キョウ 流砂

日本科学者会議は共産党系の人文科学系、社会科学系、自然科学系の幅広い科学者、研究者を擁する団体として有名ですが、その日本科学者会議の「政治的」な右傾化も甚だしいものがあるようです。近年の共産党の激しい右傾化にともなう余波としての共産党系科学者の「右傾化」と見てよいものですが、その共産党系科学者を含む科学者、研究者たちからも「科学をまとった政治運動ですね」という批判が続出しています。その科学者、研究者たちからの日本科学者会議批判の概要を見てみようと思います。

以下の左巻健男氏(法政大学教授)の「『日本の科学者』誌編集委員会は非民主的な酷い対応をしたと思う」という報告がその批判の概要をわかりやすく明示していますのでまず参照させていただこうと思います(改行は引用者)。

日本の科学者』誌編集委員会は非民主的な酷い対応をしたと思う
(左巻健男-SAMA企画 2015-12-19)

次のメールを日本科学者会議の東京支部幹事の知り合いに送りました。下記に入れた「経緯」のPDFを添付してのことです。あのような粗雑なもの(増田氏のもの)を掲載するだけで恥を知るべきです。会員が非難されているのに反論させないという経緯に驚きよりも怒りが湧いてきました。

左巻健男です。日本の科学者2015年10月号の増田論説があまりにもお粗末なので反論が載ると思ったら添付のような経過だということで、抗議を込めて退会します。手続きは本部に連絡しようと思います。 

その一人から次の返事が来ました。

メール、ありがとうございます。いやー、科学者会議、驚きの対応ですね。編集委員会、資質が問われるのはまさにそのとおりです。不掲載という決定は改められなければなりません。退会ということについては、少し様子を見てもらえないでしょうか?きっと、この経緯を見て、科学者会議という科学者集団の組織として、誤りを犯した編集委員会の姿勢を変更することになると信じていますし、変更しなければならないと思います。この編集委員会の方針が是正されないのだとしたら、退会ということもよくわかります。

以下、野口さんらからの経緯です。(増田氏の文章も全文引用されていたのですが、ここでは削除しました。「反論」でわかると思います。)

2015年12月18日
投稿論文不掲載の経緯について 
野口邦和・清水修二・児玉一八

日本科学者会議発行の機関誌『日本の科学者』2015年10月号(同年9月10日発行)に,増田善信著「福島原発事故による放射性ヨウ素の拡散と小児甲状腺がんとの関連性,およびその危険性」と題する論文が掲載されました(【別紙1】).

被害を過小評価しようとする加害者への怒りや警戒が論文執筆の根底にあるとはいえ,一読すれば分かることですが,間違った情報と知見にもとづいて執筆された問題だらけの論文です.論文の「まとめ」も乱暴極まりないものです.通常なら「おそまつな論文が掲載されたものだな」と放っておくところですが,論文の中で増田氏は,私たち3名の共著『放射線被曝の理科・社会』(かもがわ出版,2014年12月)を名指しで批判しています.間違った情報と知見にもとづいて批判されたのでは放っておくわけにもいかず,清水,野口,児玉の3名で反論を執筆し『日本の科学者』に投稿することにしました.

論点は,放射性ヨウ素の放出量と小児甲状腺がんの評価です。増田氏の論文が感情論をベースにしたずさんな論理で成り立っていたため,こうした論理に対しては冷静な論理で反論するよう心がけました.

私たちの反論「放射線被曝の影響評価は科学的な手法で-甲状腺がんをめぐる増田善信氏の論稿について-」は,10月13日に論文筆頭著者の清水が『日本の科学者』編集委員会に投稿しました(【別紙2】)(注).

投稿から約25日後の11月7日,『日本の科学者』編集委員長名で「掲載を見送る」旨の下記文書が届きました.
 
清水 修二 様
11月7日の編集委員会で、御稿の掲載について協議した結果、増田論文の放出日数について3ページを使って(2~5ページ)反論するほどのものではないこと、また、「まとめ」での「可能性は少ない」との推論根拠が示されていないことを主な理由として、掲載を見送ることとしました。検討に時間を要し、ご連絡が遅れましたことをお詫びしますと同時にご了解をお願いいたします。

11月12日 『日本の科学者』編集委員長 伊藤宏之

私たちの反論が内容的に間違っているのであれば不掲載は当然あり得ることでしょう.無条件に『日本の科学者』に掲載せよなどと主張するつもりは毛頭ありません.しかし,「掲載を見送る」理由は,「3ページを使って反論するほどのものではない」とか,非常に不可解なものでした.また,「『まとめ』での『可能性は少ない』との推論根拠が示されていない」というのであれば(私たちはそれなりに示したつもりですが・・・),説得力のある修正記述を私たちに求めればよいのであって,いきなり問答無用で不掲載とするのはあまりに乱暴です.

編集委員長の文書は不掲載とすることに対する「了解」を私たちに求めるものでしたが,11月7日の編集委員会で組織的に検討したとは思えないおそまつな不掲載理由で,了解など到底できるものではありません.そこで私たちは3名で検討し,代表して筆頭著者の清水が11月15日付けで『日本の科学者』編集委員会宛に,編集委員長個人ではなく編集委員長として正式な回答をするよう求めました(【別紙3】).

12月9日に届いた編集委員会からの回答は以下のものでした.


清水 修二 様
2015年12月9日 
「日本の科学者」編集委員会

貴兄からの2015年11月15日付け「日本の科学者」編集委員会あての文書につき、12月5日の編集委員会の協議の結果に基づきお答えいたします。

1.「日本の科学者」は、日本科学者会議の機関誌として、「3.11」後の「原発の廃止」という大会決定に基づき、原発のない社会実現の立場での研究活動の成果を掲載することを基調にしています。
2.政府や東京電力など関係機関により公開・公表されている被曝や汚染のデータの多くは、限定されていますし、加工もされています。また、意図的な「データ隠し」さえ、認められます。民間サイドの調査も調査区域制限や範囲の広がりにおいて、不十分にならざるを得ない現状が続いています。「自主・民主・公開」の原則は依然として重要です。つまり、徹底した調査ならびに生データの集積による事実分析が何よりも不可欠です。この基本線で共同することが、科学者の使命です。
3.研究活動の過程においては、事実分析の適性と仮設定立の妥当性を研究者相互が吟味し合うこと、そして節度ある相互批判が必要です。
4.「掲載見送り」との判断は、以上の編集委員会の編集方針に基づき、御稿を拝読した結果でした。すなわち、批判の権利があること並びに公平性を重視することを是認したうえで、限られたデータの扱い方に慎重さが必要であることを理由に判断した次第です。
 
12月5日の編集委員会は、以上のことを改めて確認し、お答えといたします。なお、今後も会員としての投稿の権利は、当然のことですが、保障します。


この「回答」が私たちの論文を不掲載とする理由は,先の11月12日付けの不掲載理由とは明らかに異なります.不掲載という結論が先にあって,あとからその理由付けをしたと考えざるを得ません.それにしても12月9日付け回答は,「仮説」を「仮設」と誤植しており,12月5日の編集委員会後4日間もの間,組織的に検討して作成した文書とは思えない代物です.一番の問題は,項目をひとつひとつ読んでみても,いったい何を言いたいのかさっぱり分からない文章であることでしょう.頭が痛くなってくるほどです.『日本の科学者』編集委員会は,なぜ会員である私たちにこのような官僚的作文で対応してくるのでしょうか.

この点について,清水は「回答」が届いたその日のうちに,抗議を込めて,編集委員会宛に「回答」を読んだ感想を送りました(【別紙4】).この感想は清水が個人として書いたものであり,野口と児玉は関知しておりませんが,野口と児玉もまったく同様の感想を持っています.

ある会員が会誌を通じて別の会員を名指しで批判した場合,当然,批判された側の会員は会誌を通じて反論を行う権利があるはずです.上記のような一貫しない理由付けで,しかも意味不明な官僚的作文で会員の反論を不掲載とすることは,まったく納得がいきません.清水は,日本科学者会議事務局長にも「感想」を送りました.事務局長からは「先生のご主張承りました.私としての個人的な意見はありますが,JJS(『日本の科学者』の英文略称)の編集については事務局として編集委員会にお任せしていることをご理解ください.」との返信がありました.

以上が事柄の経緯です.『日本の科学者』は編集委員会のものではなく日本科学者会議のものです.それは『日本の科学者』に毎号,「日本科学者会議編集・発行」と明記されていることからも明らかです.確かに日常の編集の実務は編集委員会に任されているとはいえ,編集委員会が対応を間違った場合は,事務局会議なり,常任幹事会なりが間違いを正さなければならないのではないでしょうか.その自覚が,残念ながら現在の事務局長にはないと言わざるをえません.

増田論文に対する私たちの反論がまったくもって理不尽な理由により不掲載になったことから,日本科学者会議の現在のあり様を心配しつつも,私たちはそれぞれの判断で同会議を退会しました.30~40年にわたりその一員として活動してきた組織を離れるのは複雑な思いがありますが、放射線被曝,放射線影響に関する限り,日本科学者会議はもはや科学者集団ではなくなったと言わざるを得ません.そのことを大変残念に思います.

(注) 私たちの反論は,増田論文の内容上の問題点について詳細に触れていますが,形式上の問題点については触れていません.たとえば同論文の図1の横軸の目盛の値が2箇所間違っているとか,増田氏の主張の中で非常に重要と思われる小児甲状腺がんの男女比が10代で5.43であるとする出典が明示されていないことなどです.後者は米国人のデータであることを反論の中で触れましたが,一次資料を参照せず二次資料に依拠して(いわゆる引用の引用)主張を展開しているため,別の意味で欠陥の多い論文であることを指摘しておきます.

以下、省略。詳細は左巻健男氏のブログ報告をご参照ください。
 
さらに以下は、上記の経緯についての日本科学者会議会員の科学者を含むさまざまな人たちの感想と反応です。日本科学者会議の頽廃(私の言葉でいえば「右傾化」)を多くの科学者と関係者が批判しています。

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