取調べの可視化を求めるひとつの市民集会(主催:取調べの可視化を求める市民団体連絡会・共催:日本弁護士連合会)の案内をきっかけにしていわゆるリベラル・左翼の公開型メーリングリストのCML(市民のML)で取調べの可視化とそのバーター取引としての検察権限の拡大への危惧に関して以下のような応答がありました。

大切な問題提起を含む応答だと思います。応答の逆順でご紹介させていただこうと思います。はじめの応答が私のものです。

この問題に関する東本(ブログ筆者)の応答
(2011年11月29日):

日弁連には2009年度から始まった裁判員制度について、その前々年の2007年までは裁判員制度は取り調べの全過程の録音・録画の完全実施とセットでなければ決して認めないと言っていたにもかかわらず(私は直接に当時日弁連司法改革調査室顧問という肩書きを持っていた御仁からその主張を聞いています)、
その舌の根の乾かない翌年(実施の前年)の2008年になると同録音・録画の完全実施などまったく決まっていないにもかかわらず裁判員制度の予定通りの開始を積極的に呼びかける声明を発表し(上記の御仁の前年の主張をいとも簡単に覆す恥を知らない2008年度の主張も私は直接に聞いて知っています)、多くの単位弁護士会、また多くの個人としての弁護士の危惧、反対の声を押し切って裁判員制度推進に加担してしまったという前科があります。

今度の改めての日弁連などの取調べの可視化の主張が、その「取調べの可視化とバーター取引の検察権限の拡大」に加担するようなことになっては日弁連は前科2犯の常習犯、という謗りは免れないでしょう。

そのような視点を持ったシンポジウムであっていただきたいと私も思います。

この問題に関する前田朗氏(東京造形大学教員)の応答
(2011年11月29日):

前田 朗 です。
11月29日

「検察改革は 何をどう反省したのか」救援510号(2011年10月)を私のブログにアップしました。

http://maeda-akira.blogspot.com/2011/11/blog-post_28.html

取調べの可視 化は必要です。重要です。

しかし、現在 の可視化論には疑問もあります。

第1に、取調 べの可視化だけに焦点を絞り、代用監獄その他の問題を隠蔽しています。取調べの可視化によって重大人権侵害はなくなりません。

第2に、検察 が主導している取調べの可視化は、警察による無法な取り調べの規制につながりません。現在主張されている取調べの可視化によって冤罪はなくなりません。

第3に、検察 改革で進められているのは、取調べの可視化とバーター取引の検察権限の拡大です。現在主張されている取調べの可視化論によって、人権侵害はむしろ増える懸念すらあります。同様に、冤罪も形態を変えるだけに終わる懸念があります。

この問題に関する菊池氏(救援連絡センター)の応答
(2011年11月29日):

救援連絡センターの菊池です。「救援」などでも「可視化」を巡る危うさを訴えていますが、警察庁や法務省は「可視化」と引き替えに新たな捜査手法の検討に入り、すでに法制審も動き出し、日弁連の取り込みに入っています。「可視化」をするなら「自白偏重」の警察のこれまでの捜査方法を改めて、もっと証拠収集をやりやすくしなければ、治安対策が遅れるとして、これまでは人権侵害の恐れがあるとして取り上げられてこなかった、司法取引やおとり捜査、黙秘権制限などのあらゆる捜査手法が一気に実行されようとしています。すでに法制定なしに「GPS装着」や「DNA採取」などが現場では実践されています。「可視化」に反対ではありませんが、陪審員制度を要求する運動を逆手にとって、裁判員制度が作られたように、国家は我々の要求を利用して、より治安弾圧強化をねらってくることを阻止しなければもっと危険な状況になると思います。

この応答のきっかけとなった
松浦亮輔氏(監獄人権センター)のメール(2011年11月29日):

みなさま

 いつもお世話になっております。監獄人権センターの松浦です。
取調べの可視化に関するイベントのご案内をお送りいたします。

よろしくお願いいたします。

***

【転送転載・歓迎】
□■□ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
12月7日(水)
取調べの可視化を求める市民集会

なぜ、無実の人が『自白』をしてしまうのか
~取調べの全過程の録画が必要なワケ~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □■□

相次ぐ冤罪事件の無罪判決により、捜査機関の密室での無理な取調べが明らかになっています。取調べの可視化を導入すべきという声は高まっていますが、依然として、取調べの全過程の録画によって取調べの機能が低下し、供述を得にくくなるといった主張が捜査機関を中心に根強くあります。

また、「罪を犯していないのに自白するわけがない」という意見も、いまだによく聞かれます。

今回は、自白の心理を研究し、『証言の心理学』(中公新書)の著者である高木広太郎さん、布川事件の冤罪被害者であるの桜井昌司さんなどをお招きし、無実の人が自白する過程や背景を考えながら議論していきます。

ふるってご参加ください。

■日時: 12月7日(水) 19:00~20:30 (開場 18:30)
■会場: 弁護士会館2階講堂クレオ
      
http://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/organization/map.html
      東京都千代田区霞が関1-1-3
      地下鉄丸の内/日比谷/千代田線「霞が関」駅 B1-b 徒歩1分
      地下鉄有楽町線 「桜田門」駅(5番) 徒歩8分
■参加費:無料(事前申し込み不要)

□■□ プログラム ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

(1) 基調講演「自白の心理学-なぜ無実の人が『自白』をしてしまうのか」
  講師:高木光太郎さん(青山学院大学教授、法心理学)

(2) パネルディスカッション「取調べの可視化(全過程の録画)が必要なワケ」
  パネリスト
   高木光太郎さん
   桜井昌司さん(布川事件 冤罪被害者)
   青木和子さん(弁護士/布川事件弁護団/法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会委員)
   小坂井 久さん(弁護士/法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会幹事)
  コーディネーター
   若林 秀樹 氏(アムネスティ・インターナショナル日本事務局長)

主催:取調べの可視化を求める市民団体連絡会
【呼びかけ団体】アムネスティ・インターナショナル日本/監獄人権センター/日本国民救援会/ヒューマンライツ・ナウ
【構成団体】国際人権活動日本委員会/社団法人自由人権協会/人権と報道・連絡会/菅家さんを支える会・栃木/富山(氷見)冤罪国賠を支える会/フォーラム平和・人権・環境/名張毒ぶどう酒事件全国ネットワーク/袴田巖さんの再審を求める会/袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会/布川事件・桜井さん、杉山さんを守る会/無実のゴビンダさんを支える会/無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会

共催:日本弁護士連合会
共催予定:東京弁護士会/第一東京弁護士会/第二東京弁護士会
……………………………………………………………………………………………………
【お問合せ】
アムネスティ・インターナショナル日本 tel: 03-3518-6777
監獄人権センター tel: 03-5379-5055
日本国民救援会 tel: 03-5842-5842
 
追記;

上記の三者三信の応答を受けて監獄人権センターの松浦さんから下記のような応答(2011年11月30日)がありました。追記させていただこうと思います。

みなさま

 お世話になっております。監獄人権センター事務局の松浦です。
昨日ご案内を送らせていただいたイベントについて補足させていただきます。

今回のイベントは取調べの可視化を求める市民団体連絡会と弁護士会との共催で行います。
取調べの全過程の録音・録画を求めるもので、取調べ手法の高度化とのバーターの議論や一部過程の録音・録画などの現在の警察・検察主導の議論を支持するものではありません。

取調べ手法の高度化は本来可視化とは関係ない議論であることも当日触れていきたいと考えています。また、証拠開示の問題、代用監獄の問題性などについても合わせて考えて行くべきであると認識しています。

これまでの取調べの可視化を求める市民団体連絡会の意見書・声明は以下の通りです。

○取調べの全面可視化(全過程の録音・録画)の早期実現を求める要請書
http://www.cpr.jca.apc.org/archive/statement#1060

○新時代の刑事司法制度特別部会運営に関する意見書
http://www.cpr.jca.apc.org/archive/statement#1040

○私たち市民団体は、いまこそ取調べの可視化(全過程の録音・録画)を実現するよう日本政府に求めます。
http://www.cpr.jca.apc.org/archive/statement#1030

取調べの可視化を求める市民団体連絡会ができる以前の共同声明です。
○NGO共同声明 : 取調べの全面可視化を求める共同声明(アムネスティとの共同呼びかけの声明です)
http://www.cpr.jca.apc.org/archive/statement#980


取調べの可視化の必要性を訴えつつも、捜査手法の高度化などのご指摘の点についても引き続き注意しながら活動をしていきたいと考えております。
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