キョウ いなだあけみ 
日弁連次期会長候補に自民稲田議員「支持」の怪情報

日刊ゲンダイ 2016年1月17日) 

日弁連会長選挙が終盤戦を迎えています。この2月5日に投開票予定で執行されます。そうした中で「人権の砦」としての日弁連らしからぬ事態が勃発しています。日弁連執行部が同会長選挙に立候補しているひとりの候補者が右派政治家として名高い稲田朋美自民党政調会長に何度も献金していたことを批判する岩月浩二弁護士と徳岡宏一朗弁護士のおふたりの弁護士ブロガーの記事を同日弁連選挙規程違反として削除要求をしてきたという事態です。

まず、この事態についてのおふたりの弁護士の説明を見てみます。

岩月浩二弁護士の事態説明は以下のようなものです。

「お探しのページは、日弁連会長選挙規程に違反するとの指摘があり、削除することといたしました。『会長選挙規程 日本弁護士連合会/第五十八条 候補者及びその他の会員は、選挙運動として次に掲げる行為をし、又は会員以外の者にこれをさせてはならない。/四 第五十六条の二又は第五十六条の三の規定に違反してウェブサイト又は電子メールを利用する方法による選挙運動をすること。』56条の2に違反してはいけないとする、56条の2がどのようになっているかというと、『候補者は、ウェブサイトを利用する方法(公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第百四十二条の三第一項のウェブサイト等を利用する方法のうち、候補者以外の者による意見等の送信及び受信並びに表示ができないものをいう。以下同じ。)により、選挙運動をすることができる。』となっており、ウェブサイトを利用する方法による選挙運動の主体は、候補者に限られており、一般会員には開かれていない。なお、公職選挙法は平成25年に法改正がなされ、選挙期間中のウェブサイトを利用した選挙運動は、広く一般市民が自由にできることとなっているので、念のため。この自由化と同様に日弁連会長の選挙規則も自由化されたものと勝手に勘違いし、ろくに規程を検討していなかったのがことの顛末である。」(街の弁護士日記 2016年1月13日

また、徳岡宏一朗弁護士の事態説明は以下のようなものです。
 
「さっき、日本弁護士連合会選挙管理委員会の副委員長さんから、わざわざお電話をいただきました。わたくし、なんかの選挙に出た覚えがないので、ビックリしたのですが、なんと私のブログ記事が日弁連の選挙管理規定に違反するので、削除して欲しいと言うのです。問題となったのは以下の記事。2016年1月17日付け記事で、【悲報】日本弁護士連合会の執行部側○○○○候補が、稲田朋美自民党政調会長に何度も献金していた。というもの。取り敢えず非公開にしましたのでリンク切れになっていますし、候補者の名前も匿名にしました。今回の日弁連会長選挙にはふたりしか立候補者がいないので、片方の先生を批判すると、もう片方の先生を応援したことになるから選挙運動だ、という話なんです。そして、会長選挙管理規定が今回の選挙から『改正』されて、WEB選挙活動が認められるようになってたけど、それは各陣営に1つずつのオフィシャルホームページだけ。他の人は、選挙対策本部の弁護士も一般会員も、WEB上で1人の特定の候補に有利になる発言は許されないという驚くべき改定がされたというのです。こんなの、WEB選挙が認められるようになったと言えますか? 逆に、明らかに言論の自由が制限を受けるものです。これまでの選挙でも好き勝手なことを書いてきていて、確か前々前回の6年前の選挙では、宇都宮健児弁護士の推薦人にならせて頂いて、選挙本部に入ってましたから、宇都宮さんが良いと思う理由をガンガン書いてたんですよ(笑)それが今回は書いてわずか1週間で、選挙管理委員会から削除要請ですよ。しかし、改めて考えてみると、このWEB選挙解禁という名の制限規定って、日弁連の理事会(内閣)、常議員委員会(国会)、総会(国民投票)で通っちゃってるわけです。こんなん、誰か異議を出さなかったのかということですよ。」(Everyone says I love you ! 2016年01月25日
 
このおふたりの弁護士の日弁連執行部への「抗議」に関しては猪野亨弁護士も25日付けのツイッターで以下のようなエールを送っています。


以上、3人の有能な弁護士の贅言を抑えつつ必要十分条件を満たした事態説明がある以上、屋上屋を架すがごとき私の説明は不要だと思われますが一点のみ以下のことを記しておきたいと思います。

上記のおふたりの弁護士はなぜこのようにも不当な日弁連執行部の「削除要求」に従うのか? 疑問に思われる向きもあろうかと思われますが、いわゆる「団体自立権」の問題がネックになっているものと思われます。団体自立権に関しては最高裁の次のような判例があります。「政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばない」(「共産党袴田事件」最高裁判所昭和63年12月20日判決)。日弁連もひとつの団体ですから、日弁連の不当な選挙規程も団体自立権が適用されて「裁判所の審判権は及ばない」ということになってしまうのでしょう。

なお、上記で岩月浩二弁護士が指摘している「公職選挙法は平成25年に法改正がなされ、選挙期間中のウェブサイトを利用した選挙運動は、広く一般市民が自由にできることとなっている」同法の該当条文は以下のとおりです。

第百四十二条の四
第百四十二条第一項及び第四項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる選挙においては、それぞれ当該各号に定めるものは、電子メールを利用する方法により、選挙運動のために使用する文書図画を頒布することができる。


「人権の砦」たる日弁連の選挙規程は官僚の作文である公選法の規定にも遥かに及ばない時代錯誤の規定でしかないということです。

なおまた、徳岡宏一朗弁護士が指摘している「会長選挙管理規定が今回の選挙から『改正』されて、WEB選挙活動が認められるようになっ」た点については朝日新聞に次のような記事があります。「日弁連の規定の変更で、今回の会長選からウェブサイトを利用した選挙運動が可能になった」(朝日新聞 2016年1月6日)。しかし、実態は、「WEB選挙活動が認められるようになってたけど、それは各陣営に1つずつのオフィシャルホームページだけ。他の人は、選挙対策本部の弁護士も一般会員も、WEB上で1人の特定の候補に有利になる発言は許されないという驚くべき改定」でしかなかったということです。これもいまの日弁連執行部の「人権の砦」ならぬ「非人権体質」が剥きだしの形で現われている事例とみるべきものでしょう。

なおさらについでとして岩月浩二弁護士の「日弁連問題」勃発という問題提起も再録しておきます(Blog「みずき」 2015.06.01)。しかし、同論攷に引用者として「日弁連執行部の退嬰と共産党への期待」という小見出しをつけていますが、いまの共産党の右傾化のさまではいつ同党が豹変するかわかったものではありません。「共産党への期待」という小見出しは撤回しておきたいと思います。
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