今日、民主党元代表の小沢一郎氏が民主党に離党届を提出しました。報道によれば、この日同党に離党届を提出したのは小沢氏を含めて衆議院議員40人、参議院議員12人の合わせて52人(★)だということです。

★その後、辻恵衆院議員と階猛衆院議員の2人が離党届を撤回し、この日離党届を提出したのは衆院38人、参院12人の計50人になったということです(時事通信 2012年7月2日20:07)。

小沢氏が民主党を離党する直接の原因はいうまでもなく先の26日午後の衆院本会議の消費税増税法案の採決で小沢氏を含む民主党議員57人(棄権・欠席議員を含めると73人)が反対に回ったことにありますが、このことをもって小沢氏の(前回衆院選時の)マニフェスト重視の理念の大義を過度に言い募り、おのれの空想以外のなにものでもない、すなわち、事実に基づかない「小沢像」を勝手に構築し、それゆえに幻想、幻視、夢想としかいうほかない小沢政権の実現に期待する向きが一部にありますが、その彼ら、彼女たちの幻視の「小沢像」は最近では脱原発世論の高まりを受けてのことでしょう。「小沢一郎は脱原発主義者に転換した」という虚構の物語まで創りだしています。

小沢氏が真に脱原発主義者に転換したというのであれば、それはそれで大いに歓迎するべきことですが、それが虚構の物語でしかないのだとすると、その政治的な弊害は大なるものがあるといわなければならないでしょう。たとえば先日29日の首相官邸前20万人デモや7月1日にリサイクルショップ「素人の乱」の松本哉さんたちが主催した原発やめろ野田やめろデモ!!!!!のゆきつくところが虚構の物語としての「脱原発主義者の小沢支持」ということにでも仮になれば、もはや政治に脱原発を期待することなど望むべくもない。私たちの国が後戻りのきかないポイント・オブ・ノーリターン(帰還不能点)の地点に陥没することは明白である、といわなければならないからです。すなわち、小沢一郎氏は原発容認主義者ではあっても、脱原発主義者では断じてありえない、ということです。

以下、そのことを少し論証しておこうと思いますが、小沢一郎氏が脱原発主義者ではありえないことは次の朝日新聞記事がひとつの傍証になっているでしょう。この件についてつい最近の朝日新聞の社説(2012年6月23日付)は次のように述べています。

小沢氏は『選挙になれば反増税と脱原発を掲げて戦える』と側近議員に語ったという。/だが、反増税はともかく、脱原発や原子力政策のあり方について、本人の口からまとまった主張は聞いたことがない。

上記は政治家の発言を組織的にウォッチ(情報収集)し、チェックするという意味でプロ集団というべき大手メディアの論説委員会のこの件についての主観とは別次元の事実に関する判断です。ほぼ正確な事実判断と見てよいと思います。小沢一郎ウォッチャーのひとりとして有名なkojitaken氏もこの件について次のように補足しています。

昨年、『AERA』で脱原発宣言をしたぞと、当時「きまぐれな日々」のコメント欄常連だったcube氏がうれしそうに書いていたが、記事を読んでみるとニュースソースは川内博史だった。記事は、小沢真理教の使徒・川内博史が語る伝聞形の「小沢先生のお言葉」を『AERA』が記事にしたものに過ぎなかった。この例に見られるように、自らは決して主張を鮮明にしない小沢のやり方を朝日に『脱原発や原子力政策のあり方について、本人の口からまとまった主張は聞いたことがない』と突かれている。(「朝日新聞もひどいが小沢一郎もひどい」kojitakenの日記 2012-06-23)

ちなみに私も小沢一郎ウォッチャーとして小沢氏の発言を注意深くチェックしている者のひとりですが、小沢派の議員が電力総連(東京電力労組)から多額の政治献金を受けている(「AERA」 2011年4月25日号)などという情報は耳にする、あるいは目にすることはあっても、「脱原発」を明確にするたぐいの小沢氏の発言は寡聞にしてこれまで耳にし、目にしたことは一度もありません。上記で見た「小沢一郎は脱原発主義者に転換した」という一部の小沢支持者の認識は虚構の物語を紡ぐことだけに寄与する事実誤認の認識といわなければならないでしょう。

しかし、ある人は、上記の私の論に次のような異議申し立てをしてきました。朝日新聞のオピニオン面に脱原発に関する小沢氏の明確な発言が紹介されていた、と。しかし、この異議申し立ても事実誤認の論であることは以下のとおりです。

朝日新聞のオピニオン面における脱原発に関する小沢氏の発言とは2012年2月24日付けの朝日新聞オピニオン面の小沢氏インタビュー記事のほかありませんが、そのインタビュー記事における小沢氏の「原発」問題に関する発言は全インタビュー記事のうち以下の部分のみです。

「――震災3カ月で菅内閣不信任案に賛成しようとした理由は。

僕は原発が水素爆発した直後から『メルトダウンしている』『全ての情報を公開しろ』と言い続けてきた。政府が認めたのは何カ月も後だ。そういう隠蔽体質、役所も含めてきちんと整理できなかったのはトップの責任になる。何よりも国政選挙(参院選)に負けたのに辞めなかった。首相が何人目などというのは関係ない。選挙の責任者が負けても居座るのは、議会制民主主義に禍根を残す。これらのことで(菅内閣は)国民の信頼を失っていた

――震災から1年。原発の見直しの機運が失せています。

原発はあくまでも過渡的エネルギーだ。新しいエネルギー開発に全力をあげてこなかったことは、我々も反省すべき点だが、今ここで放射能を完全に封じ込めないと日本の将来はない。政府は『収束宣言』を出したが、何が収束したのか。避難した人たちが帰ることができるのかどうかさえ明言しない。こんな無責任な政治はない(「朝日新聞単独インタビュー (Ozawa Ichiro Website 発言・出演記録 2012.02.23、24 朝日新聞朝刊)」より)」

小沢氏が「原発」に関してここで述べているのは、①「原発が水素爆発した直後から『メルトダウンしている』『全ての情報を公開しろ』と言い続けてきた」こと及び②「原発はあくまでも過渡的エネルギー」、③「今ここで放射能を完全に封じ込めないと日本の将来はない」の3点のみです。

上記で小沢氏は脱原発について「明確な発言」をしているでしょうか? していません。

①は脱原発について述べたものではないことは明らかです。

②も「原発はあくまでも過渡的エネルギー」と述べているだけで、脱原発について述べたものではありません。むしろ原発を「過渡的エネルギー」として評価し、原発稼働の現状を容認している、とも読み取れる発言です。

③の「放射能を完全に封じ込め」る発言も原発稼働を前提にした発言のようにも受けとめられます。「放射能を完全に封じ込め」る発言は原発推進論者もこれまで同様のことを言ってきたのであり、その発言が原発稼働の前提としての「安全神話」を形成してきたからです。ほんとうに「放射能を完全に封じ込め」るためには放射能発生源を遮断する。すなわち原発を全廃する以外ありませんが、だからといって「放射能を完全に封じ込め」る発言をイコール「脱原発」発言とみなすことはできません。繰り返しになりますが、同様のことは原発推進論者も主張しているからです。

2012年2月24日付けの朝日新聞オピニオン面の小沢氏インタビュー記事で、小沢氏は脱原発について、「明確な発言」をしている、という評価は誤った評価といわなければならないでしょう。小沢氏は上記記事で脱原発を「明確」にどころかいささかも主張していないというのが実相です。

小沢氏が「明確」に(実のところいささかも)脱原発を主張していないことは、上記のインタビュー記事が掲載されてから間もない2012年3月24日付けの次のツイッター情報でも明らかというべきでしょう。

小沢一郎氏が今日のTBSで「必要最低限の原発はすぐには止められないと思います」と発言。これはどう贔屓目に見ても原発再稼働容認発言ですが、小沢氏支持者の貴方は小沢事務所に抗議するつもりはありますか?真面目に聞いてみたくなりました。

さて、小沢氏は民主党を離党し、近いうちに「小沢新党」が結成される予定のようですが、真偽のほどは定かではありませんが、その新党のマニフェストとしてあらたに「消費税反対と脱原発」が明確化され、盛り込まれるという話(追記:読売新聞 2012年7月3日)があります。

仮にその話が真だとすれば、それはそれでよいことです。反対することではありません。が、「脱原発」を明確にするということであれば、その前に「小沢新党」はやるべきことがあります。すなわち、東京電力労組の電力総連からそれぞれ少なくとも3300万円と700万円の個人献金を受けていると報道されている(週刊誌「AERA」2011年4月25日号)旧小沢派の藤原正司議員と吉田治議員を旧小沢派内に抱え込み、その彼らに対してなんらの処分らしき処分もしてこなかったことへの痛恨かつ真摯な反省の弁を「脱原発」のあらたなマニフェスト発表時に開陳することです。また、彼らを「小沢新党」に誘うべきではありません。それらの措置を一切とらないで仮に「脱原発」を新党マニフェストに掲げたとしても信用するに足らない。ということは、子どもにでもわかる理屈のはずです。

私に朝日新聞オピニオン面に脱原発に関する小沢氏の明確な発言があると断言した人は、その論の虚構がわかった後でも、今度は自由報道協会によるインターネット報道(ニコニコ動画)などで小沢氏は脱原発発言をしていたかのような根拠のない主張を繰り返しています。このような態度、姿勢で「政治」を、ましてや「政治革新」を語る資格があるというのか。真摯におのれに問い直していただきたいものだと私は思います。

そして、小沢氏を支持すること(小沢氏が「脱原発」を明確に打ち出さないままで)と原発推進政党の民主党を支持することは脱原発派としてのおのれの信念、矜持と相容れないということにならないか。そのことをも真摯におのれに問い直していただきたいものだと私は思います。
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