キョウ くだんせん

Blog「みずき」:今回の浅井基文さん(元外交官、政治学者)の論攷については是非とも全文をお読みいただきたいのですが、長文のため論攷の在り処を示した上でここでは要点の要点のみ掲げておくことにします。いずれにしてもわが日本ではメディア(いわゆる「革新」的メディアを含む)によって「フィリピンが全面勝訴で、中国が全面的に敗訴」という「極めて皮相的」な評価があまりに喧伝されすぎていますので、浅井さんの提起される問題の所在を大づかみにつかみとることだけでもとても重要なタスクワークになるだろうと私は思います。

【国際司法裁判所も「本件仲裁裁判とICJとは無関係」であるとする立場】
7月12日に仲裁裁判所が下した裁定(award)については、フィリピンが全面勝訴で、中国が全面的に敗訴したという「評価」が
日本及びアメリカのメディアでは流布されています。しかし、このような見方は極めて皮相的なものと言わなければなりません。仲裁裁判所が本件についてそもそも管轄権があるのかという根本的問題(中国は、英仏露等30ヵ国と同じく、国連海洋法条約(以下「条約」)第298条の規定に基づく「海洋の境界画定、歴史的海湾または所有権、軍事及び法執行などの分野の紛争に関しては、条約の紛争解決手続から排除する」という排除宣言を行っています。この条の(a)(i)では、「海洋の境界画定に関する‥規定の解釈若しくは適用に関する紛争又は歴史的湾若しくは歴史的権原に関する紛争」が紛争解決手続から排除されうると明定していますから、本件仲裁は不法かつ無効とする中国の主張は十分な法的正当性があります)に加え、国連海洋法条約にいう「島」・「岩」に関する裁定内容は、日本を含む多くの国々の法益に直結する重大な問題を含んでいます。このほかにも、中国の「九段線(中国語では「断続線」とも)」及びそれに基づく「歴史的権利」に関しても、裁定はフィリピンに一方的に有利な判断を示しています。それらの諸点について検討を加え、安倍政権の「大はしゃぎ」及びそれを丸呑みにする日本メディアの報道姿勢が如何に誤ったものであるかを指摘したいと思います。(略)

今回の仲裁裁定については主に、①仲裁管轄権ありとする強引な立論、②「島」と「岩」に関する牽強付会的判断、③歴史的権利そのものの否定、という3点に関して重大な問題があります。この3点は、条約の権威性、十全性、有機的統一性のいずれをも根底から突き崩すものであり、今回の裁定に対しては、客観的に、公正かつ厳正な批判を行うことが不可欠です。(略)むしろ、この裁定に対しては、国際司法裁判所(ICJ)は本件仲裁裁判がICJとは無関係であるとする立場を対外的に明らかにしたこと、国連事務局も裁定結果に対して立場を明らかにしないとするコメントを出したことを紹介しておきます。また、EUも南シナ海の紛争に関しては交渉による解決を希望するという立場を明らかにしました。つまり、米日のはしゃぎぶりは対突出した異常なものだということです。(
浅井基文のページ 2016.07.17

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