キョウ ひぐちよういち4

Blog「みずき」:金光翔さんはまず毎日新聞週刊金曜日樋口陽一さんの著書から樋口さんの「立憲主義」に関わる発言をピックアップした上で最後に自身の樋口発言評価を述べています。そのうち「今日の『立憲主義』の政治的主張が、『戦後解放の意味』をあいまいにし、天皇制、『昭和天皇の戦争責任という問題』を捨象した上で成り立っている」という金光翔さんの指摘は、新9条論者及び同論者を包含する9条改正論者が「立憲主義」の名においてその「改正」を主張、跋扈している現状においてとりわけ重要な指摘であろうと私は思います。

【樋口陽一さんの「立憲主義」の論をひとつの例として】
[毎日新聞2015年9月17日 東京夕刊](前略)そして話を、幕末の志士から初代首相に上り詰めた伊藤博文へと転じた。伊藤は、大日本帝国憲法制定の議論の際、立憲主義の本質をこう述べている。「そもそも憲法を創設するの精神は、第一君権を制限し、第二臣民の権利を保護するにあり」(枢密院会議議事録)「国家権力である天皇の権限も縛る、という立憲主義の基本を伊藤は理解していた。立憲主義への理解という点では、明治時代の政治家の方が深かったと思います」。痛烈な批判だ。(略)

[週刊金曜日公式サイト2016年2月8日](前略)代表世話人の一人の樋口陽一東京大学名誉教授(憲法学)は、「大日本帝国憲法を作った権力者らの掲げたキーワードが立憲政治だった。安倍政治はそれを正面から攻撃している。『戦前に戻る』といった生易しいことではなく、『戦前の遺産』さえ無視しようとしているのだ。だから私たちは、『憲政の常道』とも言える立憲主義を取り戻す必要がある」と語った。(後略)>

[樋口陽一『自由と国家――いま「憲法」のもつ意味』岩波新書、1989年11月
](前略)一方が、「いまさら立憲主義の古典的概念でもあるまい」という議論だったとすれば、こちらの方は、「戦前の日本だって立憲主義だったのだ」という議論であり、これら二つにはさみうちされる形で、戦後解放の意味が、あいまいにされている。>(22頁)

<昭和天皇の戦争責任という問題が念頭におかれる文脈で、「立憲君主としての行動だったのだから責任はない」という議論があり、それを一般化すると、「戦前の日本だって立憲主義だったのだ。いっとき軍部が暴走しただけで、そんなに悪くはなかったのだ」という歴史観につながることは、前に問題とした。

ここではもう少し立ち入って、帝国憲法とその運用について「立憲」的性格を強調して戦後との連続性をいうとらえ方にどんな問題があるのか、まず、制度論の場面で吟味してみることとしよう。(略)

帝国憲法とその運用について「立憲的」という言葉が使われているときにも、それを、日本国憲法の想定する立憲主義と簡単に連続的にとらえることの誤りは、明らかであろう。(略)だが、近代立憲主義の核そのものを形づくる「個人」という価値への態度決定を問題とするならば、見方はちがってくるだろう。まさしくこの点で、《1889年》と、《1789年―1689年〔注・フランスの人権宣言とイギリスとの権利章典〕》とのあいだには、とび越えなければならない深い溝があったといわなければならない。>(96~108頁) 

大日本帝国憲法について、伊藤博文は1889年2月15日の府県会議長への演説で、「第一条に君主の大権すなわち主権を明記するものは、他国の憲法にその例あるを見ざるところなり。しかして、その然るゆえんは、一考直ちに了解するを得べし。そもそも、わが日本国は、開闢のはじめより、天皇みずから開きたまい、天皇みずから治しめすをもって、これを憲法の首条にのするは、実にわが国体に適応するものというべし」と述べている(横田喜三郎『新版 天皇制』(略)、15頁より孫引き) 。

また、
濃部達吉は、大日本帝国憲法の規定する「主権」について、「主権は本来国民に属し、国民から君主に委託せられているとなす思想に反して、主権は本来君主に属するもので、君主は何人から委託せられたものでもなく、自分に固有なものとして、主権を保有せられるものである。その根拠は一に建国以来の歴史にあって、国民からの委託にあるのではない。」と『日本憲法の基本主義』(1935年)で解説している(前掲書、17頁より孫引き)

大日本帝国憲法すら「立憲主義」の「遺産」として評価されるならば、自民党の改憲案がなぜ「立憲主義」に反しているということになるのか
私にはよくわからないのだが、上のいくつかの引用と比較は、今日の「立憲主義」の政治的主張が、「戦後解放の意味」をあいまいにし、天皇制、「昭和天皇の戦争責任という問題」を捨象した上で成り立っているものであることを示唆していると言えよう。(
金光翔「私にも話させて」 2016年3月6日

【山中人間話】
 
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