シアター遊佐  
シアター遊佐。表札はかつての眼科医院のままだ。

【愚安亭遊佐さんの一人芝居を3年がかりで1本の番組にする】
金曜、土曜と一泊二日で、新潟県加茂市に
愚安亭遊佐さんの一人芝居を撮影に行った。公演会場は加茂駅にほど近い「シアター遊佐」、もともと夫人の御母堂が眼科医院を開業していたスペースを改造したもので、50人も入ればいっぱいいっぱいのミニシアターである。愚安亭遊佐さんはいま夫人とともに加茂市に暮らし、この小劇場をホームグラウンドにしている。(略)
愚安亭遊佐さんは本名・松橋勇蔵、1946年生まれの69歳である。青森県の下北半島、現在のむつ市関根浜に網元の五男として生まれた。東京で過ごした大学時代にアングラ芝居の洗礼を受け、「劇団三十人会」を経て「劇団ほかい人群」を結成、役者の道に入った。1979年、母の死をきっかけに、母をモデルにした一人芝居「人生一発勝 負」を作り、全国行脚の旅に出た。その途上、生まれ故郷の関根浜に立ち寄ったとき、原子力船むつの新母港として関根浜が選ばれるという問題に直面する。(略)

愚安亭さんの芝居は実話に依拠したいわば「実録」で、現実を題材にしながら現実を昇華して、国策に翻弄され続ける民衆の怨嗟を描くことで普遍性の高みに達している。愚安亭さんはその後、隣の
六ヶ所村でも核燃料サイクル基地建設で同じことが起きているのを知って、一人芝居の第三作「こころに海をもつ男」を作り、さらに東日本大震災の後には、下北半島の原子力化に反対を続けた兄をモデルにした下北シリーズ(とぼくは勝手にそう呼んでいる)30年ぶりの新作、「鬼よ」の上演を始めている。ぼくは今回の「百年語り」で下北半島四部作を全部見たことになるが、それぞれが無告の民の魂が愚安亭さんに乗り移ったような芝居で、芸能に昇華された日本列島の民衆史であり、稗史であると思う。

ぼくは「戦後史証言」という番組の制作過程で愚安亭遊佐さんを知り、この人のことをなんとか番組にしたいと考え続けてきた。基本的に年にひとつの演題の公演を続けるスタイルなので、一昨年秋「こころに海をもつ男」の舞台を撮り、去年の秋に「人生一発勝負」、今年「百年語り」を撮影した。ここまでで三年がかりである。来年「鬼よ」を撮り、沖縄(辺野古)での公演話が進んでいるので実現すればそれを撮り、そのうえでなんとか一本の番組に仕上げたいと考えている。そのときにはぼくは既に定年退職になっているので、なんらかの手立てを考えて放送にこぎつけたいと思う。…やり残した仕事が多すぎて、なかなか成仏できそうにもない。(
toriiyoshiki's Blog 2015年10月12日
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