キョウ おなが

Blog「みずき」:辺野古和解条項9項問題に関する仲宗根勇さんの下記掲載の論のほか既出記事「まさに問題とすべき辺野古和解条項9項問題に触れたがらないような雰囲気が沖縄の中にあるのは不可解である」(2016.03.18)も合わせてご参照ください。

【「和解」は果たして沖縄に利する選択だったのか】
米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐり、県と国との間で成立した「和解」の翌日、県紙には「県主張沿い『勝訴』」「ついにやった」などの見出しが躍った。県内で和解を評価する声があふれる傍ら、米側には冷静さが漂う。果たして和解は誰に利するものなのか
 
「和解の前提は辺野古見直しのための協議ではない。移設先をめぐる議論はすでに終わった。だから法廷闘争が始まった」と話す米国務省高官は、日米両政府は移設先を辺野古と定めた現行計画を一貫して堅持しており、移設を着実に履行するための選択が和解勧告の受け入れだったと指摘。地方分権の理念を無視して代執行に踏み切った日本側の判断の甘さを批判し、「もし敗訴していれば影響は大きかった」と解釈する。

米側の最大の懸念は、日本政府が敗訴し、県の主張の正当性が認められるという点だった。法で定められた手順を無視してまで沖縄を抑え込もうという日本政府の姿勢が「敗訴」という形で明確になれば、米国防予算のひもを握る米連邦議会の目や世論の風当たりも厳しくなる。そうすれば辺野古移設そのものを見直す契機となりかねない。

米側が「最善の選択だった」と捉えるこの和解案で気になるのは「判決確定後は、直ちに同判決に従い、同主文およびそれを導く理由の趣旨に沿った手続きをするとともに、その後も同趣旨に従って協力して誠実に対応することを相互に確約する」と定めた
和解条項だ。元裁判官でうるま市具志川九条の会共同代表の仲宗根勇氏は「県にとって最悪の問題が和解条項9項に潜む」と指摘したうえで、同項の射程範囲をめぐる県と国の解釈の差を懸念し、「この9項にこそ『工事中止』を見せ金として、安倍官邸が和解にかける新基地工事強行戦略の秘密が隠されていると考える」と警鐘を鳴らす。(本紙3月22日付)国が和解に転じたのは、工事を一時中止しても、そのほうが自らに利があると判断したからだろう。沖縄が勝てる闘いを最後まで闘い抜いていれば、より大きな実を手にしていた可能性はないだろうか。「和解」は果たして沖縄に利する選択だったのか。和解に至るまでの過程とともに多角的な検証が必要である。(平安名純代(米国・特約記者) 沖縄タイムス「想い風(うむいかじ)」 2016年3月23日

【県にとって最悪の問題が和解条項9項に潜む】
訴訟上の和解は、裁判となった民事紛争について主張・立証の結果に基づき、一刀両断的に勝敗を決める判決よりも、双方当事者の互譲によって満足が得られると判断した当事者が選択する自主的紛争解決方法であり、和解調書は確定判決と同一の効力を有する。しかし、民事訴訟と類型を異にする行政訴訟は原則として和解に親しまないが、例外的に認めた裁判例はある。

国と県との代執行訴訟において3月4日に和解が成立した。この裁判の口頭弁論の経過と和解勧告提示の時期・方法などの訴訟指揮や勧告案の内容などに関し、私は以前から問題視し、ネット上や公の場で発信もしてきた。同時に提示された二つの和解案のうち、いわゆる根本案(A案)の条項に「原告(国)は、新飛行場をその供用開始後30年以内に返還または軍民共用空港とすることを求める交渉を適切な時期に米国と開始する」と書かれていた。裁判所で和解や調停事件を多数扱った経験から、私は殊にこの条項に直観的に不自然さを感じた。そもそも①双方当事者が譲歩し、②当事者が自由に処分しうる権利または法律関係についてなされること―が和解成立の要件である。だが、条項で示された米国との外交交渉の成否は第三者たる米国の意思次第の不確定のものであって国が「自由に処分しうる権利または法律関係」ではない。したがって、和解の要件を欠き和解の本質論からしてもこの和解案は有効なものとはならない。

通常の裁判官が和解勧告案にこのような条項を入れるはずはなく、入れるとすれば、和解成立のためには米国を利害関係人として和解手続きに参加させる必要があるはずである(大審院昭和13年8月9日判決)。このような和解条項は和解全体の無効をきたすものとなる。今回、同時に二つの和解案が提示されたこと自体、通常の裁判実務ではあり得ず、県のハードルを高くしたA案の提示は、県の暫定案(B案)の受け入れを誘導するための狡知にたけた心理作戦的目くらましのためのものであったのか。

二つの和解案は裁判所から出た和解案とは到底思えない。裁判実務・理論に不案内な法務官僚と安倍官邸が共同で作成した裁判手続き的に無効原因を含む政治的な和解案ではないかと当初から私は疑った
。案の定、官邸と法務省幹部が舞台裏で協議し、和解案を受け入れたことなど、驚くべき報道が一部でなされている。もし報道が事実だとすると、ことは司法権の独立に関わる重大な事件へと発展することが必定である。

県にとって最悪の問題が和解条項9項(「判決確定後は、直ちに、同判決に従い、同主文及びそれを導く理由の趣旨に沿った手続きを実施するとともに、その後も同趣旨に従って互いに協力して誠実に対応することを相互に確約する」)に潜む。和解条項に協議の時期・期間の定めがない故に国は協議を度外視して和解後の裁判手続きを急ぐだろう。県が敗訴した場合は県は辺野古新基地建設阻止をめぐる対抗手段を完全に封殺されかねないワナが、9項中のなにげない文言に仕組まれている。すなわち、民事訴訟法第114条1項(「確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する」)の条文解釈は、判決の既判力や執行力の働く範囲は判決の結論部分である主文が基準となり、主文の判断を導くに至った事実や判断経路を示す判決理由には同条2項で唯一の例外を認める相殺の抗弁を除き既判力などは認められないとするのが伝統的な解釈である(争点効の理論など理由中の判断に拘束力を認める学説はある)。だが、その解釈論と関係なく和解成立の効果として、9項により主文の他に判決理由によっても県は当然に拘束され、「その後も同趣旨に従って」の「対応」を「確約」した結果、今後工事進行上必然的に求められる設計変更に伴う変更承認など、知事の持つ権限の行使も判決理由中の判断を盾に国が抗弁事由として争うことになるだろう。

この9項にこそ、「工事中止」を見せ金としつつ、安倍官邸が和解にかけた新基地工事強行戦略の秘密が隠されていると考える。そのための国の周到なアリバイ的訴訟行為が口頭弁論でも発現された。翁長雄志知事への反対尋問で、国側は、「判決に従うかどうか」と執拗に何度も質問したことを詳細な尋問報道が伝えた。また安倍首相も和解成立後の会見で9項の文言を繰り返し繰り返し強調した。県が将来主張するだろう対抗手段を切断するための国の予防的策動である。これまでの法廷闘争は前知事の埋め立て承認は瑕疵(法律上何らかの欠点・欠陥があること)のある行政行為だとして現知事が承認を取り消したことに始まった。行政行為の「取消」のほか公益上の必要から認められる行政行為の「撤回」というカードも知事が握っているが、和解条項は知事がそのカードを切る際のマイナス要因にもなりかねない。(仲宗根勇 沖縄タイムス 2016年3月22日

【山中人間話】
 

【国との和解について】「和解」は果たして沖縄に利する選択だったのか。和解に至るまでの過程と共に多角的な検証が必要である。

New Wave to HOPEさんの投稿 2016年3月23日

3月22日沖縄タイムス掲載仲宗根勇氏 辺野古訴訟「『和解』を考える」(中)許可をえて拡散します。

Peace Philosophy Centreさんの投稿 2016年3月23日

「和解の舞台裏」ー安倍政権と裁判長が極秘に接触?! - アリの一言 http://blog.goo.ne.jp/satoru-kihara/e/09c1665484f064e39c76b7530f15456c

Peace Philosophy Centreさんの投稿 2016年3月24日
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