本エントリは「脱原発を掲げた新党結成現象は政治革新の原動力になりうるか? ――私は否定的です。」(2012年1月17日付)の続きということになります。

文化人類学者の中沢新一氏を代表とする新環境政党「グリーンアクティブ」の結成がメディアで話題になっています。

中沢氏ら、脱原発運動で広く連携(中日新聞 2012年2月12日)

文化人類学者の中沢新一氏らが設立を目指してきた脱原発などを目指す運動組織の名称は「グリーンアクティブ」となり、中沢氏が代表を務める。環境政党を志向する政治団体や、地域社会の再興を目指す部門など四つの活動体を置き、従来の政党の枠組みを超えた幅広い運動を目指す。週明けに正式発表する。

中沢氏は昨秋、日本の社会や価値観の転換を目指し、欧米の「緑の党」のような政治団体を設立すると表明していた。ただ既存政党の枠組みだけでは「震災後に突きつけられた価値観の転換や新しい勢力を広く集められない」(中沢氏)と考え、さまざまな人たちの思想や行動を緩やかに束ねるネットワーク体結成へと方向転換した。

中沢氏以外では、社会学者の宮台真司氏、思想家の内田樹氏、タレントのいとうせいこう氏、コピーライターのマエキタミヤコ氏らが参加する。

四つの活動体のうち、政治部門として「緑の日本」(政治団体登録済み)を設置。脱原発や消費税増税反対、環太平洋連携協定(TPP)反対などの政策を軸に、外国の「緑の党」とは異なる日本の自然観を重視した環境政党を目指す。

次期衆院選に独自候補は擁立しない方針だが、理念に賛同する議員や立候補者には支援を示すマークの「グリーンシール」を与える。

以下は、そうしたメディア報道に対する私の感想です。

橋下徹(大阪市長)の違憲、違法、不当、かつ言語道断な業務命令「アンケート」の強要が問題になっていますが、新環境政党「グリーンアクティブ」(中沢新一代表)のメンバーのひとりの社会学者の宮台真司氏は少し前にその知事時代の橋下徹にエールを送っていたようです。

■宮台真司が橋下知事を賛辞
http://www.nicovideo.jp/watch/sm8664888

橋下徹にエール、といえば最近の環境エネルギー政策研究所長の飯田哲也氏のやはり橋下徹へのエールをすぐに思い出します。飯田氏はTwitterで橋下徹に次のようなエールを送っていました。

橋下徹大阪市長(@t_ishin)を囲む企画の朝生(1/27)をiphoneへの録画で見る。批判サイドが抽象論・形式論・重箱のスミ論に留まっていたのに対し、政策の実質・実現などリアルを問い続ける橋下市長の独壇場。問題意識とアプローチが飯田も全く同じで共感(2012年1月31日)。

上記のような橋下ポピュリズム政治、独裁政治の実態を見れば、なんとも浅はかな橋下エールだと思わないわけにはいきませんが、この程度の人が脱原発の旗振り役、脱原発運動の雄とみなされていた(現にいまもみなされている)のかと思うと、私たちの国の市民運動の浅さ、浅はかさ、すなわち見る目のなさということも含めてさらに情けない思いは倍増します。

さて、その飯田氏に思想的に近いところに位置しているのがタレントのいとうせいこう氏やコピーライターのマエキタミヤコ氏だということになるでしょう。同じ政党を創ろうとしているわけですから(飯田氏はこの「グリーンアクティブ」新党構想にかんではいないようですが)思想的に近いところにいるのは当然だとしても、これまでもなにかにつけてさまざまなイベントをともにすることが多かったように記憶しています。いとう氏やマエキタ氏の橋下観、あるいはみんなの党観を聞いてみたいものです。飯田氏の思想と同じような結果が出るのではないか、と私はひそかに睨んでいます。

逆に本来思想的に遠い関係にあるはずなのに近しいのは如何、というのが中沢新一氏と内田樹氏の関係に関する大田俊寛氏(宗教学。埼玉大学非常勤講師)の指摘です。大田氏は2人の関係について次のように言います。「中沢さんの言説には隠された『反ユダヤ主義』という側面がある。一方、内田さんはユダヤ人の思想家レヴィナスの研究者として反ユダヤ主義についても研究している。その日本を代表する反ユダヤ主義の研究者が中沢さんの『日本の大転換』を読んでその反ユダヤ主義の論理の性質に気づかないのは奇妙なことだ。ましてやその運動に自ら協力するというのはまったく筋が通らないことである」。では、どうして「グリーンアクティブ」を中沢氏と内田氏は一緒に立ち上げようとしているのか? 「内田さんには実は『素朴なオカルティスト』という側面があり、それが中沢さんと共鳴している原因ではないか」というのが大田氏の中沢新一氏と内田樹氏の関係に関する分析です。

こうして見てくると「グリーンアクティブ」という新環境政党の航海前からの前途多難が予想されます。政治学者の後房雄氏(名古屋大学大学院法学研究科教授)の「顔ぶれを見る限り、あまり政治的リアリズムが好きじゃなさそうな人たちが多そうなので、仮に一時は盛り上がっても、定着するかどうかが問題です」という指摘がずいぶんリアルに聞こえてきます。後氏は環境政党の行く末について次のような懸念も表明しています。

80年代に、チェルノブイリ原発事故を経て、日本でも「危険な話」の広瀬隆現象が全国を席巻した時期に、たしか86年の参議院選挙だったと思いますが、調子に乗っていくつものエコロジー・グループが名簿を出して、結局一つも議席を獲得できず、運動自体もしぼんでしまったという前例があることを思い出します。(略)たしかに、緑は思想運動、社会運動という側面が強いですが、それらが持続して影響力を強めるためにも全国的政治勢力として確立できるかどうかが決定的だというのが国際的な教訓です。かつて、ローカル・パーティの連合体を作ろうという動きもありましたが、立ち消えになってしまいました。/それぞれが自分たちなりに運動できればそれでいいというような悪癖を越えて、政治的リアリズムに立った方針を打ち出せるリーダーが生まれるかどうかが注目されます。(現実的に言えば、国会議員5人の政党要件をクリアすることがカギだと思いますが、そういうことを考える人がいるでしょうかね。)

「グリーンアクティブ」の結成の問題については、堀田伸永さんの「脱原発世界会議USTREAM視聴の感想」という次のような指摘もご紹介しておきたいと思います。

次に気になったのは、14日のトークライブが中沢新一氏らの脱原発、環境政党の発足集会のようになっていたこと。/国会の衆参両院に現有議席を持ち、党首討論からは排除されているものの、諸派ではなく公党として、活動している、脱原発を掲げる日本共産党、社会民主党を押しのけてでも、といわんばかりの動きには辟易した。大手広告代理店出身のマエキタミヤコさんの暴走司会にはうんざりした。/日本共産党、社会民主党のこれまでの国会質疑には貴重なものがあり、いくら既成政党否定の人でも学ぶべきことは多くあると思う。

最後にこの件に関する私の論も紹介させていただこうと思います。基本的に紅林さんの論に賛成の立場から記事を書いています。

脱原発を掲げた新党結成現象は政治革新の原動力になりうるか? ――私は否定的です(弊ブログ 2012.01.17)
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