キョウ あさいもとふみ

Blog「みずき」:どちらも中国問題のエキスパートという点では日本有数の論者と言ってよいおふたりだと思うのですが、浅井基文さん(元外交官、政治学者)の紹介する中国の言論状況と阿部治平さんの紹介する中国の言論状況に私は決して小さいとはいえない懸隔のようなものを感じます。私は以前、浅井さんと阿部さんの論を比較して次のように述べたことがあります。「私は中国での教員生活の長い阿部治平さんの論攷と元外交官で政治学者の浅井基文さんの論攷を比較して考えてみることがしばしばあります。もちろん、どちらも中国問題のエキスパートですが、阿部さんの目は中国の庶民にそそがれているのに対して、浅井さんの目は中国の政権サイドや同国では主流の学者や編集者が発した公的・私的見解にそそがれているように見えます。中国情勢を判断するに際してどちらも重要な視点には違いありませんが、当然ながら政権サイドの論は自己の弱点をさらしてまで真実を述べることはまずありませんので浅井さんの目の確かさは信頼しながらも、その浅井さんの視点の欠けているところを思ってどうしても不満が残ります」、と。「今日の言葉」の浅井さんの論攷は私のそのかねてからの疑問の一端を解き明かしてくれるものといってよいでしょう。なるほど。浅井さんはこれまで、以下のような理由で「中国側論調を努めて紹介」する論攷を書いていたのか。しかし、浅井さんの「主体的意図」は理解できるものの、浅井さんと阿部さんの論攷の懸隔についての私の疑問はこれで氷解しきったわけではありません。

【アメリカのプリズムを通した日本人の国際観の脆弱性と貧困】
私が
このコラムで中国側論調を努めて紹介するのは、私の過去の経歴とも関係があるのはもちろんですが、私の主体的意図としては、アメリカのプリズムを通して国際情勢を眺めることに慣らされている日本人の国際観が実は「完全無欠」からほど遠いこと、国際情勢を正確に認識するためには、他者感覚を大いに働かせて、様々な角度から物事を見る目を養う必要があること、そのためにはアメリカと対極的な国際情勢認識に立脚する中国人の国際観を理解する必要があること、そして、好むと好まざるとにかかわらず、日本にとっての国際関係において末長く、中国はアメリカと同じ比重を占める国家であり続けること、したがって中国の国際情識・国際観といっても決して一括りにできるものではありません。「中国は共産党独裁だから、その支配下にあるメディアの言論も官製で、画一的に決まっている」と思っている日本人は多いのですが、そういう見方は実態から大きく隔たっています。特に、中国外交の方向性を規定する前提となる国際情勢認識に関しては極めて活発な言論状況があります。 今回紹介する8月13日付の北京青年報所掲の馬暁林(新華社出身で、ブロガーの連合サイトである博聯社総裁)署名文章「東北アジアにおける駆け引き 新冷戦警戒」は、韓国におけるTHAAD配備をめぐる中韓関係尖閣紛争をめぐる日中関係という、中国の東北アジア外交におけるもっとも機微な問題を正面から取り上げて論じたものです。その内容は、私が度々取り上げる環球時報社説などとは一線を画したものであることは、一読していただければ直ちに明らかでしょう。ちなみに、こういう言論状況が中国に存在することは、「お上」の顔色を窺う「自主規制」が横行する日本国内の言論状況より健康的であることを物語っていると思います。(浅井基文のページ 2016.08.14

【山中人間話目次】
・澤藤統一郎さんの「象徴天皇への敬意を強制する『社会的同調圧力』」批判はその「同調圧力」の半面の批判でしかない
・私と都藤邦さんの「前原氏、野党共闘を評価-雑誌『世界』 今後も「進化」」という赤旗記事を読んでの感想と応答
・武田泰淳『土民の顔』全文――『日中の120年―文芸・評論作品選』全5巻(張競、村田雄二郎編。岩波書店)
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