キョウ とらんぷ2

【プアホワイトの崇拝に近いトランプ支持の危険性】
今年の大統領選挙の候補指名争いは、民主・共和両党ともに、当初は泡沫候補に終わると見られていた候補が予想外の善戦を続けている。民主党で民主社会主義者を自任するバーニー・サンダース上院議員が、大本命のクリントンを猛追する一方で、共和党では行政経験ゼロの億万長者トランプが、他の有力候補を圧倒して序盤から大きくリードするなど、これまでの常識が通用しない異例の状態が続いている。一般的にはこの現象は、硬直化した旧態依然たるワシントン政治に辟易とした有権者が、異色の候補者に惹かれた結果だと説明されているし、おそらくそれは大筋では正しい評価だろう。

しかし、トランプの下に集まる熱狂的な支持には注意が必要だ。なぜならば、それはトランプの支持者たちの多くが、彼の主張する政策そのものよりも、そのスタイル、とりわけ人種や宗教、性別に対する偏見(bigot)や憎悪(hate)を剥き出しにした発言を口にすることを憚らないトランプの演説スタイルに惹きつけられていることが、明らかになってきたからだ。(略)

トランプにはクルーズも、他のどの候補も持たない特徴がある。それは彼が人種的、宗教的、性的な偏見を平然と口にし、これまでのアメリカ政治の基準では許容されないとされてきたヘイトスピーチ的な言説を憚らないことだ。そして、トランプのそのスタイルが、むしろ大胆不敵(bold)、率直(straight)、強いリーダーシップなどと持て囃され、彼こそが再び強いアメリカを取り戻してくれる真のリーダーだと一部の、とりわけプアホワイトと呼ばれる現状に不満を抱く白人の低所得層に、崇拝にも近い形で崇められているのだ。実際、トランプ支持者の集会では、他人種や他宗教、女性や性的マイノリティーを蔑んだり揶揄したりする言葉が当たり前のように乱れ飛び、そうした主張に批判の声をあげる反対派の市民が、会場から力づくで追い出されるシーンが繰り返し目撃されている。(略)
過去30年あまりの間、新自由主義的な政策によってアメリカ社会に格差が広がり、多くの白人が中間層から貧困層に転落した。と同時に、アメリカにおける白人の比率も減り続け、近い将来白人人口が全体の50%を割ることは必至の状況だ。独立以来アメリカの歴史を牽引してきた白人が、間もなくマイノリティに落ちようとしている。そうした状況に不満や危機感を抱くプアホワイトたちが、トランプ人気を支えている(略)。とどまるところを知らないトランプ旋風にようやく危機感を持った共和党の指導部やメディアは、ここにきてトランプ批判を強めている。共和党にとっても、明らかに自分たちが主張してきた政策とは異なる主張を持つ候補を選ばなければならなくなると、党のアイデンティティが危機に陥る恐れもある。また、既存のメディアも、ここまではトランプ旋風を、いずれ失速するだろうという前提で、面白半分で伝えてきたところがあったが、ここにきて批判の手を強めている。

しかし、ワシントン・インサイダーと見られる共和党の指導層や既存のメディアがトランプを叩けば叩くほど、トランプ支持者が増えるという皮肉な現象が起きている。実際、来る日も来る日もメディアがトランプの一挙手一投足を報じてくれるため、トランプは他の候補と比べてほとんどテレビCMを流さないでも、高い支持率を維持できている。しかも、億万長者である。いざとなればいくらでも自己資金から選挙資金は出せる立場にある。今やトランプがこのまま共和党の候補に指名される可能性が現実のものとなっている。そればかりか、トランプ旋風なるものにこのまま勢いがつけば、11月の本選でトランプが大統領に選出されることも十分にあり得る状況となっている。しかし、これだけ偏見や憎悪を振りまくことで支持を広げてきた候補者が、世界一の超大国アメリカの大統領になった時、アメリカ社会のみならず世界に与える影響は計り知れない。(
神保哲生「ビデオニュース・ドットコム」2016年3月5日

【山中人間話】

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