キョウ うたかいはじめ
宮中歌会始

Blog「みずき」:内野光子さん(歌人、短歌評論家)が昨年8月に雑誌『ユリイカ』に寄稿した「『歌会始』を通して考える『天皇制』」という論をご自身のブログに転載されています。 内野さんはすでに一昨年の12月に同趣旨の論をご自身のブログに掲載していますが、『ユリイカ』論考は同論をさらに発展、展開させたものといえるでしょう。全文は内野さんのブログに当たっていただきたいと思いますが、長文につきここでは現在の歌会始の選者の一人の今野寿美が赤旗歌壇の選者になった経緯について触れているパラグラフのみをご紹介させていただくことにします。内野さんの共産党、赤旗批判の要旨がおわかりいただけるものと思います。重要な指摘だと私は思います。

『こうした歌壇の大きな流れのなかで、私は、最近、一つの事件に遭遇した。それに連なるもろもろのことに共通して見えてくるものは、やはり国家権力の文芸への介入を受忍する、民主主義の衰退であった。二〇一五年一二月、現在の歌会始選者の一人今野寿美が二〇一六年から『赤旗』の歌壇選者になるという記事であった(『赤旗』12月28日)。今野寿美の思想の自由、『赤旗』の編集の自由だといって、片づけられる問題なのだろうか。今野の選者としての歌会始の自身の作品と『赤旗』歌壇の選歌の結果を比べてみてほしい。明らかにダブルスタンダード的な要素が伺える。『赤旗』歌壇の選者を務めたことのある歌人の「なんかおかしい、今野さんの選歌は、明らかに『赤旗』におもねすぎている」との感想は聞いていたが、この件についての論評は、今のところ見当たらない。だが、これには、前触れがあった。一九四七年以来、七〇年近きにわたって、「玉座」から天皇の「おことば」が述べられている国会開会式には参加していなかった日本共産党が、二〇一五年のクリスマス・イブに、二〇一六年の通常国会から出席すると発表したのだった。そのために開かれた記者会見の模様を、『赤旗』より詳しく報道したのが『産経新聞』であった(一二月二五日)。「共産党、国会開会式に出席へ 天皇陛下御臨席に反対方針を転換「アレルギー」払拭へ」の見出しで、共産党は安全保障関連法の廃止を求める野党連立政権「国民連合政府」構想を提案しており、従来の対応を変えることで他党に根強い「共産党アレルギー」を払拭する狙いがあるとみられる、と報じた。ちなみに、「朝日新聞デジタル(12月24日12時49分)」では、「共産党が通常国会開会式へ 党として初、野党と同調」の見出しで、これまで天皇陛下の出席を理由に欠席してきたが、方針を転換した。開会式に出ている他の野党と足並みをそろえることで、来夏の参院選での共闘へ環境を整える狙いがある、とした。

さらにさかのぼれば、二〇〇四年の新綱領、昨二〇一五年一〇月の「日米安保条約廃案一時凍結」の発表で、野党共闘、アレルギー払拭をめざし、一枚一枚、たけのこのように、皮をはいで行って、残るものは何なのだろう。そういう流れのなかで、一見、寛容で、ウイングを広げたかのような『赤旗』紙面への著名歌人の登場、歌会始選者の『赤旗』歌壇への起用であったのである。だが、一方、歌人に限らず、いささかでも異を唱える者の排除や無視という非民主的な要素、開かれた議論の場を想定しがたい状況が、蔓延しているのではないかが懸念される。思想の自由、表現の自由を守ることの難しさを痛感するのである。歌壇に限って言えば、そんな風潮を早くよりキャッチし、警鐘を鳴らし続けている歌人もいる。そして、二〇一六年の年末になって、佐藤通雅は、拙著3冊をあげて「果敢にタブーに踏み込んだこれだけの作業を、見て見ぬふりをいいのかと義憤の念にかられて、私はいくつかの文章を書いてきた」との論考が発表された。拙著で述べた「天皇・皇后の被災地訪問は、政府や企業あるいは自治体の被災地・被災者対策の不備を補完する役割」とすることについて、佐藤は、「補完の域を脱した、内部からの抵抗を感じることが何度もある」「為政者への無言の異議申し立て」であると、私の考えとの違いをも踏まえ、「いずれにしても、選者になったとたん黙して語らないのも、周りが見て見ぬふりをするのも不健全にはかわりはない。タブーはもう脱ぎ捨てて、さまざまな角度から意見を出し合い、問題を共有していくことを私は望んでいる」と結論付けた(「歌の遠近術12短歌と天皇制への視点」『短歌往来』二〇一五年一二月)。しがらみのない、インターネットの世界から巣立つ歌人たちにも、ぜひ、歴史から学び、聖域やタブーをつくらない議論の場を構築し、こまやかな感性とゆたかな感情を大切にしてほしい、と願う。』


【山中人間話目次】
・「歌会始」を通して「天皇制」と「共産党の右傾化」問題を考える――内野光子さん(歌人、短歌評論家)
・辺野古移設――翁長知事、埋め立て承認処分「撤回」を初明言。しかし、「撤回」の時期は明言していない
・醍醐聰さん(東大名誉教授)の安倍夫人付き政府職員発のFAXは安倍首相退陣の決定的な証拠となるという指摘
・安倍首相夫人の昭恵氏のフェイスブック上の釈明文は「官僚の手になる代筆」という3人の論者の指摘
・フランスの左派系メディア『リベラシオン』の森友学園事件報道
・オバマケア代替法案撤回へ。2回目の大統領令の執行停止という2か所の裁判所での敗北に続くトランプ政権のさらなる窮地
・「パン屋」では美しくないのか。これが安倍内閣のめざす「美しい国」の道徳。ほんとうに「終わってる」としかいいようがない。
・永井荷風ノ散歩道 万年床の書斎兼寝室兼居間(写真7枚)
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