キョウ わかもののとうひょう

【生徒を現実の政治から遠ざけていたら投票率はどうなるか】
生徒会で国会解散決議 清陵高 一部はデモに参加〉1960(昭和35)年6月5日付の信濃毎日新聞社会面にこんな記事が載った。その約2週間前。
日米安保条約改定が衆院で強行可決された。抗議する多数のデモ隊が連日、国会周辺に押し寄せていた。記事によると、長野県内の高校で政治問題についての生徒集会開催は諏訪清陵高が初めて。数日前からクラス別に安保問題を討議した。生徒集会は放課後、2日間開き、全校生徒の8割余の約700人が参加。「岸(信介)内閣の即時退陣。正しい民主政治を確立し、国会をただちに解散せよ」と決議した。当時の校長は「生徒たちが安保問題に強い関心を持っているので、時事問題研究ということで集会を許可した」などとコメントしている。この時、17歳で生徒会長だった中林正勝さん(略)は振り返る。「生徒会役員が主導したのではない。今の政治に黙っていられないという生徒の思いが自然に湧き上がった。先生に止められることはなかった」同年6月15日。デモ隊が国会構内に突入して警官隊と衝突、東大生の樺美智子さんが死亡する。集会やデモは県内の他の高校生にも広がった。総務省の年代別投票率統計(略)で最も古いのは67年の衆院選だ。この時、高校時代に政治の季節を体験した20代の投票率は7割近い。これをピークに低下傾向をたどり、直近の2014年選挙では3割にまで落ちたグラフ

下降のきっかけの一つが文部省(当時)が69年に出した
通知だ。〈国家・社会としては未成年者が政治的活動を行うことを期待していないし、むしろ行わないよう要請している〉70年の安保改定を控え一部の生徒の活動が過激化したのを理由に、全ての高校生に校内外を問わず政治活動を禁止した。憲法が保障する集会や言論などの自由には全く触れていない。授業についても、現実の政治的事象は個人的な見解が入り込む恐れがあるので「慎重に取り扱うこと」と教員に縛りをかけた。高校生の活動は「政治」から切り離され、先生は授業で現実の政治問題を取り上げることに消極的になっていく。生徒会がフランスの核実験に反対する署名活動をしようとして学校側に止められるという問題も起きた。あさって19日、改正公職選挙法が施行され、18、19歳が新たに選挙権を持つ。来月10日投開票の参院選から1票を行使できる。文部科学省は昨秋、69年通知を見直した新たな通知を出した。高校生の活動を「期待していない」から「期待される」に転換し、縛りを緩めた。それでもまだ、「禁止」や「制限」が多い。いわく、生徒会、部活動での政治活動は禁止。放課後や休日でも校内での活動は制限か禁止。校外でも学業や生活に支障があると認められる場合などは制限か禁止…。これでは、半世紀前の清陵高のような集会も開けない。
 
愛媛県では昨冬、
全ての県立高校が一斉に校則を改定全ての県立高校が一斉に校則を改定し、校外の政治活動への参加に学校への届け出を義務付けた。「自分の意見を持つことが必要な状況になっているのに、その発信が制限されるのはおかしい」。今月、東京弁護士会が開いたシンポジウムで高校生から声が上がったのも当然だ。教員の言動にも制約が多い。今回の通知は繰り返し「政治的中立」を求め、教員用指導資料は特定の見解を述べることを戒める。違反した場合、罰則を科す法改正も自民党内で検討されている。山口県では昨年、安全保障関連法案を新聞2紙を参考に生徒が討論し、賛否を投票した高校の授業の中立性に疑問があると、自民党議員が県会で追及している。文科省は今週、全国の高校が昨年度行った主権者教育の状況を公表した。内容別(複数回答)では公選法や選挙の仕組みが9割。現実の政治についての話し合いは2割にとどまった。先生が二の足を踏んでいる様子が浮かぶ。生徒を現実の政治から遠ざけ、先生の言動を監視していたら、投票率はどうなるか。歴史が教える。高校で自由に政治を語り合う。そんな環境と文化を育みたい。(信濃毎日新聞 社説 2016年6月17日
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