前エントリの続きものとして本エントリを書きます。

下記にご紹介する「未来につなげる・東海ネット市民放射能測定センター」のがれきの広域処理反対論はきわめて説得的ながれき広域処理反対論になっているように思います。こうしたがれき広域処理反対論であれば私は全面的に賛成します。

しかし、ここで同市民放射能測定センターによって提起されている「放射能汚染した災害廃棄物広域処理に関する見解」は、あくまでも「放射能汚染がれきの広域処理の危険性について、および、がれきの適切な処理方法について」の見解です。その見解は、先に私がご紹介した 小倉利丸さんの『瓦礫論』にいうがれき処理に関する「三つの条件」のうちの一つの「政府の瓦礫広域処理の踏絵を拒否する」という課題をクリアしているというレベルのものです。小倉さんはさらにクリアするべき二つの課題を提起していました。すなわち、「放射性瓦礫を被災地に押しつけるべきでもないこと」、「責任のある者に責任をとらせること」の二つの課題です。そうした重要な課題も残されていることを前提にして、この未来につなげる・東海ネット市民放射能測定センターのがれき広域処理反対論は読まれるべきだろう、というのが私の意見です。

さて、以下、未来につなげる・東海ネット市民放射能測定センターの「放射能汚染した災害廃棄物広域処理に関する見解」(2012年4月23日付)のご紹介です。 

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3.11東日本大震災により大量の災害廃棄物(以下がれき)が発生した。政府は、福島県のがれきについては原発事故の影響により高濃度の放射能を含んでいるために県内処理としたが、岩手、宮城のがれきについて「広域処理」するとの方針(東日本大震災に係る災害廃棄物の処理指針/環境省・2011年5月16日、災害廃棄物の広域処理の推進に係るガイドライン/環境省・2011年8月11日、等)を示し、今年に入ってごり押し的に地方自治体への押し付けを行っている。

しかし、それらのがれきに含有されている放射能についての政府の説明は極めて不透明かつ不確実であり、また、法的に見てダブルスタンダード状態といわざるをえない。また、がれきの広域処理を検討する環境省・災害廃棄物安全評価検討会は一貫して非公開で進められ、議事録さえもが公開されていない。

秘密のベールの陰で官僚と御用学者たちが何をたくらんでいるのかと、政府に対する市民の不信感はますますつのらざるを得ない。3・11以後のまずい対応が今でもつづけられていると考えざるを得ない。

以下に順を追って、放射能汚染がれきの広域処理の危険性について、および、がれきの適切な処理方法についての私たちの見解を具体的に述べる。

1.がれき処理には予防原則を

そもそも環境中における放射能の挙動や放射線の健康影響については本質的に不確実性が伴い、科学的に見て容易に答えが見つからない難問が山積している。国際的にみても、国際放射線防護委員会ICRPとローロッパ放射線リスク委員会ECRRの勧告には大きな開きがあり、どれが真実であるかを決めることができない不確実状態である。まして、日本の環境行政はこれまで放射能、放射線を旧科学技術庁管轄の問題として避けてきたがゆえに、この問題についての環境省官僚の未経験と無知があり、法的な整備も遅れている。

こうした状況で私たちすべての市民の安全安心を確保するためには、予防原則に則ったスタンスをとって、拙速を避けた対応をしなければならない。予防原則とはすでに生物多様性条約など多くの国際条約の根幹の柱として確定している、「重大な被害が想定される場合にあっては、科学的解明が不十分だということを予防的措置を取らないことの理由にしてはならない」という原則である。

すなわちこの原則を適用すれば、今回の拙速な広域がれき処理によって放射能汚染していない広範な地域に新たな放射能汚染をまねく可能性の指摘が科学的に論証不十分であったとしても、その可能性を完全に払しょくできない限りは、汚染地域から放射能汚染がれきを搬出したり焼却処分したりするべきではないことになる。また、本質的に不確実性を伴う放射性物質については移動拡散するべきではないというのが国際的な合意であり、原則でもある。これも予防原則から発した考え方である。

2. そもそもがれきは現地処理が可能である

がれきの総量は、環境省の推計によれば2,253万t(福島208万t、岩手476万t、宮城1,569万t)となっている。このうち岩手、宮城のがれき2.045万tの20%にあたる約400万tを広域処理とし、2014年末までに処理を終えることを目標に、全国の自治体に協力を要請してきた。

しかし、同じ環境省の資料によれば、可燃性のがれきは岩手で90万t、宮城で840万tとされているので、合計で930万tになる。このうち岩手の2009年度の可燃ごみ発生量は46万tであり、今回のがれき90万tは、わずかに2年分にすぎない。同様に宮城の2009年度可燃ごみ発生量の84万tと比べると、今回のがれき840万tは10年分に相当する。しかし、宮城の市町村別内訳をみると、石巻市の可燃性がれきが470万t、東松島市が130万tとダントツに多く、この2市を除けば240万tとなりわずかに3年分にすぎないことがわかる。

一方、阪神淡路大震災での兵庫県の試算によれば、発生した2000万tのがれきのうち、1200万tが可燃性がれきだったとされている。臨海部の空き地に臨時の焼却炉を並べて、わずかに1年半で80%の焼却処理を行ったといわれている。しかし、これについては別なデータがある。神戸市が推定しなおしたがれき発生量は、木質系465万t、コンクリート系328万tであり、15基の仮設連続炉及び既設炉によって、最終実績木質系460万tを処理したというものである(島岡・山本編「廃棄物資源循環学会シリーズ3 災害廃棄物」(中央法規))。

この二つの情報のくい違いは、廃棄物総量の推計のむずかしさを物語るもので、今回の震災がれき総量の推計もそれほど確かなものではないことを示唆している。

さらに、このくい違いのいずれが正しいにしろ、神戸並みの準備をすれば石巻と東松島の600万tをどこかの空き地に集めて処理することは可能であろう。地図を見れば石巻と東松島は隣同士であり、東松島には広大な空き地がある。航空自衛隊松島基地である。ここを仮置き場とすれば、神戸並みのがれき処理はいとも簡単であるはずである。

3. がれきの輸送は税金の無駄使いでありエネルギーの浪費と温暖化ガスの放出ももたらし、なおかつ錬金術のにおいがする

がれきの処理費用は、宮城岩手の現地で行えば1トン約2万円ほど、広域処理のために輸送すると5~6万円と試算されているようであるが、まさに税金の無駄使いに他ならない。同時にガソリン・軽油(トラック又は船)や電気(貨車輸送)の無駄使いであり、CO2などの温暖化ガス放出も伴う。

岩手県岩泉町長談話にみるように、地元で雇用を生みながらゆっくりと片づけたいという自治体もある。

こうした客観条件を無視して強行されようとしている広域処理とは、何のために、だれのために行われようとしているのだろうか。

東京都が引き受けたがれきを焼却している臨界サポートセンターという処理業者は、東京電力95%出資の子会社だとの情報もあり、またしても原子力ムラの錬金術が絡んでいるのではないかとの疑いも持たざるを得ない。

4. 放射性物質処分方法に関する政府の基準はダブルスタンダードである

原子炉等規制法の改正によって100Bq/kg以下の放射性物質は普通のごみとして処理されることとなってしまっている。このことの是非はともかくとして、このクリアランスルールからすれば100Bq/kgを超える物質は放射性物質として厳重に管理されなければならないはずである。

しかるに、2011年6月3日付原子力安全委員会「当面の考え方」によって、8000Bq/kg以下の物質(焼却灰や下水汚泥など)は管理型処分場に埋め立て処分してよいとされている。また、240Bq/kg(流動床型の場合は480Bq/kg)以下のがれきは、焼却処分してもよいとしている。 さらには、8000Bq/kg以上10万Bq/kg以下の物質さえも、何らかの遮水対策をとれば、管理型処分場への埋め立てを認めている。

まさに重大なダブルスタンダード状態であり、そのギャップは2~3ケタもの乖離があり、どさくさに紛れた苦し紛れの方策に終始している政府の実情を反映している。さらに、放射能汚染に対して国民の生命を守るべき政府の背信行為であり、未曽有の放射能汚染に対する無為無策を象徴する事態と言わなければならない。

5. 管理型処分場は放射性セシウムを閉じ込めることができない

国立環境研究所の報告によれば、がれきを焼却した時に発生する飛灰中でセシウムは塩化物として存在し、極めて容易に水に溶けることがわかっている。しかも管理型最終処分場の水処理装置である活性汚泥法や凝集沈殿法、さらには活性炭吸着法やキレート樹脂吸着法ではセシウムを除去できないことが確認されている。

このような事実を前にして、8000Bq/kg以下の焼却灰を管理型処分場に埋めることは無謀の極みと言わざるを得ない。すでに汚染した焼却灰を埋め立てた伊勢崎市や草津町の管理型最終処分場では、浸出水を処理した排水から最大200Bq/kgを超える放射性セシウムが検出されている。

6. 放射能汚染がれきの焼却処分の安全性が確認されていない

(ア) 調査方法さえ不確実である
がれきをいち早く受け入れた島田市の焼却試験は噴飯ものであった。受け入れた東北のがれきに6倍量の一般廃棄物を混合して、その放射性セシウム含有量はCs-137が5Bq/kg(検出限界4Bq/kg)、Cs-134がNDであった。そもそもそんなものを燃やして実験になると考えたのだろうか。最低でも100Bq/kg程度でやらなければ、実験にはならない。まして、様々な形状や大きさの物質が入り混じったがれきから、その平均値となる放射性セシウムを測定するためには、測定サンプルの調製そのものに大きな困難が伴う。なにしろ測定するのはわずかに1kgのサンプルにすぎない。それが全体の平均となるようなサンプルを得ることはほとんど不可能に近いであろう。まして、その測定値が検出限界ギリギリの5Bq/kg(検出限界4Bq/kg)というのは、ほとんどあてにならない数値である。こういう実験をして、恥ずかしげもなく公開してはばからない人々は、科学者でも技術者でもない。

さらに、「野積みされたがれきの山を重機で撹拌などをして均一にし、10ポイント以上を種類別にサンプリングする」ことを指示している環境省の「東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理の推進に係るガイドライン」も現実離れしている。島田市の実験に限らず、環境省資料に示されている岩手県宮古市や陸前高田のがれき中放射能濃度調査結果や、成分別の放射能濃度測定結果も科学実験としてはお粗末であり、同時にがれき中放射能濃度測定の難しさを示すものとなっている。

(イ) バグフィルターの放射能除去能力の信頼性はまだ不十分である
バグフィルターは本来セシウムのような放射性物質の除去を想定していない。週刊金曜日が行った主要なバグフィルターメーカー13社へのアンケート調査では、放射性セシウムが除去できると回答したところは皆無であった。想定もしていなければ、実験もしていないのであれば、当然の回答ではある。

バグフィルターの原理や、セシウムの挙動、バグフィルターの前で200度まで排ガスが冷却されることなどを勘案すれば、かなりの除去率が期待されるが、それは排ガスの安全性を保障するものではない。環境省はがれきを焼却しても99.9%の放射性物質はバグフィルターで回収できるとしているが、その根拠となったのは福島市荒川クリーンセンターでの実験だけである。

同じレポートで須賀川市での実験結果も報告されているが、ここはバグフィルターでなく電気集塵機EPであるために、排ガス中に放射能が漏れていることが示されている。

新品のバグフィルターは、排煙の中の浮遊粒子で目詰まりするまでは大きな粒子でも通過することはよく知られている。目詰まりしていくにつれて微小粒子の捕捉能力も上がっていくが、やがて目詰まり過ぎて排ガスの透過速度が落ちると、袋をたたいて飛灰を落として、目詰まりを除く操作をする。目詰まり過ぎてフィルターが圧力で破れることを防止するための非常用のベントが設置されているケースも考えられる。

バグフィルターによる放射性セシウムの除去性能を実証するためには、こうした運転上の諸条件を明示しつつ、フェアな条件で実験が行われなければならない。また、製造メーカーや、それを設置しているごみ焼却工場の違いについても検討しておく必要がある。
以上のことを実証して公開することもなく、がれき焼却を地方自治体に押しつけるやり方は到底認めがたい。

ウ)排煙の放射性セシウム濃度目安が高すぎる
驚くべきことに、排煙の放射性セシウム濃度目安は、Cs-134が20Bq/m3、Cs-137が30Bq/m3である。その根拠は、「実用発電用原子炉の設置、運転などに関する規則(昭和53年通産省令77号)の規定に基づく線量限度などを定める告示」というカビの生えたような古い告示が持ち出されている。こんなに高い基準(環境省資料「災害廃棄物広域処理」では目安)なら、いい加減な集塵装置でもクリアできるであろう。そもそも目標としている排ガス処理目標値が高すぎるのである。

7. 災害がれきに含まれるのは放射能だけではない

災害がれきには様々な有毒成分が含まれている。木材の腐食防止に使われてきたCCA液にはクロムや銅やヒ素が高濃度で含有されている。農薬や肥料などが散乱している。アスベストも確実に混入している。PCBなどの有毒物質も混入している可能性が高い。塩水起源の塩素は、焼却した時にダイオキシンの原料となる。気仙沼などでは石油タンクが炎上したことによって生成した有害化合物が含まれている可能性が高い。
このことについてアメリカの国立環境健康科学研究所(NIEHS)がPRTRのデ-タベースを引用して論文を発表していることも付記しておきたい。

8. 引き受けるべきはがれきではなくて子供である

被災地を支援し、復興の後押しをしようという志は大切である。しかし、それは放射能で汚染されているがれきを引き受けることではない。以下に、当東海ネットが本年2月に発表した放射能汚染地域の子供たちの長期保養計画について再提案を行う。
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