キョウ 流砂

Blog「みずき」:「今日の言葉」は豊島耕一さん(佐賀大学名誉教授。自らのHPに公表している共産党員)の井上達夫さん(東大教授)の「護憲派の解釈改憲」論批判に即した「共産党の解釈改憲」論批判。これまで豊島さんの論には私の目から見て「右傾化」した視点のものが多く、私として肯えないものが少なくなくありましたが、今回の豊島さんの論は私として肯えるところ大です。これはまっとうさを維持する共産党員の論だということができるでしょう。その大概をご紹介させていただきます。

【修正主義的護憲派の解釈改憲は「大人の知恵」だというがほんとうか】
東大教授・
井上達夫氏による「憲法の涙」というタイトルの本がある.(略)この本は上のようにいろいろと矛盾を含み,また憲法から非戦のタガを外す危険な改憲論に他ならない.しかし冒頭で紹介した「護憲派の解釈改憲」論は,護憲派の一部への批判としては全く的中している.第一章から引用する.

〈原理主義派の欺瞞 — それはそれとして、このアンケートで私が注目したのは自衛隊を違憲だと答えた憲法学者のほぼ全員が、同時に、九条改正の必要がない、と答えていることですね。九条と自衛隊の存在が矛盾していて、九条は変える必要がない、正しい、と。つまりこれは、自衛隊を廃止せよということに論理的にはなりますよね。〉〈先ほど、修正主義的護憲派の欺瞞の話 — 自分たちも解釈改憲を採用しているのに、安倍政権の解釈改憲を非難しているのはおかしい、という話をしましたが、今度は原理主義的護憲派の欺瞞の話になります。これも前に言ったように、九条に照らして、自衛隊と日米安保が違憲であることは明白です。憲法解釈に関して、原理主義的護憲派が正いのは明らかなんです。彼らの欺瞞は — だからといって何もしない、ということ。自衛隊を廃止せよ、という運動もしていません。日米安保反対運動を国民的規模で組織しようという動きも、一九六〇年の安保反対運動の終焉以来ありません。いや、今回のように、専守防衛の枠を超えた自衛隊・安保強化の動きがあると、そこだけちょっと反対する。かつてのPKOのときみたいに。しかし、それだけですね。一般の読者には奇妙な立場に思えると思うのですが、彼らは、実際には、自衛隊と日米安保を容認しているんです。その便益も享受している。しかし、自衛隊と日米安保は「違憲だ、違憲だ」と一言い続けろ、と。そう違憲の烙印を押し続けることによって、自衛隊と安保を専守防衛の枠にとどめておけるから、と。専守防衛の自衛隊安保を合憲と言いくるめる修正主義的護憲派の解釈改憲は「大人の知恵」だという議論がありますが、原理主義的護憲派はさらに開き直っている。この「大人の知恵」を実現するには、自衛隊・安保自体が違憲だと若者的純真さを偽装して主張するほうが治政治的に一層効果的だ、「大人の知恵」が許す点で妥協するには一見「非妥協的」な違憲論から出発して交渉したほうが得策だとというわけです。〉

残念なことに,16日に発表された
共産党の決議案の自衛隊政策は,部分的であれ,まさしくこれに当てはまる.党綱領から自衛隊,安保に関する文章を短く引用したあと,次のように述べている.(略)引用部分の冒頭で「自衛隊が憲法違反」と断言しているが,それを廃止する方策については極めて間接的で,政権を取らないと出来ないかのようでもあり,井上氏の「自衛隊を廃止せよ,という運動もしていません」という指摘が当てはまることになる.しかも,「日本を取り巻く平和的環境が成熟」するのを待つかのような言い方は,政府・自民党の「日本を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増している」という軍拡のためのレトリックとウリ二つである.つまり暗に現在の「平和的環境」=「安全保障環境」は自衛隊廃止を出来る状況ではない,と認めているのである.自衛隊の存在自体がその,つまり平和的環境の阻害要因になっているという視点は,上の文章に関する限り全くない.もちろん,共産党もその一翼をになう平和運動一般は「自衛隊を廃止」の方向に貢献するのは間違いないし,「段階的」手続きも書いてあるので,井上氏が言うように「何もしない」わけではないと反論されるかも知れないが,それこそ極めて「段階的」,間接的であり,直接に自衛隊廃止を求める運動とは全くレベルが違う.より重大なのは,その後に,「急迫不正の主権侵害」の場合は「自衛隊を活用」することもある,と言う点だ.大規模災害の場合とまとめて書くという文章作法も乱暴だが,主権侵害のケースで隊員が手にするのは恐らくスコップではない.つまり自衛戦争も辞さず,と述べているのである(この種の発言はしばしば同党幹部の発言で繰り返されはしたが, 前回の大会決議にはこの記述はなかった).違憲の自衛隊だがその存在自体は容認するというのが消極的な「解釈改憲」とすれば,自衛戦争の容認はむしろ積極的な「解釈改憲」と言わなければならない.同党が,あるいは護憲派の多くが自衛隊違憲論や廃止論を前面に出さないのは,いうまでもなくそれどころではない,「集団的自衛権」や紛争地への自衛隊派遣という深刻な事態があるからで,それを食い止めるのが先決,と考えるからだろう.政治的共同戦線を組もうとするとき,「一致できる妥協点」によらなければなならい,ということも理解できる.しかしだからと言って「原理主義」的主張をやめることは誤りだ.アジェンダの範囲を右へ右へと押しやり狭めるものであり,決定的なのは説得力を欠くということだ.(豊島 耕一「ペガサス・ブログ版」2016-11-21

【山中人間話目次】
・豊島耕一さん(佐賀大学名誉教授。自らのHPに公表している共産党員)の「共産党の解釈改憲」論批判
・澤藤統一郎さん(弁護士)の右翼の暴力に対して暴力行為等処罰ニ関スル法律第1条も活用して告訴すべきだという問題提起
・安倍政権の「駆けつけ警護」派遣政策なるものをこのままにしておくことは私たちも「人殺し」に加担するということにならないか
・森川文人さん(弁護士)の『決してデモに参加しない人にとっての「表現の自由」「国民主権」』という論
・新自由主義路線とはなんだったか。30年前の中曽根政権の「国鉄」分割民営化のゆき着いた先
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