キョウ6  

シールズとそのリーダーのひとりの奥田愛基さんがまるでイコンのようにメディアとミンシュテキ世論なるものによって祭り上げられています。

メディアの祭り上げ方は次のようです。
 

以下は、メディアというよりも個人としていうべきでしょうが、金平茂紀さん(TBS記者・キャスター)のシールズの讃え方は次のようなものです。

外国特派員協会でのSEALDs記者会見。年長者からの、わけのわからない質問が2つ投げかけられたが、彼らは実に冷静に対処していた。長く生きているから成熟しているとは限らない。むしろそれらの年長者には、何か決定的に大事なものが欠落しているように思った。それは何か。しなやかな想像力。SEALDsにあって彼らにはないもの。

また、ミンシュテキ世論なるものの祭り上げ方は次のようです。
 

そして、抗議活動終了後、ゴミを黙々と拾うシールズのメンバー。彼らこそ、真の英雄だ。

Posted by 神原 元 on 2015年9月16日

これらのシールズ評価、あるいは奥田愛基さん評価に特徴的なことは、上記のツイート群からも容易に想像できるように奥田さんの中央公聴会ので意見陳述全文を読んだ限りでの評価にすぎないということです。出回っている奥田さんの国会スピーチの動画も同氏の冒頭発言部分のみです。しかし、実は、奥田さんの国会陳述には議員の質問に対する同氏の応答部分も含まれているのですが、その部分を読んだ(あるいは観た)形跡はありません。すなわち、上記の評価は、全体を見ないで自分の視野の範囲内のことでしかない管見の限りで全体を判断するという事大主義の弊に陥った愚かしい評価でしかないということです。 奥田愛基さんに対する議員の質問は参議院インターネット中継の録画で確認できますのでご覧ください。

その奥田さんの発言に関して内海信彦さんは次のように評価しています。

内海 信彦 
参院公聴会での新党改革荒井広幸委員の質問で自衛隊は合憲か違憲かと問われ、奥田愛基くんは「僕個人としては自衛隊というものは合憲だと思っていますが、しかし立憲主義のなかで違憲なんだから逆に9条を改正して自衛隊ていうものがきちんと認められるべきだっていう意見もわかります」と答えたのには心底驚きました。このあと合憲か違憲かなどと議論するどころか、集団的自衛権が合憲だという法案が出ているんですからという議論を展開しています。学生を長いこと教える立場の私ですが、自衛隊は合憲だと断言してしまうことについては厳しく誰かが言わなければいけません。今や一部の人からイコンだとまで言われ始めている奥田くんは、素直で純朴な人ですが、イコンやメシアにしてはいけません。異見も異論も敵に味方する敵対行為だとしてモンスターペアレントのような周囲が排除してはいけません。

奥田くんのグループなど若いアクティビストの中にたくさん教え子がいるからこそ、あえて言うこともあるのです。奥田くんは「僕個人としては」とちゃんと断ってから発言しています。ただし「憲法守れ」「憲法壊すな」と声を大にしている人々の中で、自衛隊は合憲だという人は多くはないと思っていたのですが、これはおかしいですね。まだ若いんだからとか、せっかく今イケイケで盛り上がっているんだからとか言う人の過保護な言い分もわからなくはありませんが、自衛隊は合憲だけど憲法壊すなでは論文ではC-です。公聴会の最後の質問で、よりによってとんでもない発言が飛び出したことは全く報じられていません。若いんだからと言わせまいともっともっと過去から学んでほしいと思います。


以上は、奥田愛基さんの発言の全体を読んだ(観た)人の評価です。当然、後者の評価の方に正当性と妥当性を見るべきでしょう。内海さんは上記の奥田発言評価の中で前者ように評価する人たちに対して「奥田くんをイコンやメシアにしてはいけません」とこれも正当というべきくぎを刺しています。

内海さんの上記の奥田発言評価を読んだ小西誠さんのコメントももうひとつの参考となる奥田発言評価としてあげておきます。

僕は現職自衛官のときから、自衛隊は違憲だと思っていましたが、当時、ほとんどの自衛官は違憲と思っていました。あれから、自衛隊は数倍は増強されたのですから、「超違憲」であり、明々白々な違憲状態でしょう。憲法を読んで「違憲ではない」という人は、よほど常識がない人か、保守的偽善者(好戦家)ですね)。憲法の条文を読めば誰でも理解できるのに、わざわざ「合憲」をこじつける必要はありません。自民などの保守が突っ込んできたら、自民は「違憲」だと思うから、改憲案を提出しているのでしょう、と応えれば良いことです。それにしても、社会党の大崩壊は、自衛隊合憲への転落にあったことは明白でしょう。今からでも遅くないから、社民党は「間違っていました、自衛隊は100%違憲です」と言うべきです。社会党の掲げた「自衛隊を災害救助隊」に転換するというのは、21世紀の現代では、アジアと世界が望む現実になっています。

ところで、上記のようなひとりの若者の「イコン」化と一個の若者の団体の「ヒーロー」化はどのような道に突き進んでゆくのか。奥田愛基さんを「胆力あるなあ。人間、危機に臨んで一番大切な資質は胆力ですよ。若い人たちはぜひ彼の胆力を範としてください」などと最大級の賛辞で讃えた内田樹さんは、かつて湯浅誠さんや中島岳志さんらととともに先の参院選東京選挙区に民主党から立候補した鈴木寛氏(落選)の応援団に加わっていたという経験の保持者ですが、内田さんらの推すその鈴木寛氏は9年前の教育基本法改悪の際に民主党の「教育基本法検討会」事務局長として自民党の同法改悪法案をさらに悪い意味で凌駕する愛国心条項を含む民主党教育基本法改悪案を取りまとめ、同法改悪を主導した中心人物のひとりだった人です。

また、その鈴木氏は、名うての右翼団体「日本会議首都圏地方議員懇談会」で来賓として祝辞を述べたり、同会のシンポジウムにパネリストとして参加するなど右翼団体とのつながりも浅からぬものがある人です。そして、鈴木氏の所属する民主党という政党は政権交代時代に自民党に勝るとも劣らない悪政を繰り返し、その結果として次の選挙で自民党を圧勝させ、いまの安倍政権をつくりだす原因をつくった「民主」とは名ばかりの政党でもあります。

また、内田樹さんは、先の参院選前の2012年に文化人類学者の中沢新一氏を代表とする新環境政党「グリーンアクティブ」が結成されたとき、社会学者の宮台真司氏、タレントのいとうせいこう氏、コピーライターのマエキタミヤコ氏らとともにその結成メンバーのひとりでもあった人です(中日新聞 2012年2月12日)。そして、その結成メンバー仲間のひとりの宮台真司氏は大阪府知事時代の維新の党元代表の橋下徹氏にエールを送るような右翼的傾向の強い人です。内田樹さんが若者たちにエールを送り、若者たちを連れてゆこうとしているところは私には決して明るい太陽光のはじけるところのようには思えません。悪政の延長に連なる冥い道になるだろうというのが私の予見するところです。だから、内田樹さんの奥田「胆力のある」若者説は私には危険きわまりないもののように見えます。

第一、「胆力のある」若者は奥田さんひとりではありえません。同じくシールズの本間信和さん(筑波大3年)も「胆力のある」若者のひとりということができるでしょう。本間さんの14日の国会前のスピーチをこちらで読むことができます。本間さんはそのスピーチで「日本国憲法は、大昔に偉い役人が決めたものでも、誰かから押し付けられたものでもない。これは、おれ自身の言葉なんだよ」と述べたそうです。これも「胆力のある」若者の言葉ということができるでしょう。そのほかにもたくさんの「胆力のある」若者がいることはシールズ自身が制作した各所のデモ会場での動画を観ても明らかです。シールズだけでもこれだけの「胆力のある」若者が存在するのですから当然シールズ以外にも「胆力のある」若者はこのニッポンというクニのあちらこちらに少なくなく存在するだろうと想定することは突飛なことでもなんでもありません。奥田さんひとりを「ヒーロー」視することは正しくないといわなければならないでしょう。

3・11福島原発事故を契機にした官邸前の金曜日行動は最大時で20万人の市民を結集させ大きな盛り上がりを見せました。その金曜日行動を主催した反原連のミサオ・レッドウルフさんや野間易通さんはいわゆる民主陣営から一躍スターのような扱いを受けるようになりましたが、ミサオ・レッドウルフさんはその金曜日の官邸前抗議で警察指揮官車のマイクとスピーカーを使って「整然とした行動」を訴えた人でもありました。その「整然とした行動」の訴えが民主運動にいまどのような厄災をもたらしているか。たとえば次のような証言があります。「昨日は穏やかだったので最前線へ行こうとしたら凄いことになっていて。今日は車道を隙なく警備車両が埋めて一切、道路に出られないように。お巡りもその内側に五重以上。でも歩道は満員電車よりも混雑状態なのだ。最前線の押し合いへし合いを警備車両の上からお巡りが口汚く威嚇する」。

昨日16日の国会デモでは公務執行妨害なる理由で13人もの不当逮捕者が出ています。にもかかわらずシールズに関係するメンバーの中にはあからさまに警察や自衛隊を「我々と同じ、民主・平和の戦後日本を構成してきたメンバーである」と礼賛する人物も出ているのです。これは災厄という以外のなにものでもないでしょう。野間易通さんの場合も例外ではありません。官邸前の金曜日行動で官邸前の金曜日行動で多くの集会参加者を集めた(実際は「集めた」のではなく「集まった」というのが実相なのですが)というだけで若者たちを無節操に賞揚した弊害がいまここに出ているのです。

ひとりの若者を「ヒーロー」に仕立て上げることの弊害といわゆる民主勢力の弛緩した精神の荒寥に改めて慙愧の思いを抱かざるをえません。
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