キョウ てんのうせい6

Blog「みずき」:内野光子さん(歌人)は2013年度の文化功労者を受賞した歌人の岡野弘彦についても『天皇の短歌は何を語るのか』の中で「たしかに<国家への貢献度>は高いが、過去の受章者たちに比べて歌人として、あるいは研究者として過去の業績にどれほどの説得力があるかが問われることになろう」と評しています。その上での今回の岡井隆の文化功労者受賞評です。内野さんの危惧する歌壇の右傾化の問題についてはこちらの論にさらに本格的な指摘があります。

【勲章が欲しい歌人たち】
「勲章が欲しい歌人たち」と題して、15年ほど前に、同人誌に書いたことがある。その後の新しいデータを踏まえ、補筆したものを、拙著『天皇の短歌は何を語るのか』(御茶の水書房2013年8月)に再録した。「しつこいね」との声も聞こえないでもないが、やはり、伝え続けたいと思う。10月28日、政府から、文化勲章の受章者と文化功労者の発表があった。叙勲もあった。ここ数年、学生時代のクラスメートや職場の後輩たちの名前を見出し、もうそんな年になったのかと愕然とする。いずれも他人事として、聞き流せばいいのだけれど、少しばかり、つまらない情報を持ち合わせているから、「やっぱり」「まさか」の思いがよぎる。今年の文化功労者の中には、歌人
岡井隆の名があった。(略)さて、その(文化功労者選考分科会委員の)メンバーだが、10人のうち、私が名前を知っていたのは、田中明彦、松浦寿輝の両名だったし、小説家「宮本正仁」って誰?と思って調べてみると「宮本輝」の本名だった。あとの委員は、武蔵野音大の人を除いては、すべて国立の研究機関や大学に属する人たちで、元文科省事務次官次だった官僚もいる。たしかに研究分野を異にする委員ではあるが、彼らの眼が各分野での「文化の向上発達」に「勳績卓越」「功績顕著」な人たちに届くとは思えない。若干の意見は聞き置かれようとも、おそらく他の省庁の「審議会」と同様、おおかたは、事務方の提案の了承機関になっているのではないか、と。

今年の選考委員で、文学関係では、松浦と宮本の両委員ということになる。両名は、ともに、芸術選奨文科大臣賞(松浦2000年、宮本2004年)、紫綬褒章(松浦2012年、宮本2010年)を受けている仲である。こうしたな環境の中で選考され、歌人の文化功労者岡井隆が誕生した。世の中の様々な賞、歌壇における短歌雑誌や歌人団体、新聞社やNHKなど民間の組織が主催する賞についても様々な問題、例えば、選考委員の重複・集中、選考委員結社間での互酬性、受賞者の重複、各賞の特色の薄弱化など、これまで指摘してきたつもりである。政府が関与する各種の褒章・栄典制度において、とくに文藝にあって、政府の関与、情報の不透明性、選考委員・選者の常連化などによる権威性を伴う現実は、文芸の自律を脅かさないのか、権力からの独立性が保たれるのか、という危惧なのである。権力は、露骨に、あるときは巧妙な手口で、表現の自由や学問の自由をひたひたと侵害してくる現実に対して、あまりにも無防備なのではないか。私たちの抵抗の手段として何が有効なのか、歴史に学び、世界に学び、もっと賢くならなければの思い頻りである。(
内野光子のブログ 2016年11月4日

【山中人間話目次】
・自民党、自民党議員らのアナクロニズム的倒錯とリベラル・左派のアナクロニズム的倒錯
・共産党シンパらしい渡辺輝人さん(弁護士)の「野党共闘クソッタレ」論
・toriiyoshikiさん(ETVディレクター・ハーフリタイア)のデマゴーグ高須克弥(医師)批判
・安田浩一氏(ジャーナリスト)のニューズウィーク日本版掲載の「日本人の無自覚な沖縄差別」という記事の無定見について
・辺見庸の「ドジン」「シナジン」とはなにか!?ーー目取真俊さんの訴え
・小倉利丸さん(富山大学名誉教授。ピープルズ・プラン研究所共同代表)さんの「インターネット民営化問題」論第3弾
・戦前の湯川秀樹と朝永振一郎評価に関する北島教行さん(福島第一原子力発電所事故収束作業者)との応答
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