テンキ6

【現在の「世界疎外」としての異様な光景】

アーレントの主著『人間の条件』は、1958年にアメリカのシカゴ大学出版会から英語で出版された。(略)ところが、1960年にアーレントは自著のドイツ語版訳を出した。アーレントにとって、ドイツ語はもちろん母語である。そのさい、訳文には大幅に手が入れられ、加筆もなされ、タイトルも『活動的生』と変更された。(略)
60年近く前に出版された本書が古さを感じさせないのは、生きることへの根源的な考察がなされているためだけではない。核や原子力発電、科学技術、大衆消費社会、宇宙開発など、現代に深くかかわるテーマが、随所で論じられている。「人間種族はもはや甲殻類の一種に変身しはじめている」という皮肉たっぷりの表現もある。車やスマホ、パソコン、アップルウォッチなどを操っているようで、逆にそれらに操られている現代人を頭に思いうかべると、たしかに甲殻類は言い得て妙である。本書を読むと、われわれが古代ギリシャからいかに遠く離れた時空に生きているかを痛感する。アーレントは人が大地から切り離されたこと信仰と世俗が分離されたことを「世界疎外」と呼ぶ。

近代人はこの世界疎外を疎外とも思わず、自然を収奪し、カネもうけに奔走し、ひたすら国力の強化に努めているが、冷静にふり返ってみれば、それはかなり異様な光景なのである。アーレントは、奴隷によって支えられていた古代ギリシャの観想的生活を取り戻すべきだというわけではない。ましてポリスの公的空間を復元すべきだというのでもない。ただ、アテナイ人が重視していた、政治の根源としての言論(ロゴス)と、始めることの勇気は見習うべきだとしている。それは生活のなかから発するのである。アーレントにとって、ナチスの非道は根本悪だった。とはいえ、いったん始められた行為は、とどまるところを知らず、時にそれは取り返しのつかない事態を招く。政治、いや人間の行為には、つねにそんな恐さがともなう。それにたいする救済策はないのだろうか。処罰と復讐だけが答えだろうか。不正が不正であったことは、消し去ることのできない事実である。

しかし、どこかで赦(ゆる)しがなければ、世界は存続していかない。人間には「取り返しのつかなさを埋め合わせる赦し」と、「予測のつかなさを埋め合わせる約束」という能力がある。赦すのは愛の力である。約束だけが未来を保証する。一方は赦し、他方は約束をすることによって、世界ははじめて不確実な未来への道へと踏みだすことができる。ここにアーレントの政治哲学の核心がある。いま日本の政治は、いったい何を約束しているのだろうか。(
海神日和 2015-09-18

【立憲主義を顧慮しない政権の存続の是非が今後の焦点】
きのう、参院本会議を傍聴した。議題は安倍首相に対する問責決議案。与党はまず、発言を1回10分に制限する動議を出して可決した。野党議員が長時間の演説をして議事進行を引き延ばすのを封じるためだ。民主党議員による決議案の趣旨説明が10分を超えると、議長が「時間がきております」と注意した。与党席から怒号が起こる。「早く終われ!」「いい加減にやめろ!」。演壇の声がかき消される。こういう光景を見たのは初めてだ。野党がいたずらに時間稼ぎに走るのが好ましいとは思わない。参院事務局によると、発言時間の制限は与党の戦術として先例があるという。しかし、今回の非は与党にあるだろう。一昨日、締めくくりの質疑を省略して、安保関連法案の
委員会採決を強行したのだから。事務局が作った一昨日の会議録の未定稿を見ると、採決の場面には「議場騒然、聴取不能」とあるだけだ。可決を宣言する委員長の言葉はひと言も書かれていない。野党が採決無効を訴えたのも無理はない。言論の府とは到底呼べない惨状である。再び事務局の担当者に聞くと、未定稿で欠落している議事の経過を後で補って正式の会議録とするのだという。あの混乱をどうやって再現するのだろう。歴史は政権与党だけのものなのか。参院本会議場では、憲法を踏みにじる政権の危険性を野党議員が代わる代わる批判し、首相の退陣を迫っていた。立憲主義を顧慮しない政権の存続の是非が、今後の焦点にならざるをえない。(朝日新聞「天声人語」2015年9月19日

【「恥知らず」というのはこういうことだ】
安全保障関連法案が気になって、きのう夕方、仕事のかたわらテレビの参院平和安全法制特別委テレビ中継をちらちら観ていた。鴻池委員長の不信任決議案が否決されると、異様な光景が・・・テレビの前に行ってスタッフとともに「これはひどいな・・」とつぶやく。ツイッターからいくつかひろってみた。

・NHK「何か読み上げているようです」「全く聞き取れません」。与党議員は何度か立ち上がって拍手。そして、鴻池委員長が退出。「散会したということでしょうか?」「詳しいことは分かりませんが、なんらかの採決が終わったとみられます」(南野森

・安保法案の強行採決は、委員以外の与党の議員がとつぜんスクラムを組み「かまくら」のような形で委員長を囲い込んだ中で行われた。通常は、抗議する野党議員が委員長を取り囲むのだが、今回のケースでは野党側は委員長と遮断され、マイクもなく、なにが議題なのか一切判らなくなった。(
金子洋一

・自民党議員が多数で「人間かまくら」を作り、囲まれた鴻池委員長に、ある議員が小型懐中電灯をかざして、紙を読ませていた。議事録には「精査不能」とある。何を語っていたのかもわからない採決など完全に無効だ。しかも明らかに暴力をふるう議員がいた。これが民主主義を破壊する自民党の素顔だ。(
有田芳生

・安保法案が参院特別委員会で可決されたようですが、TVで見た限り鴻池委員長が入室するやいなや傍聴の与党議員に囲まれ、安倍首相は逃げるように退室。採決の発言もしていなければ、議場と賛成議員も全く確認していません。残念ながら良識の府とは言えません。合掌(
仏教・仏陀の言葉

・動画をよく見ると自民党議員が議長席を取り囲んで一方的に採決を進めている。これは強行採決というより「安倍クーデター」、物理的に議会を占拠している状態だ。テレビ報道の「入り乱れシーン」にダマされてはいけない。この採決は無効!!(
ボーンズ88

・福山哲郎議員「可決はされていません。見ていただいたら分かる通り、委員長の声も何も聞こえない、自民党議員が暴力的に委員長の周りに介入してきた。あんな状態は無効です。あれで可決となったら民主主義の死です」(
西口想

・本日の参議院特別委の速記録が出ました。まったく聴取不能で、何をやったのかわかりません。自民党の説明では、採決動議、法案二本、付帯決議、委員会報告の5回採決したと言うのですが、そのような記録なし。まったく無法、無効です。(
小池晃

「恥知らず」というのはこういうことだ。(高世仁の「諸悪莫作」日記 2015-09-18
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