この議論は京都(パレスチナに平和を京都の会)の諸留能興さんの「やってはならない、ずさんな瓦礫処理」という小論のCML(市民のML)への転載から始まりました。そして、この議論は、すぐに放射能で汚染された福島からのいわゆる「避難の権利」の主張こそが絶対的な真理であるかのようにみなし、その他の立場を許さないいわばオール・オア・ナッシングというべき論に引き継がれることになりました。そういう論をここでは猪飼周平氏(一橋大学・社会学教員)の「原発震災に対する支援とは何か―福島第一原発事故から10ヶ月後の現状の整理」という論攷の指摘にならって「避難こそが『人道』に叶っていると考える傾向がある」という意味で一応「避難論」と呼んでおくことにします。

上記のふたつの論(「ずさんな瓦礫処理」論と「オール・オア・ナッシング」論)の視点は、〈避難〉、また〈震災がれきの自治体移動の禁止〉こそが「『人道』に叶っていると考える傾向がある」という点で共通しており、相補の関係にあるのですが、震災がれきの処理問題と避難の問題は必ずしも同じ問題とはいえません。そこでここでは問題の在り処の錯綜を避けるために左記の論を問題別に(1)と(2)に分けて論ずることにします。なお、本論は先に提起された論の反論の体をとっていますので、先に提起された論については煩瑣を避けるためにその論のURLを示すことに留め、私の反論を主体に書き留めることにします。

まず、京都の諸留能興さんの「やってはならない、ずさんな瓦礫処理」という小論に対する私の反論を先に書き留めておきます。

諸留さんの論:やってはならない、ずさんな瓦礫処理(CML 2012年2月6日)
http://list.jca.apc.org/public/cml/2012-February/014645.html

諸留さんの論に対する私の反論

諸留能興さん(パレスチナに平和を京都の会)のご論攷にはいつも学ばされるところが多く感謝するところ大なのですが、今回の放射性がれき処理問題に関する諸留さんのご意見には若干の異見があります。

ただし、諸留さんの次のようなご認識と問題意識には私も賛成します。

すなわち、「瓦礫問題のポイントは、焼却炉で瓦礫を燃やしても果たして本当に大丈夫なのか?という点です」という諸留さんの問題意識とご認識。また、「この問題を考える上で、ひとつのポイントとなる点は、『バグ・フィルター』の問題があります」という諸留さんの問題意識とご認識には私も賛成します。

しかし、放射性がれき処理の危険性を言うにあたっての諸留さんの「気化する温度である摂氏600度よりも低温の摂氏200度で焼却」しても「セシウム(Cs)の気化は完全には避けられない」「『バグフィルター』を使っても、気化状態のセシウム(Cs)は、全く素通りしてしまう」というご認識をはじめ4点にわたる放射性がれき処理の危険性の問題提起には必ずしも事実に基づかない誤認が含まれているように思えます。私は専門家ではありませんので専門家としての児玉龍彦氏(東大教授・東大アイソトープ総合センター長)の知見を援用させていただこうと思いますが、その児玉氏の知見を援用した上で下記の北神戸「9条の会」サイトの管理人さんは次のような見解を披露されています。

焼却で発生した排ガスは、そのままフィルターに行くのではなく、ダイオキシン類の再発生を抑制したりフィルターを保護するために、まずは重金属類の沸点よりずっと低い200℃まで冷却されるようです。それからそこに活性炭を吹き込んでこれらを吸着させたのち、フィルターを通して除去するそうです。それでも一部が気化してすり抜けてくる水銀などは、さらに排ガス洗浄装置で除くようです。/他にも、有害ガス類を除くための消石灰を吹き込むような工程もあるようです。/さらにこの活性炭での吸着率を高めるために、意図的に重金属類の化合物を作らせるという新たな方法もあるようです。/この工程が想定通り働くのであれば、フィルターに来る前に単体の気体ではなく、活性炭に吸着されているのでフィルターでキャッチできるという話になります。これが、児玉氏が解説していた事だと思います。

なお、上記にいう児玉氏の解説とは次のようなものです。

児玉龍彦氏に聞くと、排気中の放射線量の流量測定器を設置すればセシウム漏れをチェックでき、焼却炉の冷却金属除去システムと組み合わせ、HEPAフィルターをおいて飛灰の除去を徹底するとほぼセシウムは除けるそうだ。消却灰はコンテナにつめ人工バリア型処分場で長期間保管。希望の持てる話だ(金子勝氏のツイートより)

北神戸「9条の会」サイトの管理人さんは上記のことを述べた上で次のような提案をされています。

問題は、この想定通りにセシウムでも働くのか?でしょう。/これを誰もが納得できる形で実験して確かめる事が大事だと思います。/その結果、児玉氏の仰ることが事実だと確かめられれば、被災地にとっても、瓦礫を受け入れる側にしても朗報だと思います。/逆に、NGと分かれば、排ガスから分離する技術はどこで処理しようとも必要ですから、国をあげて研究する必要があります。

放射性がれき処理問題に関する私たちのスタンスのとり方としては上記のような態度こそ望ましい、と私は考えます。したがって、上記のような市民の態度、あるいは市民サイドの姿勢を「放射能に関する無知と非科学的神話への期待・盲信」(諸留さん)などと非難することもまったく当たらないことのように私は思います。

なお、上記と同様の考え方を私も下記で述べています。

■被災地がれきの各自治体の受け入れに反対するという論の「正しさ」について――青木泰さん(環境ジャーナリスト)の論への反論(弊ブログ 2012.01.26)

諸留さんの論に対する私の再反論

上記で私は京都の諸留能興さんの放射性がれき処理問題に関する所見について若干の異見を申し述べておきましたが、その私の異見に対して諸留さんから要旨次のような反論が届きました。

瓦礫焼却問題でも、フィルターがどうのこうのと技術論的なことを議論すること自体、問題の本質をそっちのけの些末な技術論争に参加する気はサラサラありません。/仮に、技術的には100%安全に瓦礫処理が可能だとしても本来、原発から排出された放射性物質はその本来の原発敷地内に戻すのが、当然ですから!/自治体やその自治体住民が「尻ぬぐい」させられること自体がそもそも間違っています。狂っています!(略)こういう考えこそ原子力ムラに群がる学者・技術屋集団の思考と全く同じ思考ですね!/科学技術論にだけ限定させ、責任の所在には一切触れない・・・という無責任さという点でもまさに原発を焼却場に置き換えただけでそっくり、共通してますね。ここまでくると、もう狂っているとしか思えません・・・(2012年2月8日付)

以下は、諸留さんのその反論に対する私の返信です。私信というよりも公の問題に関わっての論争というべきものですからこちらでもご紹介させていただこうと思います。

諸留さん

私は「些末な技術論争」をしようと思ってバグフィルターに関するあなたの論の私として誤認と思える部分を指摘したのではありません。

「本来、原発から排出された放射性物質はその本来の原発敷地内に戻すのが、当然」というあなたのご主張はご主張として(私はあなたのこのご主張には若干の保留はあるものの基本的には賛成です)、あなたの論の誤認として指摘されている部分について根拠のある反証ができないのであればその部分は自身の認識不足であった、と率直に認められるべきでしょう。

問われている問題以外の論点を持ち出して、誤認を含む自説を糊塗しようとする態度は、私には失礼ながら誠実な応対、また真実を追求しようとする者の態度、とは思われません。遺憾、と申し上げておきます。

がれきの処理の問題については、小出裕章氏も、「原発から排出された放射性物質はその本来の原発敷地内に戻すのが当然」という立場を貫かれながらも、「各自治体は現在の焼却施設にきちんと排気系統に放射能を補足できるようなフィルターなどを取りつけた上で焼くことは私は受け入れざるをえないと思っています」という指摘をされています(毎日放送「たね蒔きジャーナル」文字起こし ざまあみやがれい! 2011年12月22日)。

以下、上記の小出発言の該当部分を要約ご紹介しておきます。

もともと放射性物質というものを産業廃棄物処分場に埋めたりするということそのことがいけないことだったわけです。ただもうどうしようもない状況でもう国の方はそれぞれの自治体で勝手に燃やして勝手に埋めろと言ってるわけですけれどもどっちも正しくありません。いま現在の各自治体が持ってる焼却施設で燃やすようなことをすれば放射性物質が空気中に飛散してくる可能性が強いですし、埋めてしまえばもう取り返しがつきませんので、埋めてはいけません。ですから、私は、基本的には今の日本の国の指示にすべて反対です。

ですけれども、膨大にすでに存在してしまっている震災瓦礫をこのまま放置することはできないと私は思っています。いまのまま瓦礫を放置しておけば福島の子供たちに被曝がますます集中してしまうと思いますので、一番大切なことは福島現地に専用の焼却施設を早急に作ってそこで焼くということです。

但し、それだけではとうていもう間に合わない状況がありますので、私は各自治体で引き受けるべきだと実は言ってきています。但し、そのためには国が言っているようなやり方はダメで、現在の焼却施設にきちんと排気系統に放射能を補足できるようなフィルターなどを取りつける必要があります。その上で焼くことは私は受け入れざるをえないと思っています。しかし、出てくる焼却灰は各自治体で埋めてはいけません。

それはもともと福島第一原子力発電所の原子炉の中にあった東京電力のれっきとした所有物がいま汚染物として出てきているわけですから東京電力にお返しするのが筋です。これから福島第一原子力発電所の事故収束のために多くの石棺をつくったり地下に遮水壁を作ったりするために膨大なコンクリートが必要に なりますのでその原料に使って福島第一原子力発電所に持ち帰るというのがいいと思います。
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