キョウ ふぃりぴん

Blog「みずき」:アメリカに対して対米自主独立を宣明したフィリピンのドウテルテ大統領は、今年6月の大統領就任からわずか4か月の間に3500人もの麻薬犯罪の容疑者を裁判にかけることなく処刑したかと思えば、強姦やジャーナリストの殺害を容認する発言を繰り返すなどの顔も持つ不可思議きわまる人物です。ロドリゴ・ドゥテルテという政治家は一体何者なのか。このドゥテルテという大統領の評価について日下渉さん(名古屋大学大学院国際開発研究科准教授)と神保哲生さん(ジャーナリスト)、宮台真司さん(社会学者)が鼎談している映像がこちらにあります。合わせて」ご参照ください。

【噴飯物でしかない朝日新聞社説の認識】
フィリピンの
ドウテルテ大統領の訪中結果に関して、日本政府の反応は想定の範囲内ですが、国内メディアの報道を見ていると失笑を禁じえません。「日本と一緒になって中国と対決してきたフィリピン」という先入主が日本のメディアには「動かすべからざる当然の前提」としてあったために、「オレは抜けるよ」という態度を明確にしたドウテルテの敢然とした行動は衝撃であり、対応が追いつかないのです。22日付の朝日新聞社説は、「中比首脳会談 「法の支配」を忘れるな」と題して、国際仲裁裁定を「封印」したドウテルテに対して、「裁判所の判決は効力を失っていない。中国が一方的に権利を唱える南シナ海は重要航路であり、どの国にも航行の自由が認められるべきことに変わりはない」とし、「日本が基軸とすべきは、あくまで「法の支配」など自由主義の価値観である」と主張しています。この指摘・主張は、安倍政権の取っている立場を無条件に受け入れたものですが、ここには次の重要な事実認識上の誤りがあり、噴飯物としか言えません。 一つは、仲裁裁定の中身をまったく弁えていないということです。仲裁裁定は、南シナ海の島礁はすべて、国連海洋法条約に基づいて排他的経済水域、大陸棚の権利を主張できる「島」ではない「岩」以下であると断定しました。この独断は、米英日などの海洋国家が依拠する現行海洋秩序を根底から損なうものです。この裁定の「効力」を承認するとすれば、例えば、沖ノ鳥島は排他的経済水域を主張できるはずがありません。そのことを朝日の論説委員氏は認識しているのでしょうか。

また、仲裁裁定は中国が主張する歴史的権利について、条約では認められていないと断定して退けました。しかし、条約は、「歴史的湾若しくは歴史的権原に関する紛争」について調停手続の適用から選択的に除外できる(
第298条1)と明確に定めています。中国は、英仏露等30ヵ国と同じく、この規定に基づく排除宣言を行っているのです。仲裁裁定が歴史的権利の存在を否定し、中国がこの規定に基づく排除宣言を行ったことをも無視しているのは、暴論以外の何ものでもありません。朝日新聞論説委員氏は仲裁裁定の内容を本当に読んでいるのでしょうか。本当に歴史的権利の存在を否定するならば、例えば日本が竹島及び北方4島に対して主張している権利も自ら取り下げなければなりません。もう一つの決定的誤りは、社説は中国が航行の自由を認めていないという断定に立っていることです。これまた極めて初歩的な事実誤認です。中国はくり返し、南シナ海(中国は「南海」といいます)における航行の自由があることを明らかにしています。確かにいわゆる「九段線」に関する「歴史的権利」は主張していますが、「九段線」内部における航行の自由を認めるということは、「九段線」そのものが国境をなすものではないことを間接的に認めているのです。

このように、日本のメディアの南シナ海問題に関する事実認識は日本政府の垂れ流す「事実」をそのまま鵜呑みにしたものであって、根底から間違っています。ましてや、仲裁裁定に法的効力があるとする安倍政権の強弁を鵜呑みにするというのは、「良識あるメディア」の風上にもおけないことです。(略)私たちはアメリカ発の「歪められた事実」によって誘導され、判断・認識を誤らせてしまっているのです。私たちがドウテルテ訪中から学びとるべきもっとも重要なポイントは正にここにあります。(略)対米自主独立を宣明したドウテルテに対してアメリカが不満を述べることがせいぜいで、なすすべがないという事実は、対米追随に徹して安穏としている日本に対する最大のアラーミング・ベルです。(
浅井基文のページ 2016.10.23

【山中人間話目次】
・信頼できる弁護士かどうかの問題について――澤藤統一郎弁護士の「漁協ファーストではなく、漁民ファーストでなければならない」という論を読んで
・ロドリゴ・ドゥテルテとは何者なのか-ビデオニュース・ドットコム
・若い2人の機動隊員の「土人・シナ人」発言はもちろん指弾されるべきですが、太田昌国さんや内海信彦さんのいう視点も欠かすことのできない視点です
・これは「怒りの報道」だと私は思う――報道特集:機動隊員土人発言 ヘリパッド建設の抗議続く沖縄高江~住民の本音 2016年10月22日放送
・都民1人当たり25万円の負担で東京五輪を開催しますか?――盛田常夫さん(在ブダペスト、経済学者)のアラーミング・ベル
・トランプの支持率が上昇し、ヒラリー・クリントンに4ポイント差まで迫るというロイターの報道
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