キョウ ノギク

弁護士の澤藤統一郎さんが昨日の共産党の志位和夫委員長の日本外国特派員協会での会見を承けて10月16日付けの自身のブログに「『野党は共闘、野党は共闘!』―反安倍勢力糾合の世論を盛り上げよう」という論を書いています。
その論において、澤藤さんは、共産党の「国民連合政府構想」について「他の多くの課題を切り捨ててこの一点の共闘で本当によいのか。各政党や政治勢力がそれぞれに持つ理念や主張を棚上げできるのか。何より、この提案が反安倍勢力の総結集に現実性を持つものなのだろうか…」「今度の提案は、まずは安保廃棄は棚上げだ。自衛隊の存続も認める。集団的自衛権の行使は容認しないが、自衛のための武力行使までは認めることになる。安全保障以外にも課題は多い。沖縄・原発・TPP・雇用・福祉・教育・近隣外交…。はたして、敢えて『戦争法廃止して立憲主義を取り戻す』の一点で、選挙協力が可能だろうか。政府の運営ができるのだろうか」という自身の危惧と違和感を表明した上で、「今求められているのは、『革新の統一』ではない。反安倍勢力の結集は革新の課題ではなく、保守をも含めた民主主義・立憲主義の課題だということ。だから、逡巡は不要ではないのか」「私は、安倍政権打倒のためなら、悪魔との契約も辞さない立場だ。それに比べれば安保廃棄も自衛隊違憲も脇に置く課題でよいと言うべきなのだ。安保ハンタイ、自衛隊イケンは、自らの見解と留保しつつも、大同団結の輪の中で『戦争法廃止』『立憲主義の回復』の声を上げよう」という共産党の「国民連合政府構想」評価を述べています。
 
私も一点共闘それ自体は評価するものです。一点共闘はときに歴史の転換期を創出する役割を果たします。たとえば五・四運動以来の中国の反日愛国運動はやがて軍閥および北京政府に対抗する共同戦線の模索へと発展し、その試みを歴史的に俯瞰すれば短期間で崩壊する運命にあったとはいえ、1924年にはコミンテルンの仲介で中国国民党と中国共産党による第一次国共合作を実現しています。その国共合作はまさに「反日愛国」という一点でつながる一点共闘といってもよいものでした。

日本の幕末期の南部領農民3万人の百姓一揆の成功も弘化4年の御用金の重課をはねのけようとする庄屋たちと農民たちの言って見れば一点共闘のようなものでした。

最近のことで言えば、先の沖縄県知事選における「オール沖縄」の闘いも辺野古新基地の埋め立て承認取り消しに関わる一点共闘といってよいものでした。

そのような場合、当然、意見を異にし、対立する課題群は脇に置かれます。対立する課題群を脇に置いて一点の共通課題での共闘が実現したからこそ沖縄県知事選の勝利もあったのです。そのことは私たちは肝に銘じておくべきことです。
 
だから、私は、そういう意味では、上記の澤藤弁護士の論に賛成なのですが、にもかかわらず、私は同弁護士の論には違和感があります。しかし、それは、澤藤弁護士の論への違和感というよりも日本外国特派員協会での志位発言の信頼性に関わっての私の違和感です。
 
志位氏は上記の会見で「この政府は、この一点での合意を基礎にした政府ですから、その性格は暫定的なものとなります。すなわち、この政府は、その任務を達成した時点で、解散・総選挙を行い、その先の日本の進路については、国民の審判をふまえて選択すべきだと考えます」と発言しています。しかし、志位氏の言う「任務を達成した時点で、解散・総選挙を行」う実現可能性はどの程度にあるのか? 

上記の会見で志位氏は「来年の参院選では32あるすべての1人区で野党が相互に協力し、自民党を打ち負かして勝利を獲得する考えで臨みたい」(朝日新聞)とも述べています。そうだとすれば、次回参院選での野党の共同候補者は前回参院選で得票数のもっとも多かった候補者が選ばれるのがふつうですから、32ある1人区の共同候補者のほとんどすべては民主党から選出されるということになるでしょう。
 
ところで、共産党の提案している「国民連合政府」は暫定的なもので「その任務を達成した時点で、解散・総選挙を行」うというものです。そして、「その任務」とは「安保法廃止法案」を成立させるということです。そうであれば「その任務」は数か月程度の国会会期があれば達成されるものですから野党共同候補者は当選から数か月足らずでさらなる解散・総選挙に臨むということになるでしょう。

しかし、国会議員となった民主党の共同候補者が数か月足らずでその職を解かれることに容易に同意するとは想像しにくいものがあります。それゆえに「任務を達成した時点で解散・総選挙を行う」ことを有効化させるためにはその旨をあらかじめ政策協定で締結しておく必要がありますが、そうしたあらかじめ人事を縛るような協定に民主党が容易に同意することも想像しがたいものがあります。結局、そうした協定は結ばれずうやむやになる可能性の方が私は大きいように思います。

そうすると、暫定的だったはずの共産党の「安保廃棄凍結」も「自衛隊解消凍結」も「凍結」のままズルズルと延長され続けることにもなってしまうでしょう。こうした事態は内海信彦さんが批判する「凍結」という名の実質「容認」の事態だと私も思います。
 
15年前の共産党の「自衛隊当面維持」論は事実上の自衛隊容認論でした。そのときの事実上の自衛隊容認論をいま共産党は「国民連合政府構想」にかこつけて繰り返しているように私には見えます。その共産党の「国民連合政府構想」は正しいか? 私はその「国民連合政府構想」自体は安倍政権打倒のための目下の提言として支持しますが、澤藤弁護士とは違う意味で留保を置かざるをえません。

短期的には同党の支持率は上がっているようですが、中・長期的に見れば、同党にとってこの先にあるものは「自衛隊合憲、日米安保堅持」論を打ち出して以来日本社会党がたどってきた道と同じ道であるように私には見えます。
 
参考:
・志位共産党委員長の外国特派員協会講演 ――「政権を取っても自衛隊は当面維持します」論の問題性に関する15年前の指摘(Blog「みずき」 2015.06.28) 
・志位共産党委員長の外国特派員協会講演「政権を取っても自衛隊は当面維持します」論の問題性に関する15年前の指摘(2)――「どこへ行く日本共産党」(田口富久治名古屋大学名誉教授)(Blog「みずき」 2015.06.30
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