キョウ でんつう

Blog「みずき」:「今日の言葉」は朝日新聞の高橋純子記者の電通批判記事(おそらくこういう形でしか電通批判は書けないのでしょう)。高橋さんは現在は同紙の政治部次長をつとめる腕利きの記者です。売れっ子記者と言ってもよいかもしれません。なかなか読ませる記事を書きます。今回も「女子力」のある記事を書いて読ませます。なお、ひとこと。高橋記者は男性が使う「女子力」という言葉は嫌いなようですが、それを知って私はわざと尊敬半分、批判気分半分という意味で「女子力」という言葉を使っています。また、「批判気分」と書いているのは、批判するまでには私は彼女の思想の正体をつかみきれていませんが、なんとなくその思想の中途半端さが気にかかる、という程度の意味です。しかし、総体として私は高橋記者を評価しています。


【男たちよ。女を「女子力」という言葉でくくるな】
会社を出て家路につく。10月某日、つくづくツイてない一日だったとため息をつく。イヤミな同僚を思い出して脳内で毒づく。それにしても今日はやたら人が目につく。何事か。いま何時だ? 21時58分。ああ。ここは電通本社から駅までの道。新入社員の過労自殺、労災認定、22時の一斉消灯、本社出口の混雑。自死した彼女がこの光景を見たら、どう思うだろう。たぶん、悔しいよね。他人だけど、私も悔しいし。奥歯をかみしめタッタカ歩く。冷蔵庫にはホウレン草、子どもの夜食を作らねばならない。

すさまじい労働時間もさることながら、過労自殺の報に触れ胸がふさがれたのは何より「女子力」という言葉だ。「男性上司から女子力がないと言われる」。彼女はツイッターに、こんな書き込みをしていたという。女子力。女性が自分で使っている分には、ある種の諧謔を含んで自身を鼓舞する言葉となるが、男性に使われると物差しとなり、上司に使われると途方もない抑圧となる。パワハラとかセクハラとか、分かった気にはなりたくないから名札はつけない。ただただ、そう言われた時の、彼女の衝撃と絶望を思う。エントリーしていない試合のリングにいつの間にか上げられ、勝手に期待されたり批判されたりする。若い女性の生きづらさは、働きながら子どもを育てている人、とりわけ母親への抑圧とどこか似ていて、相互に絡み合っていると感じる。働きながら子育てして立派ね。でもやっぱり子どもにはお母さんがたっぷり愛情を注がないとね――。「あなたの育て方ひとつでお子さんの未来は変わります」。言う方は「可能性は無限大」ぐらいのつもりかもしれないが、言われた方にとっては脅しに近い響きを持つ。自分では頑張っているつもりでも、正しいのか間違っているのかわからない。「こうした方がいい」「それじゃだめだ」という人は多くいるが、「それでいいんだよ」と言ってくれる人は驚くほど少ない。どこまでいっても正解が見えず、出口はどこだと途方に暮れる感じ。そこに政治が、追い込みをかけてくる。

自民党が来年の通常国会に提出を予定する「家庭教育支援法案」(仮称)は、子に「生活のために必要な習慣を身に付けさせる」「国家及び社会の形成者として必要な資質が備わるようにする」などを基本理念におく。2007年には、政府の教育再生会議の中で一時、子育て提言を出す動きもあった。「保護者は子守唄を歌い、おっぱいをあげ、赤ちゃんの瞳をのぞく」安倍政権は女性が輝く社会、一億総活躍社会をうたう。施策はずらりと並び、数値目標は高らかに掲げられている。だけど輝くには、この社会の酸素はあまりに薄い。酸素濃度をあげ、誰もが息をしやすい社会をつくる、そのために政治はあるのではないか――しまった。ホウレン草がしなびている。根切りして水に差して、復活を待つ。(
高橋純子 朝日新聞 2016年11月13日

【山中人間話目次】
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(19)――総右傾化したニッポン社会。鬼原悟さん(「アリの一言」主宰者)の日米軍事同盟をタブー視するニッポンのメディア、「学者」、「識者」、政党の総批判
・米極右政権始動。凍りつく。また、別の冬の時代が始まろうとしている

【山中人間話】


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