キョウ NHK
けさのNHKニュースより

政府の広報機関と化しているけさのNHKニュースは北朝鮮の「『人工衛星の打ち上げ』と称する事実上の長距離弾道ミサイル」が日本時間の7日午前7時半から発射予告時間帯に入ったことを大々的に報じ、「みなさまのNHK」視聴者に警鐘を乱打しています。今後、他のメディアも同様の「広報」を乱打することでしょう。メディアはまさに乱痴気騒ぎの様相です。

北朝鮮のミサイル けさ7時半から発射予告時間帯に
 NHKニュース 2月7日 4時01分

北朝鮮が「人工衛星の打ち上げ」と称する事実上の長距離弾道ミサイルの発射予告期間を1日前倒したため、日本時間の7日午前7時半から発射を予告した時間帯に入ります。政府は、弾道ミサイルの発射は容認できないとして、アメリカなど関係国と連携し発射を取りやめるよう働きかけるとともに、万が一の事態に備えて警戒・監視を続けることにしています。北朝鮮は、「人工衛星」と称する事実上の弾道ミサイルを当初の予定を1日前倒して、7日から14日までの間に打ち上げると、国際機関のIMO=国際海事機関に対して新たに通告しました。新たな通告では発射予定時刻と飛行ルートに変更はなく、弾道ミサイルは、日本時間の午前7時半から午後0時半の間に発射され、沖縄県の先島諸島付近の上空を通過するとみられています。これを受けて、政府は6日夕方、関係省庁局長級会議を開き、警戒態勢や国民への情報伝達の方法などを確認したほか、各都道府県に対し、発射予告期間が7日に早まったことを連絡し、警戒を呼びかけました。

一方、防衛省は、迎撃ミサイルSM3を搭載したイージス艦3隻を東シナ海や日本海に配備したほか、地上配備型の迎撃ミサイルPAC3を沖縄県の石垣島や東京近郊に配備しました。政府は、北朝鮮が先月の核実験に続いて、弾道ミサイルを発射することは日本の安全保障上の重大な脅威で容認できないとしており、アメリカなど関係国と連携してぎりぎりまで発射を取りやめるよう働きかけるとともに、万が一の事態に備えて警戒・監視を続けることにしています。また政府は、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合には、エムネット=緊急情報ネットワークシステムや、Jアラート=全国瞬時警報システムを使って、直ちに国民に情報を伝達することにしています。さらに、速やかにNSC=国家安全保障会議の閣僚会合を開き、それまでに集まった情報の分析などを急ぐことにしています。


しかし、北朝鮮のいう「人工衛星」は文字どおりの人工衛星であって、それを「事実上の長距離弾道ミサイル」などと歪めて報道(広報)することはゆえなく他国(隣国)を侮辱することであり、「正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重」(国連憲章前文)を規定した国際法の精神から見ても決して許されることではありません。

以下、そのことを国際法の論理に即して指摘する浅井基文さん(元外交官、政治学者)の「朝鮮の人工衛星打ち上げの権利を安保理決議で制限することはできない」という論を「中国の国際法上の立場を糾す-朝鮮の核実験・衛星打ち上げ及び南海問題-」から抜粋して引用しておきます。なお、浅井さんの同論の標題は「中国の国際法上の立場を糾す」というものですが、同論の指摘は中国だけでなく、日本を含む世界のすべての国家に妥当する指摘であることはいうまでもありません。浅井さんは「このようなことがまかり通るのを許してしまうならば、国際社会は『ヤクザの世界』と同じです」とまで言っています。

1.朝鮮の人工衛星打ち上げの権利を安保理決議で制限することはできない

陸慷報道官が「朝鮮は宇宙の平和利用の権利を本来有している」と指摘したのは、宇宙条約上すべての国々に認められている宇宙の平和利用の権利を指しています。すなわち同条約第1条は、「宇宙空間は、すべての国がいかなる種類の差別もなく、平等の基礎に立ち、かつ、国際法に従って、自由に探査し及び利用できる」、「宇宙空間における科学的調査は、自由」と規定しています。すなわち、「いかなる種類の差別」もあってはならないのです。朝鮮の人工衛星打ち上げを狙い撃ちする安保理決議は正にこの差別に該当します

また、これも重要な点ですが、条約第4条は、「科学的研究その他の平和的目的のために軍の要員を使用することは、禁止しない。月その他の天体の平和的探査のために必要なすべての装備又は施設を使用することも、また、禁止しない。」と規定しており、「軍の要員」「必要なすべての装備又は施設」の使用も認められているのです。現実に、人工衛星を打ち上げている国々は、人工衛星運搬手段として軍事用ミサイルを使用しています(日本は数少ない例外)。朝鮮が運搬手段として弾道ミサイルを使用することは、宇宙条約では織り込み済みなのです。

以上の私の指摘に対して「待ったをかける」ために中国が持ち出すに違いない主張は、条約第1条が「国際法に従って」利用できるとしていることです。念の入ったことに、安保理決議2087は、"Recognizing the freedom of all States to explore and use outer space in accordance with international law, including restrictions imposed by relevant Security Council resolutions"(強調は浅井)として、条約第1条に言う国際法には「安保理決議によって課される制限を含む」としています。

しかし、この主張は成り立ちません。宇宙条約第1条に言う国際法とは一般国際法のことです。安保理決議に関して言えば、安保理決議が加盟国に対して拘束力を持つのは、国連憲章第25条により、国連加盟国が安保理の決定を「受諾し且つ履行することに同意する」限りのことであって、決議そのものは国際法でもなんでもありません。増していわんや、その決議の内容が宇宙条約というもっとも基本的な条約に基づく締約国の権利を奪ったり、制限したりするような場合には、その決定自体が無効であり、朝鮮として縛られるいわれはないのです。つまり、安保理決議2087が以上のような規定を書き込むこと自体が許されないことなのです。

この点についてなお反論しようとする向きに対しては、国連憲章に関するもっとも権威あるコンメンタールであるSimma, Khan, Nolte, Paulus eds., "The Charter of the United Nations" 第1巻の第25条に関する詳細な解説(pp.787-854)を参照することを薦めます。

私はむしろ、安保理決議2087に上記文言を無理やり挿入してでも、朝鮮の正当な国際法上の権利を奪いあげようとする乱暴なことをあえてする安保理(特に5大国)の姿勢に深刻な危機感を覚えずにはいられません。5大国が同意しさえすれば、国際法をもひん曲げることすらあえてするという典型的な事例にほかならないからです。ましてや、無効である決議に「違反」したことを理由にして制裁を課すなどはもってのほかと言わなければならないのです。このようなことがまかり通るのを許してしまうならば、国際社会は「ヤクザの世界」と同じです

宇宙の平和利用は、本来祝福されるべき性格のものです。それは、朝鮮についても同じです。朝鮮の行動をまっ黒に描き出すことに利益を見出すのは、アジア太平洋における軍事プレゼンスを正当化することに血まなこなアメリカと、日米軍事同盟のNATO化と日本国憲法「改正」のための口実探しに躍起な安倍政権だけです。中国としては、こういう点にも考えをめぐらすべきであると付言しておきます。(「中国の国際法上の立場を糾す-朝鮮の核実験・衛星打ち上げ及び南海問題-」浅井基文のページ 2016.02.05



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