以下は、ピースボート共同代表の川崎哲さんの「脱原発=原発ゼロの政策決定をもたらすために」という論への反問です(「反論」ではありません)。

解散総選挙を「近いうちに」控えて、いま、さまざまなメディア(ネットやメーリングリストなど)を通じて主に脱原発活動家や市民活動家を中心に「党派を超えて脱原発候補を応援しよう」という趣の呼びかけが盛んに試みられていますが、その呼びかけが真に脱原発議員の結集と当選、誕生に寄与するのならば申し分のないことなのですが、選挙対策用の口実として「脱原発」を口にするだけの議員、また、これまで原発推進政策にさんざん与してきて口先だけで「脱原発」を言う倫理喪失者としてのエセ脱原発議員の当選と誕生に寄与するということにでもなれば「脱原発」の呼びかけのはずが実質「原発推進」の呼びかけに暗転しかねません。3年前、私たちの多くは自民党政治にピリオドを打つために民主党への「政権交代」を訴えました。「民主党に投票しよう」、と。しかし、その呼びかけが見事に暗転したことは私たちがいまのいま慙愧の思いの中で経験していることです。その過ちを繰り返してはならないと思うのです。だから、「脱原発候補を応援しよう」という呼びかけは慎重でなければなりません。内実のあるものにしなければなりません。私の川崎さんの問題提起への反問はそういう趣旨のものです。それが、反論ではなく、反問、ということ、の意味です。

川崎さん

実は川崎さんと現状認識の点ではほぼ同様の認識を示し、具体的な行動提起の側面ではまったく異なる問題提起をしているブログ記事があります。

「脱原発」を次期総選挙の争点に据えよ(きまぐれな日々 2012.08.13)

その「きまぐれな日々」ブログの現状認識は次のようなものです。

現時点で衆議院の解散が行われて総選挙に突入すれば、自民党の圧勝は間違いない。(略)消費税増税法案は間違いなく争点になるだろう。この点では、民主党と自民党はともに消費税増税法案を成立させたことが批判されることになるが、民主党と自民党に同じ咎がある場合、特に地方の有権者は長年の実績のある自民党を選ぶ。だから自民党が圧倒的に有利になる。(略)

衆院選で自民党が過半数を制しても、参院では民主党が第一党で、自公は会わせても過半数にならないから「大連立」政権を作るというのが、おそらく野田佳彦(「野ダメ」)と谷垣禎一が考えていることだろうが、自民党と民主党が大連立を組んだ場合、上記の「民主党と自民党に同じ咎がある場合、特に地方の有権者は長年の実績のある自民党を選ぶ」法則に従えば、民主党は来年の参院選で、2007年に圧勝した議席の多くを失う。そうなると参院選後に自民党と民主党が大連立を組む必要はなくなるから、「大連立」は解消され、自公政権が復活するのではないか。その場合、確実に予想されるのは、それが本格的な「原発推進政権」になるだろうということだ。いや、来年の参院選を待たず、自民党首班の谷垣禎一が野ダメ民主党と大連立を組む政権になった時点で「原発推進」政権の性格を持つことは避けがたい。

ここまでの「きまぐれな日々」主宰者の政局の現状認識は川崎さんのそれともそう違わないでしょう。

しかし、そうした現状認識に立った上での問題意識は川崎さんと「きまぐれな日々」主宰者とでは180度とまではいわないものの120度程度には異なります。

ここでの「きまぐれな日々」主宰者の問題意識は、「これ(上記のような情況の出来)を阻止するためには、なんとしてでも「(脱)原発」を「消費税」と並ぶ総選挙の争点にしなければならない」というものです。ここでいわれている「これ(上記のような情況の出来)」とはいうまでもなく自公中心の「原発推進」政権、もしくは自公民大連立「原発推進」政権の成立のことを指しています。すなわち、自公中心の「原発推進」政権、もしくは自公民大連立「原発推進」政権の成立を「阻止するためには、なんとしてでも「(脱)原発」を「消費税」と並ぶ総選挙の争点にしなければならない」というのが「きまぐれな日々」主宰者の問題意識なわけです。

対して川崎さんの問題意識は、「野田政権(民主党)が原発維持を鮮明にした場合には」「自民・民主連立」の原発維持政権ができる」危険性が非常に強い(シナリオB)。そうさせないためには「「原発ゼロっぽい選択」を真剣に検討し始めている」(「もちろん、仮に現政権が「ゼロっぽい宣言」をしたとしても、マニフェストを作っても平気で破る政権(政党)ですから、あてにはなりません」が「原発政策に関する限り、シナリオBよりはよほどまし」)「秋に新しく生まれる(民主党)政権が「脱原発を支持する国民の信託をえて誕生した」という形で誕生」させるのがベターである(シナリオA)、というもののようです。要するに川崎さんの説は、「野田政権(民主党)が」「原発ゼロっぽい選択」をした場合にはという前提はあるものの、民主党政権存続ベター説、あるいは延命ベター説ということになります。ここには「マニフェストを作っても平気で破る政権(政党)」に対する三行半の思想(根底的な批判=怒り)は見られません。いまだ民主党に期待している川崎さんの主観的な願望が露わです。

しかし、民主党にもはやこれっぽちも期待できないことは、2009年8月の「政権交代」以来のこの3年間の民主党政権の悪政の足跡そのものが見事なまでに証明しています。ことは民主党の「原発推進」政策問題(★)にとどまりません。普天間問題公約違反問題、朝鮮人学校排除問題、外国人参政権付与法案問題、夫婦別姓等民法改正問題、抜け穴だらけの労働者派遣法「改正」問題、官僚・法制局長官の答弁禁止問題、大企業優遇税制非是正問題、中小企業減税見送り問題、米軍思いやり予算非是正問題。最近では消費税増税問題、TPP参加問題などなど。民主党に期待しても再度裏切られるのは目に見えています。

★「政治家を原発推進政党(民主党)の議員を含めて「人物本位」で候補者を擁立しようという呼びかけは正当か?――環境ジャーナリストの川崎陽子さんの呼びかけに反論する」(弊ブログ2012.01.07)参照

川崎さんご自身も次のようにおっしゃっています。「仮に現政権が「ゼロっぽい宣言」をしたとしても、マニフェストを作っても平気で破る政権(政党)ですから、あてにはなりません」、と。

また、政治学者の浅井基文さんも民主党政治への絶望について次のように述べています

残念ながら、民主党政権の政治は、自公政治の時よりもさらに悪質になってしまっています。私は、自公政治は最悪で、これ以上悪い政治はあり得ないだろうと思っていたのですが、それは間違っていました。民主党政治は、自公政治がやりたくても世論をまだ気にして手をつけ得なかった領域においても、まったく傍若無人にブルドーザー式に破壊を進めています。消費税増税、政財官学・大マスコミ一体・グルで推し進める原発温存、日米軍事同盟の限りない侵略同盟への変質強化、非核三原則・武器輸出三原則の骨抜き化、宇宙の軍事利用への踏み込み、中韓露を領土問題で強硬姿勢に追いやる見境のない、狭隘なナショナリズムの鼓吹、等々。民主党政権には何の幻想ももっていなかった私ですが、谷底へ転げ落ちていくこの猛スピードまでは予想し得ませんでした。しかも、この加速するスピードにブレーキをかける手がかりも頭に浮かんでこないというのが今の私の焦燥感さらには絶望感を生んでいます。「自分は長生きしすぎた」というのが正直なホンネです。

私たちにいま求められているのは、自公中心の「原発推進」政権及び自公民大連立「原発推進」政権の成立をなんとしても阻止する(自公だけでなく民主党、民主党的なものにも投票しない、ということです)という課題というべきではないでしょうか? そのためには「なんとしてでも「(脱)原発」を「消費税」と並ぶ総選挙の争点にしなければならない」というのが政治課題を考える上での順番だろう、と私は思っています。

この問題については改めて論じるつもりです。
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