本エントリも前記事の続きもののつもりで書いています。

先に、といってもまだ2週間ほど前のことですが、私は、大阪市の橋下市長が関西電力の株主総会で全原発廃止提案を含む株主提案をするというニュースがメディア各紙で肯定的かつ無批判的にかまびすしく報道され、それゆえにということでもおそらくあるでしょう、脱原発派の市民レベルでも橋下氏及び橋下氏ブレーンの飯田哲也氏や古賀茂明氏を「脱原発」の有力なパフォーマーであるかのように評価する論評も少なくなかったときに、橋下大阪市長の唱える脱原発宣言は「所詮ポピュリズムのパフォーマンスとしての『原発廃止』でしかないこと」、また、「橋下氏及び橋下ブレーン(大阪府市統合本部特別顧問の面々)のぶち上げる『脱原発』株主提案は再稼働を認める『脱原発』のたぐいにしかすぎない」ことを私なりに実証的に明らかにする記事を書きました。

しかし、それでも、橋下氏及び橋下氏ブレーンの飯田哲也氏や古賀茂明氏を「脱原発」の人とみなす風潮は依然として低層でというべきか、あるいは中層でというべきか、ともあれトンネルの向こうのだまし絵のようなシュールな幻惑感をともなって根強いものがありました。ポピュリズムというものの一面の正体はそういうところにあるのかもしれません。

しかし、ここにきて、橋下氏及び橋下氏ブレーンの面々の言う「脱原発」はやはり原発再稼働を認めるたぐいの「脱原発」主張でしかなかったことはもはや明々白々になった、といわなければならないでしょう。ここにきてというのは、次のような事態を指しています。以下、転載。

橋下の転向(原発)(Open ブログ 2012年4月26日)

橋下・大阪市長は、「原発再稼働に反対」を言っていたのに、「計画停電は大変だ」と気づくと、「原発再稼働を認めてもいい」と言い出した。君子豹変す。

橋下・大阪市長が、一転して、「原発再稼働を認めてもいい」と言い出した。「府民が認めるなら」という条件で。

大阪市の橋下徹市長は26日、関西電力大飯原発3、4号機を再稼働しない場合の夏の電力需給について、 「(需要の)ピーク時にみんなで我慢できるかどうか。府県民に厳しいライフスタイルの変更をお願いする。それが 無理なら原発を再稼働するしかない」と述べ、「原発か節電か」の二者択一を住民に訴える考えを示した。
橋下市長はこれまで安全性を確認する手続きが不十分なことを理由に原発再稼働に反対してきたが、「理想論ばかり掲げてはだめ。生活に負担があることをしっかり示して府県民に判断してもらう」と強調した。
( → 毎日新聞 2012年04月26日

記事では、転向の理由として、「安全はそこそこでも快適な生活を望むのか、不便な生活を受け入れるか、二つに一つだ」というふうに示されているが、そんなことは今さら理屈にならない。

そもそも、彼のもともとの主張は「節電か/再稼働か」ではなくて「計画停電を受け入れる」だったはずだ。

ちなみに、二日前の 24日には、「朝日新聞・橋下番のツイッターが正確です」と述べながら、朝日のツイッターをリツイートしていた。その内容を掲載すると、次の通り。

  「仮に今年の夏、関電管内で原発の運転を再開しないで大幅に電力不足になるとしたら」という前提を示したう えで、「節電や一時的な計画停電が必要になってもよいか」と聞くと、近畿で「なってもよい」が77%と多数を占め ました。
 電力不足になるとの前提で節電や一時的な計画停電を容認する回答が近畿で77%となった点。橋下氏「やっ ぱり国民の皆さん本当に賢明です。日本人は本当にすばらしいなとつくづく思いました。
 橋下氏「計画停電とか簡単に言うことは慎まないといけないなと思った。僕が言いたかったのは最後に腹をくく ればという意味。すぐ計画停電をやればいいとは思っていない。関西の府県民が77%、最後はやってもかまわ ないと言ってくださるのであれば、政治家としてそれに乗っかったらいい」
 橋下氏「政治家が説得し、信頼を得て、うそはつかない、情報は全部出す、今後の方針はしっかり出した上で、 府県民の皆さんに付いてきてくださいと言うべきだ。77%なんて数字が出ると思ってもみませんでした。
  橋下氏「そう(計画停電に)ならないように全力は尽くすが、ここまで(近畿の府県民が)腹をくくってくれたなら、 一致団結して新しい電力供給体制に向けて第一歩を踏み出す環境にある。だから、チャレンジしていくのが政 治家の役割だと思う」。
( → 橋下徹の twilog のリツイート(朝日のツイッター) )

いかにも勇ましい口調だが、その要旨は、こうだ。
「自分は計画停電にあまり本気では無かったが、賢明な府民が計画停電になってもいいというのならば、そこに向けて第一歩を踏み出そう。計画停電を受け入れるという決断をするのが政治家の役割だ。府民には(私に)付いてきてくださいと言おう」
これが 24日の発言要旨である。

ところが今回はそれとは正反対のことを言い出した。
「理想論ばかり掲げてはだめ。生活に負担があることをしっかり示して府県民に判断してもらう」
つまり、次の三点だ。
・ 再稼働をするべきでないという理想論は駄目だ。
・ 計画停電では生活に被害があるということに気づいてもらいたい。
・ 判断は府県民にしてもらう。

呆れる。どのツラ下げて、そんなことを言うのか。おまえが言うな! と言いたい。

そもそも、橋下はそれとは逆のことを言っていたはずだ。次のように。
・ 再稼働をするべきでないという理想論を言っていたのは、橋下だ。
・ 計画停電では生活に被害があるということに気づかなかったのは、橋下だ。
・ 判断は(府県民でなく)政治家がするべきだ、と言ったのは、橋下だ。

なのに、それとは正反対のことを言い出して、シレッとしているとは。
人の意見を自分の意見のごとく言う前に、
「私は間違っていたので、これまでの説を撤回します」
と述べて、謝罪するのが先決だろう。まったく、厚かましい。(弁護士だからかな。)

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[ 付記1 ]
橋下は、「住民が節電したくないなら(再稼働する)」なんて言って、(節電しない)住民のせいにする。
実は、企業が夏休みを取れば済む問題なのだが、「猛暑のときにクーラーを付ける住民が悪い」と責任転嫁する。
ひどい屁理屈だ。論理のすり替えだ。
本当の理由は、「企業に休めと言えない、橋下自身の無能さ」である。ここでも自分の無能さの責任を、住民になすりつけている。屁理屈ばかりうまい奴だ。ふてぶてしい。

[ 付記2 ]
橋下は、「住民が節電したくないなら」なんて言うが、実は、「節電なんかしなくていい」と言ったのは、去年の橋下だ。
→ 橋下知事、15%節電に「協力するつもりない」
→ 節電要請に協力せずと橋下知事
→ 「節電協力しない。原発推進のブラフに思える」
→ 橋下知事「過度な節電必要ない」
とはいえ、その後に朝令暮改ふうに、「節電します」と転向した。
→ 橋下知事 エアコン一斉停止呼び掛けも
→ 橋下知事、朝令暮改…「庁舎節電やめる」やめる
そのあとでまた節電反対論。
→ 冬も節電要請で批判
あまりにもたびたび転向するので、昨年のうちに皮肉られている。
→ 橋下「節電→節電しない→節電→節電しない→節電」
ハチャメチャの極み。頭がどうかしているんだろうか? せめて過去の自分の発言を覚えていればいいのに。

上記のOpen ブログ「橋下の転向(原発)」へのkojitaken氏のコメント

橋下徹が「脱原発」路線を転換したことは、もう既成事実。そう考えるべきだ。
呆れるばかりの橋下の無節操というか「転向」だが、橋下にとってみれば、「小沢一郎裁判」の無罪判決があった4月26日に最初から狙いを定めた予定の行動だったのだろう。過去にも、ロッキード事件の田中角栄裁判一審判決の日を狙ってアクションを起こした人たちがいた。

この期に及んでまだ橋下の意図を「忖度」して善意に解釈している人たちがいるが、世にあまたいる橋下礼賛者ともども、「俺の言うことは何でも通る」という橋下の自信をさらに強めさせるだけだろう。

橋下は既に「原発再稼働」、さらには将来的にも「原発維持容認」に路線を転換したとはっきり認識すべきだ。
多くの人の想像通り、橋下にとって「脱原発」は「人気取り」のための道具に過ぎなかった。

kojitaken氏は2012年4月26日付けの「橋下、『節電に住民支持ない場合は原発再稼働容認』」という記事でもこの件について次のように論評しています。

小沢一郎の無罪判決で騒然となっている日を狙い撃ちしたかのような橋下の発言が飛び出した。

節電に住民支持ない場合は再稼働容認…橋下市長 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

節電に住民支持ない場合は再稼働容認…橋下市長

関西電力大飯原子力発電所3、4号機(福井県おおい町)の再稼働に反対している大阪市の橋下市 長は26日、市役所で報道陣に、「原発を再稼働させなくても(今夏の電力需要を)乗り切れるかどうか は関西府県民の努力次第。相当厳しいライフスタイルの変更をお願いすることになる。その負担が受け入れられないなら、再稼働は仕方がない」と述べ、節電策に住民の支持が得られない場合、再稼働を容認する意向を示した。

関西電力は今夏の電力需給について、ピーク時の7月に供給力が需要に比べて19・3%不足するとしたデータを発表している。

橋下市長は関電のデータの検証を求めているが、「検証を待っていたら対策が遅れる。今(関電が)出している数字を基に、今夏の節電策を考えざるを得ない」と述べ、再稼働しない場合を想定した今夏の節電策をまとめるよう関西広域連合に要請する考えだ。
(2012年4月26日12時35分 読売新聞

「とうとう尻尾を出したか」と思う。小沢無罪判決の日にこんなことを言ったのは、「再稼働反対は暴論」だと主張する「小沢先生」への橋下のプレゼントなのかもしれない。さらには、自民党内ですっかり非主流派が板についてきた安倍晋三や、東京の石原慎太郎らと組む際にも、「脱原発」の看板は邪魔になる。いつか必ず橋下が「脱原発」の看板を投げ捨てる日が来るだろうとは思っていたが、それはすぐ先かもしれない。

橋下は「今(関電が)出している数字を基に、今夏の節電策を考えざるを得ない」と言っているが、これって橋下のブレーンにして、このところ橋下への礼賛の度合いをさらに強めてきたブレーンの飯田哲也が普段主張していることと矛盾するんじゃないか? 「19.3パーセント不足」という関電の主張は、現在強く批判にさらされているところではないか。それを前提にせよと橋下は言う。ひどい話である。

「脱原発で頑張る橋下市長を応援しよう」という一部左派人士のかけ声や、橋下への入れ込みを強めてきた前記飯田哲也らの言葉を空しくさせる、橋下十八番の「掌返し」。だから橋下徹なんかを信じてはいけなかったのだ。
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