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はじめに個人的な体験から記します。

私は、先日の10月29日に大分市の大手公園(県庁横)であった「さよなら原発 おおいた集会&パレード」に一個人として参加しました。会場では集会に先立って「さよなら原発」(「翼をください」替え歌)など有志によるコーラスが披露されていましたが、その間私は同公園の片隅でしばしたばこを一服することがありました。そのとき、30歳代と思われる子どもを抱えた女性がそれを見つけて私を指差して10数メートル先のところから大声で「おじさん、たばこも放射能物質よ。(みんなも放射能に汚染するから)たばこを喫うのはやめなさい」と命令口調で怒鳴りました。自分は絶対に正義だ、という確信の声に満ち溢れていました。

私は彼女が「たばこも放射能物質よ」というその物質がポロニウムという物質であること。また、そのポロニウムがたばこに微量含まれることから「たばこは放射能物質」というデマゴギー(デマゴギーである所以はこれから述べていきます)が少なからず「拡散」していることを知っていましたから私も大声で「馬鹿なことを言うな」と怒鳴り返しましたが、もちろん怒鳴り合いでことが解決するはずはありません。彼女は集会の司会者にこのことを通報したらしく、司会者の「たばこはマナーを守って喫ってください」というアナウンスが会場に流れました。私は集会に集まっている人たちから20メートルほどは離れている公園の片隅で誰にも迷惑をかけずに一服していただけの話ですから「マナーを守って」などといわれる筋合いはありません。司会者のアナウンスは一般論として聞き流しました。しかし、もしかしたら、彼女は自分の主張が支持されたと主観的にひとり合点しているかもしれません。「たばこには放射能があるから(この会場では)喫ってはいけない」というアナウンスではなかったにもかかわらずです。

私がこのような個人的体験から書き出したのは、3・11以後の反原発運動の高まりの中で、正当でまっとうな反原発の論理と倫理の主張にまじって非論理かつデマゴギーというほかないたぐいの「放射能危険」説が少なからず横行しているように見受けられること。その実態をひとつの具体例として示しておきたかったからです。

もうひとつの例は先に私が指摘したクリストファー・バスビー氏の自己の主観に基づく強引な推論(邪推)でしかない非科学的な放射性がれきに関する発言でした。また、もうひとつの例として「国の暫定基準値の500Bq/Kgは全面核戦争時の食物の汚染上限」という「東北文教大松田浩平教授」のやはり「教授」という<俗権威>を笠に着たデマ情報を挙げることもできます。同情報がデマ情報でしかないことは、その反論を弊ブログにアップしておりませんのでここではご紹介できませんが、上記の「全面核戦争時の食物の汚染上限」というフレーズに着目すればそのデマゴギー性は自ずから明白になるものと思われます。

さて、「たばこ放射能」説を私が「デマゴギー」という理由を述べます。

第1。この「たばこ放射能」説をわが国で流布させるのに「貢献」したひとりにかつて『週刊金曜日』の編集者だった山中登志子氏がいますが、彼女はその論拠として「マイルドセブンに『ポロニウム』 JT『入っていないと言い切れません』」(My News Japan 2007年1月25日)という記事の中で「(ポロニウムがたばこに入っており)1日1~2箱喫煙で胸部レントゲン写真300枚分/年の被曝だ」とするニューヨーク・タイムズの記事(筆者はスタンフォード大学教授のRobert N. Proctor氏)を挙げています。

が、このRobert N. Proctor教授の説は「漂流地点報告」ブログの筆者によって「二年半毎日タバコ吸わないと被曝量はレントゲン一回分に達しません」と理論的に徹底的に論破されています。そして、この「漂流地点報告」ブログの筆者の見解は日本とヨーロッパの多くの科学者の支持を得ています(同上)。

「漂流地点報告」ブログの筆者の引く「喫煙者の実効線量評価―たばこに含まれる自然起源放射性核種―(放射線医学総合研究所 岩岡和輝、米原英典)」には「喫煙者の年間実効線量は0.19 mSv y^-1であり、ICRP.82の介入免除レベルである1 mSv y^-1よりも低い値であった」と記されています。「『介入の免除』とは、被爆による健康に対するリスクが大きくないため、介入を行う必要がないということです」。

すなわち、山中登志子氏がその流布に一役買ったアメリカ起源の「たばこ放射能」説は根拠のない妄説にすぎないものである、ということです。

第2。たばこの葉にポロニウム210が微量ながら蓄積されていることは研究者の誰もが認めている事実ですが、「その大部分は肥料に含まれている天然の放射性元素から生じたもの」(日経サイエンス  2011年4月号)です。また、その肥料は「リン酸肥料」(カリフォルニア大学ロサンゼルス校 Hrayr S. Karagueuzian氏)ということですから、そうであれば「リン酸」は一般に「窒素、リン酸、カリ」といわれる肥料の三大要素ですのでほとんどの作物は「リン酸」を肥料としていることからそのほとんどの作物にはまたポロニウム210も微量ながら蓄積されているということにもなります。たばこの葉だけが特別に矢面に立たされ弾劾されるいわれはまったくないといわなければならないでしょう。たばこの葉に放射能があるというのならばトマトにもピーマンにも、ほうれん草にも小松菜にも、しいたけ、にんじんにも放射能があるといわなければ筋はとおらないはずです。しかし、3・11以前のこととしてトマトやピーマンを食べて内部被曝をしたという話は聞いたことはありません。トマトやピーマンを食べても大丈夫ならばたばこを喫っても放射能の内部被曝という点では大丈夫という理屈にならなければ道理はとおりません。

第3。上述したカリフォルニア大学ロサンゼルス校のHrayr S. Karagueuzian氏の喫煙者の放射能内部被曝説として「喫煙者がタバコに含まれる放射性核種ポロニウム210を吸入してα線内部被ばくすることにより、肺癌の発症率が高まる」(ブロゴス 2011年09月29日)、また「常習的な喫煙者の20~25年間での被ばく量は40~50RADとなった。この被ばく量を、ラドンガスの長期被ばくによる肺癌発症リスクに関する米国環境保護庁(EPA)の概算値に基づいて評価すると、25年間での死亡率は1000分の120~138となる」(同左)という論が最近まことしやかに出回っていますが、第1で述べた「漂流地点報告」ブログの筆者の計算によれば「二年半毎日タバコ(を2箱)吸わないと被曝量はレントゲン一回分に達しません」ということですからその計算に従えば「常習的な喫煙者の20~25年間での被ばく量は」25年間÷2.5年=レントゲン10回分の放射線被曝量にしかなりません。そのレントゲン10回程度の被曝で「死亡率は1000分の120~138となる」ということであるならば、少なくとも10人のうち1人はレントゲン10回程度の検査で死ななければならないという勘定になるわけで、こんな話が通用するならばレントゲンを使用する医者たる者はすべからく廃業に追い込まれざるをえないでしょう。

以上のことに加えてここでは「たばこ肺がん主因」説に対する養老孟司氏の次のような反論も紹介しておきたいと思います。

■過去に例のない大増税、罰則付き法規制が向かう先は「ファッショ社会」か
異論を許さぬ空気を醸成する「禁煙運動」という危うい社会実験(養老孟司 「SAPIO」(小学館)2011年9月14日号)
http://www.pipeclub-jpn.org/column/image/clm_87.pdf

「たばこは健康に悪いかもしれないが、肺がんの主因であるかどうかについては疑問がある。現実に、日本の喫煙率は下がり続けているのにもかかわらず、肺がんの発生率は上昇する一方である。」

「副流煙の問題だというかもしれないが、世界で初めて副流煙の害を唱えたのは元国立がんセンター疫学部長の平山雄氏で、彼の疫学調査には多くの疑問が寄せられ、特に副流煙の害については問題外とされている。」

*平山雄氏の論文を含めて副流煙の害に関する「副流煙の害については問題外」とする養老孟司の指摘の根拠のいくつかは下記の論攷にも示されています。

■受動喫煙問題を再検証する(川原遊酔 2011年4月)
http://www.pipeclub-jpn.org/cigarette/cigarette_detail_34.html
■受動喫煙の疫学の問題点(川原遊酔 2008年3月)
http://www.pipeclub-jpn.org/cigarette/cigarette_detail_17.html
■死亡率は100%(川原遊酔 2007年8月上旬)
http://www.pipeclub-jpn.org/cigarette/cigarette_detail_05.html

以上、私が「たばこ放射能」説をデマゴギーと考えるその一端について述べてみました。

反原発運動の理念と「たばこ放射能」説は決して相容れるものではないと私は考えます。
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