キョウ ひろしま6

Blog「みずき」:広島市立大学広島平和研究所所長を6年間つとめた浅井基文さんの「広島への思い」はいま、「私たちは、大江健三郎氏の『ヒロシマ・ノート』で理想化されたヒロシマを今日に至るまで「現実にある広島」と勝手に思い込んでいます。しかし、現実の広島は、「非核3原則と「核の傘」」の絶対矛盾にも正面から異議申し立てするだけの認識と勇気を持ち合わさず、オバマ訪広をひたすら歓迎するだけの、日本の他の大都市と何の変哲もない土地に成り下がってしまっている」、と断罪するまでに到っています。このように「わが広島」を断罪しなければならない浅井さんの無念は察するにあまりあるものがあります。浅井さんはその無念の思いを重ねて次のようにも言います。「日本国内では、オバマ大統領の「核の先制不使用」発言に飛びつき、これを評価する傾向があります」。「しかし、このような議論は、アメリカの核戦略の本質を踏まえない、「木を見て森を見ず」の典型と言わなければなりません」、と。オバマ大統領の「核の先制不使用」発言を評価する傾向のひとつの典型例としては先日ご紹介した田中宇さんの論などをあげることができるでしょう。私は浅井基文さんの無念の思いに共感します。それは、浅井さんの問題提起をしっかりと受け止めるということでもあるでしょう。

【日本国内の世論状況は絶望的なまでに「甘っちょろい」】
7月30日付のコラムで、「オバマ氏は任期の最後に「核の先制不使用を含む核政策の重要な調整」を検討しているといいます。広島訪問で刺激を受け、「核なき世界」という初心に立ち返る衝動に駆られたのかもしれません」と指摘し、しかし、「オバマ氏の核政策の再検討は共和党の強硬な反対に直面しており、安易な期待は禁物です。それに「先制不使用」は、米国内のみならず、米国の「核の傘」にしがみつく安倍政権、韓国・朴政権の強い反発で実現できない可能性が高いと考えざるを得ません」とも指摘して、日本国内が安易な「期待」を持つことは早計だという私の判断を示しておきましたが、その後の流れは私が指摘したように動いているようです。「先制不使用」に関しては、アメリカ国内では、共和党は当然のこととして、米軍部さらにはケリー国務長官なども反対していると報道されています。安倍首相も、ハリス米太平洋軍司令官との会談の中で、「朝鮮に対するデタランスが弱まる」ことを理由として反対したことが伝えられました(ただし、8月21日付朝日新聞によれば、安倍首相はそういう発言を行ったことを否定。もっとも自らの考えを示すこともなし)。(略)

日本国内では、オバマ大統領の「核の先制不使用」発言に飛びつき、これを
評価する傾向があります。そして、これに抵抗する安倍首相や外務省を批判することにつながっています。しかし、このような議論は、アメリカの核戦略の本質を踏まえない、「木を見て森を見ず」の典型と言わなければなりません。確かに、すでに指摘したとおり、朝鮮半島における核戦争の危険性を少しなりとも減らす可能性があるという点で(また、その点に限って)、オバマの思いつき発言を肯定的に評価する余地はあります。しかし、朝鮮を敵視し、朝鮮をして極度に警戒させ、身構えさせるという点で、2期にわたるオバマ政権はそれ以前の政権に勝るとも劣らない強硬な政策を行ってきましたし、その政策は、「核の先制不使用」が仮に実現したとしても、微動だにしないのです。金正恩政権が核開発と経済建設の並進路線を戦略として据え付けたのは、オバマ政権の対朝鮮敵視政策に最大の原因があります。また、オバマ政権がミサイル防衛政策を積極的に推進してきたことは、ロシアそして今や中国の警戒感を高め、核軍拡競争再発の引き金になろうとしています。「核のない世界」というビジョンを打ち出したオバマに期待を抱き、広島を訪問したオバマに核廃絶への誠意を確認しようとする日本国内の世論状況は絶望的なまでに「甘っちょろい」のです。

私は、広島で仕事をした6年間、日本人の曖昧を極める核意識について考え続けました。広島には日本人の曖昧な核意識を正す答があるのではないかという期待もありました。しかし、結論から言えば、「広島は日本の縮図」であるということでした。私たちは、1960年代に書かれた大江健三郎氏の『
ヒロシマ・ノート』で理想化されたヒロシマを今日に至るまで「現実にある広島」と勝手に思い込んでいます。しかし、現実の広島は、「非核3原則と「核の傘」」の絶対矛盾にも正面から異議申し立てするだけの認識と勇気を持ち合わさず、オバマ訪広をひたすら歓迎するだけの、日本の他の大都市と何の変哲もない土地に成り下がってしまっているのです(略)。今回のオバマの「核の先制不使用」という思いつき発言をめぐって国内で起こっている現象も、要するにこれまでと何の変わりもありません。私としては、せめて以上に紹介した核デタランスに関する基本的論点を基礎に据えた、私たちの核意識を根底から問い直す議論が起こることを望むのですが、それはやはり「高嶺の花」でしょうか。(浅井基文のページ 2016.08.25

【山中人間話目次】
・「極秘メモ」が語る加害企業救済の手口と「水俣の教訓」 - アリの一言
・NHKスペシャル<日本人はなぜ戦争へと向かったのか> 第3回 「“熱狂”はこうして作られた」
・長崎原爆朝鮮人被爆者追悼早朝集会メッセージ:高實康稔-Peace Philosophy Centre 
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