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相も変わらず孫崎享『戦後史の正体』を肯定評価する向きが少なくない。
 
孫崎本は「対米従属」の元凶ともいうべき日米安保条約を戦後60年以上も肯定、擁護し続けてきたこれまでの自民党政権の約3分の1ほどの歴代首相経験者を「自主・自立」派と呼んでいる。噴飯ものである。これ以上のこけおどしはない。
 
孫崎氏が「自主・自立」派と分類している「岸信介、福田赳夫はアメリカの軍用機売り込み工作、いわゆるダグラス・グラマン事件で賄賂を受け取った政治家として当のアメリカ側の証券取引委員会(SEC)から名前を明らかにされるとともに告発された人たちです。こういう人たちを「対米自主・自立」の人と言えるのか?」(「孫崎享『戦後史の正体』の対米自主・自立の〈正体〉について――孫崎享氏の『戦後史の正体』についての講演ビデオを観る―― 」弊ブログ 2012.08.04)

岸信介はさらに正力松太郎などとともに中央情報局(CIA)から資金提供を受けていたとされる人物です。こういう人をも「対米自主・自立」の人と言えるのか?」(同上)
 
「鳩山由紀夫氏についてはまだ記憶も新しい。「『最低でも県外』と首相自ら公約しながら県民の心を8カ月間ももてあそび、『辺野古現行案』に回帰するという公約違反の裏切り行為」(琉球新報社説、2010年6月1日付)に及んだ人物です。こういう人をも「対米自主・自立」の人と言えるのか?」(同上)
 
あまりにも愚かしい政治認識といわなければならない
 
以下、私とは別の観点から書いた古寺多見(kojitaken)氏の孫崎享『戦後史の正体』批判をご紹介します。

「橋下・安倍・小沢大連合」の可能性と孫崎享の「珍書」(後半)(きまぐれな日々 2012.08.20)

ところで、「小沢信者」の総本山ともいえる植草一秀は、間接的な表現ながら橋下とは距離を置くスタンスをとっているようだ。それには異論はなく、むしろ「小沢信者」の中ではマシな部類といえるのだが、その植草が「『対米隷属』派と『自主独立』派のせめぎ合い」と題したエントリで、孫崎享の著書『戦後史の正体』を好意的に取り上げていることに引っかかり、Amazonのカスタマーレビューをざっと眺めてみた。そして呆れた。

孫崎は、歴代内閣総理大臣を「対米従属派」と「自主派」に分類する。これだけでも植草一秀を筆頭とする「反米愛国」系の「小沢信者」が大喜びしそうな、その実態は陳腐きわまりない「善悪二元論」だが、目新しいのは岸信介と佐藤栄作を「自主派」に分類していることだ(70年代に日本政治の右傾化のきっかけを作った福田赳夫も「自主派」に分類している)。

孫崎によると、地位協定の改定を意図していた岸内閣を早期に退陣させる目的で、安保闘争の全学連にまでアメリカの資金が流れていたという。つまり、60年安保闘争も実はアメリカの陰謀だったという「9.11自作自演説」も真っ青な「陰謀論」を孫崎はかましている。そうして岸信介はアメリカによって権力から引きずり下ろされたというのだが、それならなぜ岸信介と佐藤栄作はCIAから資金援助を受けていたのかを孫崎が説明しているのかどうかは、読んでいないので知らない。私はカスタマーレビューだけでお腹いっぱいになってしまって、こんな駄本を読むつもりは全くないので、上記についてご存じの方がおられればコメント欄でお知らせいただけると幸いである。

蛇足ながら、岸信介が「安倍晋三の敬愛する祖父」である点も気になる。可能性としては低いけれども、もっとも極端なケースとして、安倍晋三・橋下徹・小沢一郎の三者の連携もあり得ると私は考えているからだ。不幸にしてこれが実現した場合、「自公民大連立政権」よりもずっと性質の悪いな政権が成立することになる。

孫崎の著書の話に戻ると、この本には既に48件のカスタマーレビューがついていて、うち35件が5つ星である一方、星1つが8件ある。しかし、後者の多くはネット右翼からの異論である。中には本文ではこき下ろしていながら5つ星をつけているレビューもあるが、概して高評価で、「目からうろこが落ちた」的な感想を述べている人も多い。一水会の機関紙、『日刊ゲンダイ』、『噂の真相』元編集長の岡留安則、『週刊金曜日』などでも好意的なレビューがなされていたとのことで、要するに「小沢信者」及びその周辺で大人気を博しているようである。

そして、これまで「護憲」のスタンスを取っていた「小沢左派」のうち、この本に感化されてか「改憲」、つまり「自主憲法の制定」を肯定する立場に転向した人間が少なからずいると聞いた。

リアルの政治において、安倍晋三・橋下徹・小沢一郎の三者連合ができる可能性は実のところきわめて低いと私は思っている。小沢一郎は「国民的不人気」だからである。世論調査で小沢新党「国民の生活が第一」の支持率が出始めているが、同党の支持率は概ね1%前後であり、社民党よりは高いが共産党より低い。小選挙区で勝ち抜ける候補は小沢一郎以外には思いつかないから、同党がどことも提携せずに衆議院選挙を戦った場合、同党の獲得議席は1桁に落ち込むだろうと私は予想している。

だが、それとは別に、「安倍・橋下・小沢」連立政権ができてもそれを支持する下地ができつつあることは、孫崎本が大人気を博していることからもうかがわれるのである。

いや、上記から「小沢」を抜いた「安倍・橋下」政権でも受け入れられるかもしれない。岸信介を「自主独立派」の政治家とみなして肯定するのであれば、「安倍・橋下」政権を否定する理由など何もなくなる。

現在、民自公の一部にある「大連立」志向はよく「大政翼賛会」になぞらえられる。その指摘自体は間違っていないと思うし、私も民自公大連立には反対だ。しかし、1940年の「大政翼賛会」は決して無批判に受け入れられたわけではない。当時も「右」からの強烈な批判があった。その急先鋒が平沼騏一郎だったから、時の近衛文麿首相は平沼を閣内に取り込んだ。それでも、「大政翼賛会は『赤』だ」という「右」からの批判は一定の支持を受けた。

岸信介を肯定的に評価して陰謀論をかます孫崎享に代表されるような「反米愛国」の人たちは、言ってみれば「大政翼賛会」を「右」から批判した勢力に対応するのではないか。彼らは、大政翼賛会ともども戦後否定されることになり、大政翼賛会でも右からの批判でもない「デモクラシー」が占領軍(アメリカ)によって導入された。

現在も似たような状況で、消費税増税を3党合意で導入した民自公「大政翼賛会」やそれに対する右からの批判勢力である「維新」(橋下)は、いつになるかわからない「戦」後、ともに否定されることになるだろう。

しかし、現状の延長戦を突き進むのであれば、残念ながら必ずや一度は破局的局面を経由せざるを得ないのではないだろうか。
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