補助艦の対米比7割には満たない」、「軍令部の反対意見を無視した条約調印は統帥権の干犯である」と政府を攻撃して自ら政党政治をぶっ壊したことにはたぶん孫崎のトンデモ本には触れられてないんだろうねえ。なんたって『戦後史の正体』だもんね。/で、鳩山一郎はアメリカの「虎の尾を踏んだ」から公職追放されたわけだ。そんな「歴史観」で本当に良いの? 教えて風太さん、教えて岡留さん(笑)

ふたつ目。

「改憲、はたまた護憲」カメレオンのような孫崎享(kojitakenの日記  2012-10-11)

「護憲 孫崎」でググってみた。筆頭に表示されたのは「きまぐれな日々」の下記記事。/きまぐれな日々 安倍晋三「長期政権」の悪寒/左派内から崩れる「護憲論」/3番目に はこんなTwitterが。7月29日の発信で、これは『戦後史の正体』の発売5日後。発信者は改憲派と思われる。

https://twitter.com/khiikiat/statuses/229709454487212032

孫崎享『戦後史の正体』:護憲派にとってはビミョーな内容含む。現行憲法は押し付けそのものの指摘。コレに怒らないなら国民ではない。米軍=解放軍規定の滑稽さはイラク・アフガニスタン侵略目撃の日本人には通じない

「ビミョー」も何も、孫崎享は『戦後史の正体』で堂々と「押しつけ憲法論」を開陳している。/ところが、同じ人間(孫崎)が、『週刊朝日』ではこんなことを言っている。

週刊朝日EX DIGITAL
橋下氏も自民党総裁選 も「右」の人ばかり どうなる日本

先日旗揚げされた「日本維新の会」の「維新八策」の中には、「憲法9条」に関する記述があるという。これについて元外務省国際情報局長の孫崎亨氏は「橋下徹氏は9条を変えたいのだろう」と指摘。「右」の人間が増える政界の現状についても話した。

* * *

憲法改正の分野には「憲法9条を変えるか否かの国民投票」という項目があります。もちろん橋下さんは9条を変えたいんでしょう。維新八策には書かれていませんが、集団的自衛権に触れたところで、「日本の主権と領土を自力で守る防衛力と政策の整備」という表現もあります。中国の大国化に対しては、中国の強大な軍事力に対抗できるようなものは築きえない以上、平和的な手段を目指さないといけない。なのに、対抗できるという形で動こうとしている。これは米国が日本、韓国、フィリピン、ベトナム、豪州などを使って中国に対抗するという、その流れをくんだものです。/折しも尖閣問題のさなかですが、橋下さんが日本のトップに立てば、対中強硬路線を突っ走るでしょう。中国との摩擦、緊張感を高めて、その中で日本の防衛力を高め、米国との協調を進める。こういうシナリオではないでしょうか。/自民党の総裁選の主な候補はもう、極端に右の人ばかりですよね。石破(茂)さん、安倍(晋三)さんは確実。石原(伸晃)さんも、お父さんと同じ路線だと推定すると、右ですね。もう選択肢がなくなってしまったんですね。かつてはこういう人々は、「おもしろいかもしれないけど本流じゃない」という位置づけだった。いまや、本来あるべき選択肢がなくなってしまった。橋下さんも右、野田さんも右、本当に選択肢がない。/※週刊朝日  2012年9月28日号

孫崎享に聞きたいが、それでは岸信介は「右」ではないのか。何度も書くが、孫崎、高橋洋一長谷川幸洋(注2)の鼎談では、高橋が橋下徹(注3)を持ち上げたり、安倍政権時代の思い出話に花を咲かせたりしている。これは『週刊ポスト』に掲載された。孫崎の態度は『週刊朝日』と『週刊ポスト』で違う。/メディアによって言うことをコロコロ変える孫崎享は、私には「劣化版佐藤優(注4)」に見える。/そして、昨今の「孫崎享ブーム」は「<佐藤優現象>」そのものだ。孫崎享を批判できない「リベラル・左派」は、劣化もきわまれりとしか言いようがない。

三つ目。

孫崎享が書かなかった鳩山一郎の「統帥権の干犯」論(kojitakenの日記  2012-10-13)

「私が孫崎享の著書を2冊読んで感じたのは、孫崎はネトウヨの言うような「親中派」では全くないということだ。それどころか、孫崎は中国を「したたかな敵」と見ていて、そんな中国に日本はどう対応していくか、というのが孫崎が持っている問題意識だと思った。

反面、私が感じたのは孫崎のかつての勤務地であったソ連(当時)に対する一種の親近感である。鳩山一郎は「反米・親ソ」の政治家としても知られ、クレムリンは鳩山政権が長続きするよう応援したいと考えていたという。岸信介はもちろん「親米・反ソ」の政治家であるが、孫崎は鳩山由紀夫内閣のブレーンとして近年名を上げた人だ。その孫崎は岩上安身(注5)らのグループに入り、小沢一郎(注6)の擁護にも熱心に見えるが、私には孫崎の小沢擁護は「商売上の必要性からやむを得ず行っている」ものに過ぎず*7、本音は「鳩山由紀夫(注7)シンパ」なのだろうと思う。著書を読んでも、最近の政治家で孫崎がもっとも熱烈に擁護しているのは鳩山由紀夫であり、小沢一郎擁護に関しては鳩山由紀夫に対するほどには熱が入っていないように思われる。そして、岸信介に対する肯定的評価については、やはり安倍晋三の近い将来の首相就任を視野に入れているとしか思えない。『戦後史の正体』においては、(第1次)安倍晋三内閣に関する記述を省略したり、「おわりに」に書かれた分類でも安倍晋三を「対米追随派」として「他、海部俊樹、小渕恵三、森喜朗、安倍晋三、麻生太郎、菅直人、野田佳彦」として、十把一絡げで切り捨てられている。しかし、そんなものは第2次安倍内閣成立後に「安倍首相は変わった。第1次内閣時代の安倍さんとは違う」と言ってしまえばおしまいである。それだけで、過去の主張などなかったことになる。孫崎のトンデモ本第2弾における鼎談の相手である高橋洋一や長谷川幸洋は安倍晋三のシンパだし、岩上安身らのグループに以前から入っている植草一秀(注8)は、『知られざる真実』を読んでみればよくわかるが、もともと安倍晋三のシンパだったのである(もちろん最近の植草は、そんな本音を隠しているが)。

何より危険なのは、nesskoさんのコメント*8にもあった通り、「アメリカ陰謀説は容易にユダヤ陰謀説とつなが」るのであって、それはネトウヨの「反韓・反中」と何も変わらないということだ。私は、「孫崎享に関してはネトウヨが正しい!」とまでは思わないけれども、「孫崎享はある意味ネトウヨより危険だ!」とは思う。なぜなら、いわゆる「リベラル・左派」は、ネトウヨの主張にいまさら影響されることなどないけれども、孫崎享の主張に影響されて自らの歴史観を改めるというのは、現に今起きている現象だからだ。だから私は毎日のように孫崎享を批判する記事を書き続けるのだ。」

私もほぼ全面的に古寺多見氏の見方に賛同します。

注1:岡留安則氏については私も次のような批判記事を書いています。
注2:長谷川幸洋氏については私は知るところは少ないのですが、彼の論については下記弊論中のような疑問を呈示しています。
注3:橋下徹氏については私もたくさんの批判記事を書いていますが、下記にその初期批判の一例を挙げておきます。
注4:佐藤優氏についても私はたくさんの批判記事を書いていますが、下記にその一例を呈示しておきます。
注5:岩上安身氏についても私は相応の批判記事を書いていますが、下記にその一例を呈示しておきます。
注6:小沢一郎氏についても私はたくさんの批判記事を書いていますが、下記に最近の小沢氏批判の一例を呈示しておきます。
注7:鳩山由紀夫氏についても私はたくさんの批判記事を書いていますが、下記にその初期批判の一例を呈示しておきます。
注8:植草一秀氏についても私は相応の批判記事を書いていますが、下記にその一例を呈示しておきます。
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