ロンドン・コベントガーデン

Blog「みずき」:18歳選挙権に「私は反対です」という斎藤環さんの論は意表を突かれる論です。しかし、斎藤さんは必ずしも「18歳選挙権」そのものに反対しているわけではなさそうです。斉藤さんは次のようにも言っています。「やたら自己責任論がいわれ、生活保護はたたかれる。こんなに個人がないがしろにされている国で、18歳で自立しろなんてちゃんちゃらおかしい。権利を与えるというなら、まず徹底して個人を尊重することです。それなしに公共の利益とか言いだすからうさんくさいんです」。あえて「現実」論に立脚することによって日本の現代社会に蔓延る「ファンタジー」をあぶり出す、というのが斉藤さん流の「啓蒙」でもあり、「戦略」でもあるのでしょう。しかし、意表を突かれる論でした。

【18歳選挙権「私は反対です」】
選挙権年齢の18歳への引き下げに伴い、民法上の成人年齢などほかの基準も18歳に、という議論が出ている。だが、引き下げていい理由は何一つない、むしろ上げるべきだ、と若者たちを多く診てきた精神科医の
斎藤環さんは主張する。なぜなのか。何歳ならいいのか。そもそも大人になるとは、どういうことなのか。――選挙権年齢が18歳に引き下げられます。若者が政治に参加するいい機会になりそうです。「私は反対です」
――どうしてですか。みんな賛成してますよ。「賛成する理由がほとんどないからです」――ほとんどない!「選挙年齢を下げることで、若者の政治参加が促されるというのはファンタジーです(略)」――欧米では18歳が常識というのも論拠になっています。「欧米には担当省庁を設けて若い人を弱者としてしっかり支える体制があり、18歳を大人扱いすることと共存しています。欧米並みというならまず、公的扶助の総額と普及率でしょう。再分配の仕組みに手をつけず、ただ自立せよ、活躍せよと発破をかけるのは極めてヤンキー的な気合主義でしかない。引き下げにかける莫大なコストを彼らの支援に回すべきです」(略)――大人扱いすることで、自覚も出るのではないですか。「そもそも人を早く大人として扱う社会がいいのか疑問です。大人としての成熟が早く求められるのは、発展途上地域が典型です。少年兵としてかり出され、10代で結婚させられ、労働力として使役される。飢えを知らず、親がかりで生活できる日本は、大人にならずにとどまれる社会です。社会と個人の成熟度は反比例するというのが持論です」(略)

――やっぱりセーフティーネットが必要だと。「日本人の国民性、とは言いたくないけど、貧困対策はバッシングを受けやすい。ホームレスは自己責任だと言いたい人が多数です。家族が面倒を見ている分には引きこもりもたたかれませんが、国が対策を始めると、あんなやつらに税金を使うな、という声が必ず出てきます」――ではどうすれば?「社会から排除された若者を再包摂する場所を作り、就労支援を手厚くすること。社会保障の対象を減らし、納税者を増やしたければ、それしかありません。彼らの支援を家族にゆだねることで対策を先送りにしてきたけれど、ホームレスが増えたら、そうも言っていられなくなるでしょう」「若者といえば、アンケートに今が幸せと答え、ハロウィーンで仮装して街に繰り出す姿を思い浮かべるかもしれません。でも、それはおおよそ3分の2を占めるアクティブな若者たちです。定職もなく仲間もおらず、自分自身を承認できないまま絶望している若者は、ますます声を上げられず、見えない存在になりつつあります。もちろん、結婚して子どもを持つという人生など描きようがない。彼らを救うのに成人年齢の引き下げは有害でしかありません」(
斎藤環「朝日新聞」2016年1月19日

【山中人間話】


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