キョウ とらんぷ10

Blog「みずき」:今回の「今週の直言」では水島朝穂さん(早大教授・憲法学)は安倍流ダブルスピークと「無知の無知」の突破力ということについて述べています。「安倍流改憲論こそ、まさに「無知の無知」の突破力、ダブルスピークの真骨頂だろう」、と。そして、「今回の施政方針演説には、実は改憲の具体化への隠されたメッセージがあった。そのキーワードは「教育の無償化」である。1月27日の衆院予算委員会で、「日本維新の会」の議員が、「今年は教・育・無・償・化・を・は・じ・め・と・す・る・具・体・的・な・テ・ー・マ・に関し、国会の憲法審査会で前に一歩進めていくべきだ」と首相にエールを送っていた(NHKニュース1月27日15時55分)。要注意である」と水島さんは警告を発しています。まさに要注意です。

【「無知の無知」の突破力――安倍流ダブルスピーク】
「戦争は平和である」(WAR IS PEACE)。ジョージ・オーウェルの名著『1984年』(新庄哲夫訳、ハヤカワ文庫)――先週、米国で売り上げが急増したという――の「ニュースピーク」、すなわち「二重語法」(ダブルスピーク)である。他に、「自由は屈従である」(FREEDOM IS SLAVERY)、「無知は力である」(IGNORANCE IS STRENGTH)がある。二重語法の場合、人の印象を変えるために、相互に矛盾する意味をあわせ持つ言葉を堂々と用いてイメージ操作を行う。例えば、「平和省」という役所は戦争をすることが仕事である。隠したい本心や事実に気づかれぬよう、できるだけ美しい言葉にかえるなど、婉曲した表現を用いることなども含まれる。安倍首相の「ダブルスピーク」は「積極的平和主義」のほかにも枚挙に暇(いとま)はなく、最近では、首相は「テロ等準備罪の成立なくしてオリンピックの開催なし」ということを言い始めた(1月23日代表質問への答弁)。「テロ等準備罪」の本体は「共謀罪」である。刑法総論にもかかわる重大な問題であり、突然、これが前面に出てくるというのはいかにも不自然である。2013年9月のIOC総会で、オリンピック開催について演説した際、フクシマの「アンダー・コントロール」のほかに、「東京の安全と治安のよさ」を強調していた。これが五輪東京開催の決め手となったことからすれば、テロ対策のための新たな法的手当てがなければ五輪開催ができないという安倍首相の物言いには、IOC関係者からは「話が違う」と言われるだろう。(略)
>しかし、何よりも安倍流改憲論こそ、まさに「無知の無知」の突破力、ダブルスピークの真骨頂だろう。憲法96条先行改正など、安倍以前の自民党総裁・首相たちは言い出せなかった。法制局が違憲としてきた「集団的自衛権の行使」を合憲とする「7.1閣議決定」もまた、ダブルスピークの典型だろう。だが、今回の施政方針演説には、実は改憲の具体化への隠されたメッセージがあった。そのキーワードは「教育の無償化」である。演説の後半で、安倍首相は、「明治日本が、学制を定め、国民教育の理想を掲げたのは、今から140年余り前のことでした。それから70年余り。日本国憲法が普通教育の無償化を定め、小・中学校9年間の義務教育制度がスタートしました。本年は、その憲法施行から70年の節目であります」と述べた。これは来年の「明治150年」と「憲法施行70年」をリンクさせて、憲法26条2項の普通教育の無償化を、さらに高等教育まで広げるための憲法改正という主張の布石であるように思える。この演説で首相は、給付奨学金などの「成果」を得々と語り、直接は改憲の主張はしていない。演説の最後では、「憲法施行70年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、次なる70年に向かって、日本をどのような国にしていくのか。その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか。」と煽っているが、まだ一般的である。

ところが、『毎日新聞』1月11日付が伝えるように、首相は日本維新の会の憲法改正原案に盛り込まれた「教育無償化」を改憲項目として例示していた。維新の会は改正原案に「幼児期の教育から高・等・教・育・に・至・る・ま・で・無償とする」との条文を盛り込んだ。維新の会は義務教育以外の幼稚園や保育所、高校、大学、専門学校などの無償化を想定する。確かに国際人権規約( A規約)13条2項(c)は「高等教育は・・・無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとする」と定めているが、日本政府は留保している。給付型の奨学金も不十分で、かつ大学関係の予算は削られる一方である。それを大学までの無償化を憲法改正で導入する? 日頃、そのような冷たい対応をとっていた人が手のひらを返すように改憲賛成に向かうのは理解しがたい。「教育無償化は野党や国民の賛同も得やすいとの思惑がある」という意見にのり、首相は改憲項目の絞り込みに使えると判断したようである(略)。何がなんでも憲法改正をやりたいという、ここまできたか、「改憲症候群」である。そもそも教育予算に冷たい政治家が、法律改正で早期に可能にもかかわらず、こう言い出すのだろうか。「高等教育の無償化は憲法改正で」。これこそ究極のダブルスピークだろう。なお、1月27日の衆院予算委員会で、「日本維新の会」の議員が、「今年は教・育・無・償・化・を・は・じ・め・と・す・る・具・体・的・な・テ・ー・マ・に関し、国会の憲法審査会で前に一歩進めていくべきだ」と首相にエールを送っていた(NHKニュース1月27日15時55分)。要注意である。(
水島朝穂「今週の直言」2017年1月30日

【山中人間話目次】
・澤藤統一郎さんの「憲法日記」連続連載1400回に思う
・オバマを再評価するこの国のメディアと論壇なるものの言論の虚妄を突く太田昌国さんの鋭利な分析
・司法省トップ、大統領に反旗=国務省でも集団抗議へ トランプ、入国制限に反対した司法長官代行を解任
・青木冨貴子さん(元ニューズウィーク日本版ニューヨーク支局長)のトランプ論の危うさ。
・辺見庸講演会 まともなロジックに貫かれた誠実な話を聴くのは、最近では稀有なことになってしまった
・乗松聡子さんとブラウン大学名誉教授のスティーブ・ラブソンさんらがアムネスティ・インターナショナルに伝え働き掛けたことで、山城さんら早期釈放の国際的なキャンペーンが始動した
・乗松聡子さんの翁長知事訪米について「撤回せずに行ったら、工事再開を許したことに礼を言われるだけだ。すぐさま承認を撤回すべきだ」という指摘は重要です
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