キョウ おばま8

Blog「みずき」:春名幹男さん(元共同通信特別編集委員、早大客員教授)が「オバマは本当に被爆者の心に寄り添ったのか」と自らに発問した上で、「オバマ広島訪問」に隠された米国のほんとうの意図を明らかにする論攷を書いています。春名さんは、もともとの本職はジャーナリストらしいタッチで事実を積み重ねた上で、オバマ訪広の真の意図は、日本をこれまでどおりにアメリカの従属的位置に置くための対日心理戦略の一環でしかなかったことを明らかにしています。「アメリカが原爆を投下した事実さえ認めなかった」、「反戦を掲げて就任しながら、2期8年の最初から最後まで戦争を続けた唯一の大統領として来年1月退任する」というのは、春名さんのオバマ評価のしめくくりの言葉です。

【森さんには米側、坪井さんには日本側の通訳と別々に通訳がついていた】
日米間の打ち合わせで双方が最も神経質にやりとりしたのは、大統領と被爆者の交流の場面とみられる。最終的には、オバマ大統領が被爆者の
森重昭さん(79)を抱きしめたシーンが、大統領の広島訪問を象徴する「絵」になった。恐らく、歴史的にも今後繰り返し使われるシーンになるだろう。だが、この場面には演出があった。大統領と交流する被爆者に選ばれたのは、森さんと日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の坪井直代表委員(91)だった。米側は事前に、森さんを「親米」、坪井さんを「反米の可能性も」と色分けしていた可能性がある。それが証拠に、森さんには米側、坪井さんには日本側の通訳、と別々に通訳が付いていた。最初に話した坪井さんの言葉を聞いて、大統領は体をくねらせ、笑顔を見せた。来たばかりなのに「大統領退任後も広島に来てください」と注文を付けられ、笑ってごまかしたのではないだろうか。だが、被爆死した米兵捕虜12人の遺族を取材した森さんには優しくねぎらい、抱き寄せた。最初から親しく話そうとしたようだ。米側はこれで成功、と考えたのではないか。

スピーチをまとめるなどの中心的な役割を担ったのは、オバマ・ホワイトハウスの
スピンドクターベン・ローズ国家安全保障問題担当副補佐官だった。彼の公式の任務は、「戦略広報兼スピーチライター」だ。この人物、実はオバマ広島訪問発表の直前に、深刻なスキャンダルに見舞われていた。5月5日付『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』に掲載された「オバマ外交政策の権威と化した、上昇中の小説家」と題する記事で、昨年のイランとの核合意をめぐる広報で、合意に至った経緯を作り話をまじえた「物語」に仕立て上げ、反核団体を使って合意を宣伝した事実を自慢げに明らかにした。インタビューでは「ワシントンの記者たちは何も知らない」と彼自身、記者たちを小バカにしていた。今年39歳。小説家を志望し、ニューヨーク大で文学を学んだ後、ハミルトン元下院外交委員長補佐官として米同時中枢テロ独立調査委員会などの調査と報告書作成に携わった経験を経て2008年大統領選以来、オバマ氏のスピーチライターを務めてきた。彼は広島スピーチでも創作した。通例の手続きに従って、ローズ氏が大統領の意見を聞いて第1稿を書き、国務・国防・エネルギーの関連各省、中央情報局(CIA)などに回覧して、問題箇所を削除してもらい、最終稿をまとめたと伝えられている。このスピーチの中で多くの被爆者が違和感を覚えたのは最初の部分だった。「空から死が降ってきて世界は変わった」と、アメリカが原爆を投下した事実さえ認めなかったことだ。ロシアと張り合って大統領の広島訪問を実現し、スピーチで米世論を刺激しなければ及第点。そんな表現を入れ、抽象論で終始しても日本人は喜ぶ――とでも考えたのだろうか。

共同通信の報道によると、長崎の2016年
平和宣言起草委員会では、「原爆投下を自然現象のように語り、過ちを認めていない」などとする批判が出た。当初の宣言案では、大統領が森さんと抱き合った姿を「人々に感動を与えた」としていたが、反対の意見が出て、「感動」の表現は削除されたという。やや場違いな表現だが、日本人として一矢を報いたと言えるかもしれない。帰国後、ローズ補佐官は自分のブログに、大統領が自ら直前までスピーチ原稿を推敲していた、として手書きの書き込みが入ったペーパーをアップした。ローズ補佐官の狙い通り「大統領が自ら関与」、とほとんどのメディアが報道したが、別にヒューマンな内容に変わったわけではなかった。オバマ大統領は、特に人道主義者ではない。反戦を掲げて就任しながら、2期8年の最初から最後まで戦争を続けた唯一の大統領として来年1月退任する。(春名幹男 Foresight(フォーサイト) 2016年8月19日

【山中人間話目次】
・春名幹男さんの「『オバマ広島訪問』に隠された米国の意図」という論攷
・澤藤統一郎さんの「へそまがり宣言」の論に呼応する内橋克人さんの「日本型同調主義」批判の論
・いまもなお太平洋戦争が要因となった精神疾患で療養中の患者は13人いる。数十年間退院できないケースもあるとみられる
・仲宗根勇さん(元裁判官)の国の翁長知事を相手方とする違法確認訴訟の問題点の解説と沖縄県への問題提起
・かつてサイードは「知識人」について次のように言った
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