脱(反)原発運動の情報発信に熱心な京都の内富さんが、集英社OBで、在籍時代は『週刊プレイボーイ』の編集長などを歴任し、現在はウェブ紙の『マガジン9』の編集と同紙で「時々お散歩日記」という反原発エッセーを連載している鈴木耕氏の「自滅する国家 自壊するマスメディア」(同連載)という論攷を「まったく同感です!」というコメントを付してCMLというメーリングリストに投稿されています。

■【まったく同感です!】 「自滅する国家 自壊するマスメディア - 鈴木耕」(CML 2011年9月15日
■鈴木耕氏の論攷「自滅する国家 自壊するマスメディア」(マガジン9「時々お散歩日記61 2011年9月14日

下記はその内富さんのコメント及びそこで紹介されている鈴木耕氏の論攷に対する私の違和の表明です。私として重要な視点の提起と思っていますので本ブログにも再掲しておきます。

内富さん

脱(反)原発運動に関する丁寧なフォロー記事をいつもありがとうございます。

が、今回の標題記事「【まったく同感です!】『自滅する国家 自壊するマスメディア - 鈴木耕』」には私には少しばかり異議があります。

内富さんが「まったく同感です!」と言うからには、下記の鈴木耕氏の論中の「電力会社の地域独占体制を解体し、発送電分離による一層の電力自由化を実現しなければ、この国のエネルギー政策、つまり原子力政策を抜本的に改革することはできない」という認識、また「鉢呂氏の『脱原発』志向」云々という認識にも「まったく同感」ということだと思いますが、鈴木耕氏のこの認識、さらには鈴木耕氏のその認識に「同感」だという内富さんのご認識には私は賛成しがたいものを感じます。

そのことについて若干のことを述べさせていただきます。

第1に「電力会社の地域独占体制の解体、発送電分離による電力自由化の実現」=「原子力政策の抜本的改革」とする鈴木氏の認識および内富さんのご認識の問題点についてです。

この点について第一に指摘しておきたいことは「発電送電自由化実現」と「脱原発」が直接リンクするわけではない、ということです。

菅元首相は電力会社の発電部門と送電部門の分離案について「自然エネルギーを大きく受け入れるとき必要な体制について、今後のエネルギー基本計画を考える中で当然議論が及ぶだろうし、そうすべきだ」(東京新聞 2011年5月19日)と言及したことがあり、この菅元首相の発電部門と送電部門の分離案についての言及をあたかも「脱原発」主張のようにもてはやす風潮が当時(といっても、ほんの3か月ほど前のこと)一部の脱(反)原発論者の中に生まれたことがありましたが(現にいまもあります。その「いま」の主張のひとつがいうまでもなく鈴木耕氏の論です)、そのとき同時に菅氏は原子力発電について「より安全な活用の仕方がきちっと見いだせるなら、原子力をさらに活用していく」とも述べ、原発推進の立場を明確にしてもいます。このことははからずも「発電送電自由化実現」と「脱原発」が直接リンクするわけではないことのひとつの例証になっているといえるでしょう。

札幌の松本さんが紹介されていた(CML)柄谷行人はその「反原発デモが日本を変える」という『週刊読書人』のロングインタビュー(2011年6月17日付)の中で次のように語っていました。鈴木氏の論にはその柄谷の言葉も対置しておきたいと思います。

編集者:脱原発の動きについては、そのひとつの試みとして、ソフトバンクの孫正義さんが提案している案(大規模な太陽光発電所の建設など)も、最近注目を集めています。

柄谷:ぼくは信用しない。自然エネルギーの活用というような人たちは、新たな金儲けを考えているだけですね。エコ・ビジネスの一環です。(略)日本では、太陽光発電そのものが環境破壊となる(引用者注1)。そんなものは、いらない。現在のところ、天然ガスで十分です。それなら日本の沿岸にも無尽蔵にある(引用者注2)。要するに、先ず原発を止める。それからゆっくり考えればいいんです。

引用者注1:太陽光発電が環境破壊につながるひとつの例証が下記にあります。
http://ank-therapy.net/archives/1519927.html
引用者注2:
下記も天然ガスが日本の沿岸にも無尽蔵にあるひとつの例証(東京都の例)になっています。
http://www.inosenaoki.com/blog/2011/09/post.html


また柄谷は、そのロングインタビューで、電力会社の発電部門と送電部門の分離案についていう民主党について次のような評価を述べています。

早い話が、東電の労組は原発支持ですね。労働組合に支持された民主党も、原発支持です。こんな連中がデモをやるはずがない。

事実、週刊誌「AERA」(2011年4月25日号)の報じるところによれば、「民主党は東京電力の『電力総連』という労組から合計8740万円もの献金を受けて」います。その内訳は、「小林正夫議員4000万円、藤原正司議員3300万円、中山義活議員700万円、吉田治議員700万円、川端達夫議員30万円、近藤洋介議員10万円」。左記の5人の民主党議員のうちの2人は小沢派(藤原、吉田)、3人は鳩山派(小林、中山、川端)です。また、民主党の最高顧問で、菅派の大黒柱のひとりの江田五月も電力総連の推薦を受けて参議院議員に当選しています(女性セブン 2011年4月28日号)。

このような政党に真に脱原発を主張できる道理がない、と私は思います。

第2に鈴木氏の「鉢呂氏の『脱原発』志向」云々という認識についてです。

鉢呂元経産相はたしかに「6日の閣議後の記者会見で、国内の原発の在り方について『野田佳彦首相の発言からいけば、ゼロになる」と述べ、将来的に原発をゼロにする方向を明言」(産経新聞 2011年9月6日)していますが、それはあくまでも「新しいものは造らない」というものでしかなく、ストレステストの1次評価しだいでは原発の再稼働もありえることも同時に明言しています(時事通信 2011年9月5日)。これを「鉢呂氏の『脱原発』志向」と評価することはできません。

野田首相自身が首相として初めて臨んだ記者会見で「定期検査で停止中の原発については、ストレステストの実施と地元自治体の理解を前提に、再稼働を進めたい」(J-CASTニュース 2011年9月2日)と明言しているわけですから所轄大臣として当然といえば当然の認識の表明ともいえますが、鉢呂氏は決して「『脱原発』志向」の人とはいえないでしょう。

内富さんのこうした認識がCMLをはじめとする脱(反)原発を主要なテーマとするメーリングリストに何の抵抗もなくふつうに流通することに私として危惧を感じますので一言申し上げることにしました。
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